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ほらふきのイデア  作者: カナマナマ
第 二章 「薬と毒は紙一重の差」
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2-1 魔界と人間界の境界で

「あの山を越えたら野営しようか。」


「はぁ…はぁ…」


「もうそこから出て3週が過ぎたな。時間はやいね。」


「ちょっと…休もうよ…」


「おお、こんなところにウロトの実が。気力回復薬でも作ろうか?」


「私の話…聞いてるの?」


「無駄口をたたかないで足を動け。体力をつけるのよ。」


『ルメナの家』から人間界『セフィエル』に向かってからいつの間にか3週間が過ぎた。

まだ俺たちは魔界である『ドレンテ』にいるけど。


突破に1年かかった道を1ヵ月に縮めるとは。

また考えてもあきれるほどだ。


このように時間を短縮できた理由は大に二つ。

まず人間界は広いのでどんなルートでも入ればいい。

情報もたりない魔王の居場所を探していくことよりは簡単だ。


そしてモンスターとの遭遇がなかった点。

勇士パーティー時代には毎回戦って回復する時間が必要だったが、今回は違う。

それ以外にもささいな理由があるが、本当に一ヶ月ぶりに来られるとは期待していなかった。


「身体強化魔法を…使えばいいのに…何んで!?」


「何だ、これくらいも耐えられないのか?弱虫だな。」


「てめえ!ここでもう一度戦ってみよう!」


「夕ご飯食べたくない?」


「…すみません。」


何とか日の暮れる前に、山をこえて川のほとりを見つけた。

今日はここで休もう。

日が暮れて夕ご飯を作りはじめる。


「ワープを使えばいいのに、こうやって歩くのがむしろ体力の無駄じゃない?」


「ゆっくり見物しながら行きたいって言ったのはお前だろ?

そして、たまには使ったし。

気力回復薬を作ったから、これでも飲め。」


「それで目的地まで残った距離は?」


「あと3日歩けば届くかな? 思ったより少し早いな。」


「3日か…」


夕ご飯を食べながら会話は続く。


「今の目的地が『ベリルス』だったよね?」


「そう、セフィエルに入るには最速のルートだ。」


「私の時は何の名前だったっけ…」


「正確にはベリルスの『マエス』という都市よ。」


「そこはどこ?私の時代とは地名も違いから。」


「魔界『ドレンテ』の関門の一つと呼ばれるところよ。」


「その前にドレンテ奥の町もちょっと行ってみようよ。」


世界は人間界の『セフィエル』と魔界『ドレンテ』に分かれている。

しかし、人間界だからといって人間だけが生きるわけではなく、魔界だからといって人間がいないわけではない。

セフィエルやドレンテの深いところにも魔物と人間は住んでおり、二つの世界の境界にはさらに二つの種族が絡んでいる。


「『マエス』へ向かうと、周りに小さな町がいくつかある。

わざわざ行く必要なく自然に行くようになるよ。」


「よし、明日も頑張らないと。」


「お願いだからそうしてくれ。」


そして今日も眠りにつく。

翌日も特別なことなく一日が過ぎた。

異変が生じたのは2日目の午後。


「あれは…」


谷で魔物と戦っているパーティーを見つける。

4人ぐらいか。


「お前、確かにモンスターたちにケンカするなって言っただろ?!」


「私の領域を離れてから7日くらいは過ぎたぞ。

そして魔王だと言ってもわたしの領域にいる全てのモンスターが私の部下なわけではない。

むしろ…」


「一応あの戦闘からどう処理して言え!」


すぐ谷へ下る。


「銀鱗のトカゲ。 アイアンリザードか。」


「簡単な相手だね。クリス、 お前は出ないで。」


アイアンリザードの攻撃でパーティーの陣形が崩れる。


「ちくしょう!なんでこんな強力な魔物が…」

「逃げたくてもずっとついてくるじゃない?!どうするんだ?!」


「君たち、そこから離れ!」


ルメナの声が響き、火炎弾がアイアンリザードに当たる。


「グオオ」


「火炎魔法は通じない! 火がつかないよ!」


パーティーの誰かが叫ぶ。

その言葉通り、火炎はすぐ消える。

だがルメナは余裕だ。


「あほうだね。だから勝てなかったんだ。」


そして火炎弾を飛ばし続ける。

当たるそばから、火炎はすぐ消えてしまうが、アイアンリザードのうろこは赤く染まる。


「アイアンリザードのうろこは鋼鉄。

持続的な高熱で熱くすると、内側の肌はどうなるかな?

アイアンリザードの防御力は鋼鉄のうろこのおかげ。

肌のおかげではない。」


アイアンリザードが暴れるが、その場でぐるぐる回るだけだ。

方向感覚を失ったのか。


やがてアイアンリザードが倒れる。


「簡単でしょ?」


「モンスターと人間がお互いに…」


「わざと殺した理由は行きながら説明してやるよ。」


ひとまずあの人たちか。

座り込んでいるパーティーに近づいていく。


「大変でしたね。」

簡単な回復魔術をかけてあげよう。


「さあ、動いてみなさい。」

パーティーのメンバーたちが気力を取り戻したようだ。


「あのう、ありがとうございます。」


パーティーのリーダーに見える男が話す。


「実は近所の薬草を採集中だったのですが、いきなりアイアンリザードが現れ、追いかけられているところでした。

あなたたちがいなかったらどうなったか…」


「いえ、このくらい。」


「どうお礼をしたらいいでしょうか?」


「それでは近所の情報を教えていただけますか?

村を探しているんですが。」


「村ならこの谷に沿って行くと村があります。」


「そうですか。ありがとうございます。

ルメナ、もう行こうぜ!」


「何んだ!まだこれの解体もしてないじゃねかよ!?」


「ほっといて!別に必要ないだろ!」


振り返ってパーティーを見ると驚愕した表情をしている。


「アイアンリザードの鱗がいらないなんて… 何してる人たちなんだ?」

「あれ一匹ならレア級の装備も簡単に作れるのに。」

「売れば1年くらいはお金の心配はないよ。」


お金かぁ…

カラゼンにいた時、狩ったことはあるが、その時はそのまま国に渡してしまったんだから。

ずいぶん値が張っていたやつか。


「ひとつお願いしてもよろしいですか?」


「どうぞ。」


「私たち二人だけではどうしてもあれを解体するのに時間がかかりすぎるので、手伝っていただけますか?

代わりに半分差し上げます。」


「それくらいで半分を?!」


パーティーのメンバー同士で話すとすぐに承諾する。

実は二人でやってもすぐ終わるけど…


欲しいのは情報。

好感を得て情報を集めるのが今は得だ。

案の定、ルメナが一気にうろこを落とす。


「...私たちが必要だったのは本当ですか?」


「ハハ…とにかくやくそくだったから半分はさしあげます。」


「それでは私たちと一緒に帰りましょう。」


そうしてパーティーに同行することになった。

アイアンリザードは収納空間に入れる。

収納魔法を見てまた驚愕する。

そんなに難しい魔法ではないけど。


「自己紹介がまだでしたね。

私はパーティーのリーダーであるベリーともします。」


「残りの3人はアリ、ケース、ロティです。」


「お会いできて嬉しいです。

私はクリスで、こちらはルメナと申します。」


ルメナがわき腹を突く。


「大丈夫?本名をそう明かしても?」


「大丈夫。クリスとルメナだと言っても、誰がおれたちを1年間行方不明になっていた勇者パーティーや、200年前の伝説の錬金術師だと思うんだ?」


「それもそうだね。」


「ところでアイアンリードを殺した理由をまだ聞いていないんだけど?」



「モンスターたちが強者に服従すると言ったが、先に服従するのではない。

必ず力を見せなければならない。

こっちはそうやって服従させた記憶がないんだ。」


「それなら今やればいいじゃない。」


「無理だ。力の法則が通用するのはドレンテ本土のモンスターだけ。

セフィエルに近く住んでいるやつらほど、その傾向が少ない。


セフィエルのモンスターたちにとって人間は敵にすぎない。

自分たちが黙っていても人間側から先に攻撃してくる。

モンスターたちにとっても、人間はただの餌であるだけ。

何千年もの時間の中で血に刻印された本能なの。


何よりドレンテ本土のモンスターたちでさえ人間には簡単に服従しない。

結局、私がこんどは見逃してあげたとしても再び人間を狙って誰かがやられるってことよ。」


「難しいんだな…」



「お二人さんはどちらからお越しになりましたでしょうか?」

ベリーが問う。


「ただの流れ者の冒険者です。」


「そんなに強いのにさ迷うなんて。」


「まあ、いろいろの事情で。」


「どうですか、私とパーティを作るのは?」


「卑怯だ!」

「割り込みするな!」

「私たちの前でよくもそんなことを言うんですね!」


「冗談だ。怒るな。」


…俺も1年前にはこんなふうに暮らした。

懐かしい感じだ。


「そもそもお前はD級だろ!この方たちは絶対A級は超えたはずよ。」


「まぁ, お前らもE級なのにD級の私とパーティだろ?」


冒険者ランクか。

F、E、D、C、B、A、S、Zの8つの等級に分かれた体系。

(※下記の後書きに設定を書いておきました。

この設定は設定集のメモにもっと詳しく書いておきました。)


「話が出たので聞いてみたいですが、等級がどうなりますか?」


ロティという子が目を輝かせながら問う。

さっき収納魔法を使ってしまったので、その程度のレベルは言わないと。


「…Bです。」


「B!すごいですね。

どうやってそこまで上がったんですか?」


「ただクエストだけ頑張ってました。」


「うそ。私たちも頑張っていますが、まだこうなんですよ。

さっき見たら魔法系列のようですが、ちょっと助言してください。」


Bならまあまあ強いなんだけど、これほどまでに熱狂するのは意外だ。

勇者パーティーに任命される時にZ級をもらったが、それは秘密にしよう。



そう騒いでいるといつのまにか夕焼けでその前に村が見える。


「あそこが町です。

名前は『ヘント』というところです」


「ウオオオッ!」

ルメナが走り去る。


「あのアホが…」

早くルメナを追いかける。

世界的に広く冒険者ギルドが位置しており、各国間の連絡と連携も活発である。


これによって世界観全体で同じシステムと運営方式が統一されている。




冒険家はF~AにS、規格外にZがある。






F:登録したての冒険者。 見習いとしてギルドが指定した基礎訓練を受けると昇級可能。 クエストに制約あり。 全体冒険者の14%




E:基礎訓練を通過するか、ギルドで特例を得てスタート。 事実では冒険者の始まりであり、最も多い人はこの等級 40%




D:実力をある程度備え,自己のクラスの修練の基礎があるクラス。 冒険家なら一番先に浮上する看板 28%




C:実力がたまっていい実力者として認められ始める。 普通、この等級から他の職業に転職する場合も優待される11%




B:自分のクラスの専門家として認められる階級で、才能があるか、長い間冒険家として働いた中堅が多い 5%




A:国家で直接コネクションを構築する等級で、現実的な冒険家たちの夢の階級1%




S:大きい国なら10人以上小さい国なら3~4人水準の人間の範疇を超えた超強者たち。 全世界に300人程度




Z:全世界でも最強のうち最強と認められた人々であり、自国以外の国々の10以上のギルドにも功労を認められなければならない階級だ。


又はZ級クエストの発生により当該クラスの任命が必要な場合においてのみ昇級される。


勇者パーティー全員がZでその他は10人余り。

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