1-7 戦いの終わり
『アークライトキャノン』
いつもの癇癪持ちというか。
もう少し距離を置いて撃ってもいいのに、あえてゼロ距離まで近づいて攻撃する。
デリックの攻撃がもう一度魔王の体に的中する。
「もう死ね、怪物め…」
デレクもさっきの二人のように倒れる。
この姿にブリンが再び立ち上がる。
「よし、また魔王に一発食わせようか」
倒れた人が出るほど防御線が弱くなる。
防御線が弱くなれば攻撃も届かない。
だからこそ、ブリンも再び参戦するわけだが。
不安だ。
「よくやったよ、ガンマン。」
「よし、今度はローレンの番だ!」
『カイザーガターリング』
ローレンは魔王に向かって突進する。
魔王はこれに反応して魔法を詠唱する。
さっきのパターンと同じくローレンの攻撃も成功するべきだった。
「くうっ···」
ブリンに攻撃が当たり、防御が崩れる。
「やっぱり精神力の回復がそう簡単にできるわけがない。
それに気力もとっくに限界だった。」
エリクサーや回復魔法はあくまでも身体と体力の回復で、精神力と気力の回復は別物だ。
何よりブリンはパーティーの助けなしに一人で突進したので、その被害はさらに大きかった。
あんなに体がずたずたになる苦痛だったのに、なんともないわけがない。
ブリンが防げなかった攻撃はそのままローレンに行き、その衝撃で必殺技が正確に当たらなかった。
しかし、外れた攻撃の衝撃だったのに、魔王はよろめく。
すでに魔王も限界だという証拠だ。
あと一歩で…
レイナとデレクも一応、気は取り戻した。
だが、今戦場に戻っても、ブリンのようになるのは目に見える。
もう残っているのはジェラードとエリゼだけ。
ジェラードが心を決める。
「魔王も限界だ。 2人のうち1人でも攻撃が成功すれば、倒すことができる。
二人で一緒に飛びかかる。 エリーゼ、準備しろ。」
よくない。
2人だから焦ったのは分かるけど、今必要なのは確実な一発。
ブリンの場合は魔王が慌てたせいで運が良かっただけ。
防御なしに攻撃が届く確率は少ない。
もし、当たってもローレンのように中途半端な攻撃になるなら、決定打にはなれない。
「…ジェラード、悪いけど、やっぱりこのまま待つわけにはいかない。
どうせ本当に最後の最後だ。全部使うのが合理的なんだ。」
そしてまだ横になっているレイナに聞く。
「レイナ、すまないけどもう一度死ぬ覚悟をしてくれ。」
「何をおっしゃってるんですか?!レイナさんもまだ回復が必要です!」
「ブリンよりはマシだ。
元々剣士で、ブリンより防御力も高く、ほかの奴らがしっかり助けてやったから。」
「だとしても…!」
「オフィーリア、もういい。
それで私がどうすればいいの?」
「俺が行って今持っている生命力を全部使って魔王の防御を崩す。
魔法キャスティング時間の間に君が俺を守ってくれ。」
「…わかった。」
「オフィーリアはできる最高の敏捷性バフを準備して。
ジェラードが駆け出す瞬間に与えろ。」
「本当に今回で終わりですよね?
…了解しました。」
作戦を説明し、俺も自分の分のエレクサーを取り出す。
ためらうことなくエリクサーを飲む。
生命力が戻って…
もう一度力が戻ってくる…
ジェラードも魔王もまだ動いていない。
知っているのだ。まもなく決着だ。そのため慎重になる。
素早くジェラードに接近する。
「ジェラード、ちょっとさがれ。」
「クリス?!何で来た?お前に何ができる!?」
「君を勇者にするために来たよ。
エリクサーを飲んで走る準備だけしておけ。
それだけ知っておいて。」
口論する暇はない。
エリーゼにも作戦を伝える。
「…無謀なことをしなければ死ぬ病気でもあるの?」
「無謀なことをしないと病気でばなく魔王の手に殺されるぞ。
ぜったい勝つ。」
そして、キャスティングを始める。
魔王がすぐに反応する。
やっぱり俺の存在が気に食わないのか。
「こんな大変な戦いは生まれて2回目だ。」
そして最後の魔法を準備する。
「敬意を込めて壊してやる。」
そして周りに魔法の槍が作られる。
俺たちを最初に倒した 『レニゲード・スピア』。
ただし、本数と大きさはさっきよりはるかに優れている。
「お別れだ。」
そして飛んでくる最後の攻撃。
レイナが俺の前に出る。
『カイマンスケール』
皮膚が硬いうろこに変わる。
そして正面からの攻撃をすべて跳ね返す。
「長くは耐えない!早くしろ!」
果てしなく飛んでくる攻撃をすべて阻止するレイナ。
少しだけ···もう少し··· 本当に少しだけ…
レイナの頭に槍が飛び込み、それを防御した剣を壊す。
その衝撃で後ろに倒れながら、グロッキーになったレイナにもう一度槍が飛んでくる。
『アトモスメントレム』
そして槍はレイナの耳をかすめていく。
それとともにジェラードとエリゼ、オフィーリアの方まで狙っていた槍がすべて力を失って地に落ちる。
「どこまで邪魔するつもりだ!」
魔王が悔しそうに歯を食いしばる。
突風が飛んでくる槍の勢いを全て止める。
「世界の大気を操る大魔法なんて。あの人、どれだけ強いんですか…」
オフィーリアが我を忘れてつぶやく。
「ぼうっとするな!オフィーリアはバフ準備してエリーゼも準備しろ!」
『テンペスタースカド』
ジェラードには敏捷なバフが与えられる。
「私が使えできる最高のバフです!あとはお任せします!」
「エリゼ, 魔王を撃て!」
『フェニックス·ボールフレイン』
エリゼの弓が魔王を狙って金色に輝っている矢が魔王に飛ぶ。
魔王が残っている『ディバインスフィア』をぶつけようとするが、矢と出会う前に落ちてしまう。
「このくらいでは足りないということを、まだ分からないのか!」
最後まで残っていた「ディバインスフィア」全てをぶつける。
そして、閃光とともに粉々に砕ける。
そして閃光とともに俺の魔力も底をつき、風の制御を逃がしてしまう。
「ざんねんだな、最後の手は失敗…」
魔王の話が途切れる。
閃光の中で他の閃光がきらめいた。
ジェラードの槍先が。
「何の速度…」
続く言葉もまた締めくくることができなかった。
槍が魔王の胸に届く。
『ジェニスエクシード』
槍が魔王の胸を突き破って一緒に地面に落ちる。
槍の当たる音に倒れていた人々も、目を覚ましてその魔王が落ちるのを目撃する。
「勝った!」という単語が、その瞬間、みんなの頭をよぎっただろう。
ただし、俺だけは「!」の代わりに「?」がついた。
本当にこれで終わり?
『レニゲード・スピア』は確かに強力な魔法だが、他の魔法よりはるかに強力ではなかった。
魔王の最後の攻撃と呼ぶには弱い。
まさか…
魔王が地面に倒れ,ジェラードが胸に打ち込まれた槍を押さえつける。
「結局、俺たちが勝ったようだな。」
「そうおもうのか?」
魔王が淡々と話す。
「なんだ、その態度は?ここで逆転できると思う?」
「いや、逆転は難しだろう。奥の手があまりにも遅くてしまった。だけど…」
「ジェラード!今すぐとどめを…」
叫ぼうとした瞬間、口から血を吐く。
声が出ない。
生命力の尽きた副作用だ。
エレキサーを飲んだとはいえ、それに準ずる魔法を使った。
体が大丈夫なわけがない。
「負けるのも嫌いだから引き分けでも作ろうかと思っているんだ。」
その言とともに天井を壊して空に光が飛んでいった。
「今何をしたんだ?!」
ジェラードが魔王を追及する。
「魔法だ。魔王最強の。」
そして一言の詠唱を叫ぶ。
『メテオストライク』
そして空が夕焼けのように赤く染まって、空から勝者も敗者もすべて無にする暴君が降りてくる。
見た瞬間直感する。
これは方法がないということを。
「てめえ!あれを今すぐ立ち止まれ!」
ジェラードが魔王に叫ぶが、魔王はゆったりとした表情だ。
「わるいがメテオは自分でも防ぐ方法がない。
これで私の勝利は消えてしまったが、君たちはどうだ?」
エリーゼが俺とレイナをオフィーリアの方につれてくれる。
「口だけでも動けるように回復させてみろ。」
すぐに回復魔法が続き、口から血が止まる。
「クリス、 お前は知ってるでしょ?あれから逃げる方法!」
…
「なんで黙っているんの?!何でもいいから言え!」
「無理だ。」
「何に?」
「無理だ。どうにかできるものじゃない。
魔法をぶつけて力を落とすのもダメだし、転移魔法で逃げようとしてもあれくらいの魔法なら転移したところまで被害がくる。
エリクサーも無理だ。
あれに当たれば即死だ。
エリクサーは生きた人を生き返らせるポーションであって、復活の薬ではない。」
「それじゃ、どうすればいいのよ?!
そのまま死んじゃおうっての?」
「…」
「どけ!このまま静かに黙ってはいられないわ!」
エリーゼが倒れているやつらのところべ行く。
俺はどうすればいいんだ…
「本当に方法がないんですか?」
オフィーリアが問う。
「お前は大丈夫よ。 『ソレムサンクチュアリ』があるから。」
絶対防御魔法 『ソレムサンクチュアリ』。
相手の力や魔力など関係なく、無条件その力をゼロにするオフィーリアの極意。
「私だけが生きのこる方法を質問したのではありません!」
「さっき言ったじゃないか。 無理だ。」
「私の『ソレムサンクチュアリ』で何とかなりませんか?」
「お前の『ソレムサンクチュアリ』も考えてみたが、もうお前もかなり魔力を使ったし、完璧な状態でも4人くらい入れるくらいの大きさが限界だろ。
全員が入ることもできず、メテオの衝撃が消える前にお前の魔力が尽くすのが先だ。」
「それは…やってみないと分からないことじゃないですか!」
「いや、確かに不可能だ。
オフィーリア、お前はよくしてくれた。
これ以上、俺たちのために無理するな。」
すでにメテオは半分ほど落ちた。
もっすぐすべてを破壊する。
「いいえ。魔王を倒すのも不可能なことでしたが、倒しました。
もう一度運を信じてみます。」
オフィーリアがエリゼーのところに駆けつける。
「みんな、私の方に集まってください!」
「やめろ!生きる道を諦めようとするのかよ?!」
俺を無視してみんなを呼び集める。
「俺の言うことを聞いて!君はきっと生き残れるのができる!
俺たちは放ってろ!」
「メテオが落ちる直前に防御魔法を展開します。
その時に最大限密着してください。」
「お前らも止めてみろよ!オフィーリア、合理的に判断しろ!
可能性のない事のために命を捨てるな!」
「黙れ!」
オフィーリアが叫ぶ。
「クリスさんがいつも言うその合理的なのは一体何ですか?!
可能性がないなら悩みもなく捨てる非情さが合理的なんですか?!
申し訳ないが、私はあなたくらいに合理的な人ではないです!
「何言ってるんだ?!俺はお前のために…」
「私のためならこれを飲んでもう一度頑張ってください。」
渡したのはオフィーリアに残っていた最終のエリクサー。
「このアホが!これをどうして俺に?!」
「魔力補助お願いします。」
「お前最後まで…!」
メテオの熱気が感じられ始める。
オフィーリアがメテオの方を見る。
「合理的理由が必要なんですか?
まず、私は勇士パーティーの聖職者。
倒れた人たちを守ってあげる盾としてするべきことをするのです。」
その言葉に俺は言葉を失う。
「そして魔法使いのあなたは違って聖職者の私としては奇跡を信じています。」
そして、目の前にメテオが近づいてきた。
「何よりも、愛する人を守ること素敵じゃないですか?」
「…何?」
「行きます!」
迷いなく杖を地面に突き立てる。
『ソレムサンクチュアリ』
黄金の波のようなドーム状の防壁が作られ、パーティーを包み込む。
それと同時に、すべてを破壊する力がぶつかる。
クゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
衝突は持ち堪えた。
しかし、もう防壁が崩れていく。
「やっぱりこの大きさは無理だ! 君だけを守る大きさに縮小させろ!」
「魔力補助してください!」
オフィーリアがくれたエリクサーを飲んで、オフィーリアの双肩に手を置く。
それとともに防壁の亀裂が止まるが、修復はされていない。
「たのむ。まだおそくない。」
「もう一度黙れってと言われたいんですか?」
「俺の魔力が尽きたら終わりだ!」
「お願いだから私を信じてください!
私はあなたを今までそうしてきたように信じているから!」
だが、再び亀裂が始まる。
「止まれ、お願い!」
虚しい叫びに過ぎなかった。
メテオの勢いは変わらない。
そして黄金の防壁がだんだん薄れていく。
オフィーリアにも限界が来たか。
魔力補助はあくまで補助にすぎない。
一度に大量の魔力を与えることはできない。
そして俺の魔力さえ限界が来た。
「ちくしょう、これ以上は…」
俺一人の命だけだったら、もうあきらめたかもしれない。
しかし、ここには守りたいひとがあまりにも多い。
その気持ちが俺をささえてくれている。
だが、一瞬でその気持ちは粉々にさった。
オフィーリアが倒れる。
それとともに金色のドームが消えていく。
倒れながらつぶやく声に目の前が白くなる。
「ごめんなさい…守ってあげられなかった…」
時間が遅く流れる。
オフィーリアが結局倒れた。
もうすぐメテオが落ちる。
死ぬ。
死んでしまう。
オフィーリアが死ぬ。
俺を助けると自分まで命を捨てた。
幼い頃から不公平で非常識なことは多かった。
不合理なことがあふれてった。
でも俺を助けたいと言った人が、 こうやって。
誰よりも優しい人が、こうやって。
俺の目の前で死ぬのはひどすぎじゃない?
オフィーリアが信じる神様。
後で神殿にお辞儀をしようが、供え物を捧げようがするから。
あなたが良心があればあの子を助けてくれ。
あんたが言った通り、人々を助けようとしたオフィーリアを…
「お願い」
その瞬間、俺のネックレスが輝き、光が出てオフィーリアを覆う。
それと一緒に金色ドームが再び現れる。
さっきよりもっと厚くてきらびやかに。
そのように力を取り戻した金色の波は破壞を許さない。
そして後ろの誰かが叫ぶ。
「メテオの勢いが衰えた!」
世界を砕くような勢いでドームにぶつかったメテオが傾く。
そしてメテオは力を失い、ただ大きな岩になってドームから転げ落ちる。
「防い…だのか…?」
誰かが言った。
そして見えるのは消えていく金色のドームとメテオの残骸。
倒れている俺とオフィーリア。
そして誰もこの最後の状況の中でその声を聞くことができなかった。
「やっと見つけた」




