もし生まれ変わったら
「もし生まれ変わったら、あんたじゃない人と結婚したい」
真奈の口癖だった。
「俺だってそうだ」
いつものようにそう返す。
それからどちらともなく口づけて、小さく笑ったりしながら、眠りにつくんだ。
そして……
「もし生まれ変わったら、あんたじゃない人と結婚したい」
それ前の世界でも何度も聞いたよ、と言いかけて止める。
「俺だってそうだ」
俺と真奈は、何度生まれ変わっても結ばれた。
ある時は燃えるような恋に落ち、ある時は静かな優しい恋。
禁断の恋や、親の決めた相手だった事もあった。
運命なんて信じていなかったが、多分運命なんだろう。
そして決まって、哀しい別れ方をするんだ。
コンピュータが管理するディストピア世界でも、中世ファンタジー世界でも、瓦礫が広がる世紀末でも、決まって哀しい別れ方をするんだ。
病で早世したり、戦乱に巻き込まれたり、家の都合で引き裂かれたり。
こんな哀しい別れ方をするなら、もう出会わなければいいんだ。
それでも気付いたら、真奈と結ばれている。
心の底から、恋して、愛してしまっている。
運命なんて信じたくなかったが、多分運命なんだろう。
「もし生まれ変わったら、あんたじゃない人と結婚したい」
俺だってそうだ、そう言いかけて口をつぐんだ。
真奈をそっと見つめた。
「俺は生まれ変わっても、真奈と結婚したい」
少し意外そうに目を見張る真奈に、俺はそっと口づけた。
真奈の黒い瞳が、暖炉の灯で揺らめく。
そして俺は皮鎧を身に着け、剣を取った。
「もう、行くのね」
「ああ」
強く抱きしめる。小さく口づける。
「真奈。次の一回だけでいい。もし生まれ変わっても、俺と結婚してくれ」
俺は真奈をずっと見つめ続けた。真っ直ぐに見つめ続けた。
やがて、真奈は少し照れ臭そうに俯きながら……はい、と小さく呟いた。
それだけで、誰にも負ける気がしなかった。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
俺は荒野を一人進み往く。
真奈の小さな震え声を、そっと胸に抱きながら。




