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19才  作者: mame
8/27

恋への一歩

まともな会話ができないまま、あれからどれくらい経ったんだろうか。

その間にも自分の周りで色んな出来事があった。

マサシとのこと。

ナオコとのこと。

アキコとの秘密。



色んな人が話にからんできて正直頭がうずまくことがある。

マサシはあれから連絡すらしてこない。

ナオコはユウスケに向かって一直線だ。

アキコは福田と付き合いながらユウスケとの仲も相変わらず怪しい。


私はというと、色んな話に巻き込まれてはいたが、全く何も進んでいない。

ユウスケからナオコのプリクラをもらった日以来、まともな会話すらしていない。

こんなんで本当に恋をしてるって言えるんだろうか…。


もどかしい日々だった。

そんなある日、とうとう転機のチャンスが訪れた。



「お、何かかぶるん久々やな。」



ユウスケと休憩が一緒になったのだ。

その日はナオコもアユミもいなかった。

平日で比較的平穏だったために早めの休憩を取るよう言われたのだ。



「あ、ほんと久々ですね。そんな気しないですけど。」



「ほんまやな。ナイトも一緒やし。」



「今日はナオコさん達がいないからちょっと静かでしょ。」



「ほんまやで。アイツらいっつもうるさいなー。」



「でもよく話してるじゃないですか。」



「話すってか話かけられてるだけやわ。」



「積極的ですよねー。色んな人に話しかけられるの結構うらやましいなぁ。」



「おーそういや人見知りするんだったっけ。」



「そうなんですよ。なかなか人の輪の中に入ってけなくて…。

 ナイトのみんなと話せるようになったのもアキコさんが誘ってくれたからなんですよ。」



「別に人見知りでもいいんちゃう?てかオレも相当人見知りやし。」



「そーなんですか?!」



「ほんまやで。大学入り立ての時とか昼飯家に帰っててんで。」



「ほんまに?!」



「ほんまに?って嘘ついてどーすんよ。」



「何かちょっと意外ってか何ていうか…。」



「オレ自分から人についってったり輪に入ったりすんの苦手やねん。

 動物占いもオオカミやし。しかも黒オオカミやで。」



「なんですか??それ。」



「知らんの動物占い?!」



「動物占いは知ってますけど、その黒オオカミって…。」



「あー今のやつって色まで分かるねんてさ。

 色でさらに絞れるらしいわ。友達に無理矢理やらされてんけどな。

 それが結構当たっててん。ビビるわー。」



「へー占いとかするんですね。また意外。」



「だから無理矢理やって。携帯のサイトであるんやって。これ。」



そう言ってユウスケは自分の携帯を開いて私に見せた。



「へーそんなんあるんですね。初めて知ったし。」



「こういうの女の子の方が得意なんちゃうん?」



「確かに結構いろんなヤツありますけど私あんまり占いやんなくて。

 そうって言われちゃうと結構信じ込むからダメなんですよ。」



「それってみんな同じなんちゃうん?オレもビビったし。」



「ですかね…?私は確かヒョウだった気がします。」



「ヒョウか。何かそれっぽいな。」



「なんですかーそれ。」



「色見たろか…てか送ったるわ、これ。」



「ホントですか?!ちょっとやってみよー。」



「ほなアドレス。」



「あっ、そうですね。赤外線できます?」



「オレの機種自分と同じやん、そりゃできるわ。」



「あっ、すみません。」



顔が赤くなったかもしれない。

あまりの展開に頭が舞い上がってしまい訳の分からないことを言っていた。

そう、ユウスケは偶然にも私と同じ機種の携帯を使っていた。

そのことをネタに聞き出そうかと思いながらもなかなか聞けずにいたのだ。



「送ったで。」



「あ、きましたー。」



「自分のも送ってや、赤外線あるで。」



「もーユウスケさんて結構意地悪なんですねー。」



「よー言うわ。自分が天然なだけやわ。」



「アドレス結構複雑な感じですね。」



「何で?!よー見てみ。」



「え??何か暗号っぽいんですけど…。」



「ekusuuy.0918@docomo.ne.jp…」



「ほんまに分からんのん?!」



「はい…全然…。」



「ほらやっぱ天然やわ。オレの名前やで。」



「は?!名前…あーっっ!!」



「やっと気付いた。名前はありきたりやけど、逆からにしとけばかぶることないやろ。」



「全然分かんなかった…じゃぁ数字は誕生日?」



「そうや。他に何かありますかー?」



「いや、プレートとか色々…。」



「おープレートな。車こーたら変えたろっかな。てかゼロから始まるプレートないやろ。」



「あれ?そうでしたっけ?」



「自分車乗ってんやろ?!プレート見てみ。」



「私のは6638です。」



「やろ?ホンマ自分才能あるわー。」



「何の才能ですか?」



「だからそれやって。おもろいわ。」



「あの、私そんな感じに言われたことないんですけど。」



「オレがおもろいって思うんやからそうなんやて。オレ変わりもんやからな。」



「じゃぁあたしもですか?!」



「そうかもな。まぁいいやん。おもろい方が。」



「よく分からないんですけど…。」



「ま、えーやんか。何色かまた教えてな。他の色知らんねん。」



「え??友達は?」



「友達ゆーても二人やで。3人みんな黒やってん。ミラクル。」



「すごいですね…黒。」



「そうやでー。一匹黒オオカミやわ。当たってる。」



「どんなトコがですか?」



「オレ?一人の時間が大切やねん。一人なん好きやし。」



「じゃぁみんなで一緒にワイワイって感じは嫌なんですか?」



「嫌とかそんなんじゃなくてな。一人の時間が必要ってことなん。」



「寂しくないですか?」



「そりゃあんまり一人だと寂しいで。でもバイト来るし、友達も一応おるし。」



「なんか大人な感じですね。」



「そうか?周りに流されんのが嫌なだけやわ。

 クリスマスだから彼女作るとかこないだみんな言いよったんとかありえんわ。」



「あーみんなてかナイトの人がコンパの話してたやつ??」



「そーそれ。何でなん?!て思うし。別におらんやったらおらんで構わんやんか。

 一人でもえーし、バイト入ったら入ったでえーし。」



「ユウスケさんは…彼女さんとか…いないんですか…?」



「オレ?おらんよ。」



「そうなんですか。」



「なんや?おらんけどなにか?」



「あーそうじゃないんです。私も似たような感じで…。」



「どうゆうこと?」



「友達がコンパで彼氏見つけるって今盛り上がってて、誘われたりするんですけど何か嫌で…。」



「断ったらいいやん。」



「いや、そうなんですけど、何て言うか…色々難しくて…。」



「そうやな、女の子はそうゆうんがめんどくさいんやったな。」



「分かってるんですけど、なかなか私もこんな感じなんで…。」



「自分正直やもんな。でも嫌なんならちゃんと断るべきやで。相手おるんやったら特にな。」



「あっっ、いや、相手はいないんですけど…。」



「そっか。こんなバイトばっかで相手もできんやろ?」



「いや…その辺は特に苦じゃないんで…。今も結構楽しいですし。」



「ならいいやん、マイペースで。」



「そのマイペース過ぎて困ることが結構…。」



「それが自分のキャラやろ?えーやん、大事にしたら。」



「ですかね…結構考えたりしますけど…。」



「人に合わせてコロコロ変わるヤツより全然えーで。オレそうゆう男も女も嫌いやねん。」



「ユウスケさんも結構正直言いますよね、いつも。」



「自分に嘘つくよりマシやわ。だからオオカミやねん。」



「そうですか。なんかちょっと気が楽になった気がします。」



「なんで??オレ好きなこと言いよっただけやで?」



「いや…何となくです。あーよかった。」



「ホンマ自分えー才能持ってんで。」



「はい、じゃぁありがたく受け取っときます。」



「うん…毎回想定外やわ。おっ、そろそろ時間やで。」



「あ、ほんとだ。早っ!!」



「ほなな。お疲れ。」



「はい、じゃぁまた。」



そう言って私たちは自分の仕事に戻った。



あっという間の30分だった。

こんな展開になるとは思いもしなかった。

嬉しくて飛び跳ねたかった。

彼は変わらず自分の持ち場で材料の仕込みをしていた。


また話したいな、もっと話したいな、まだ足りないな、そう思った。

自然と視線が彼の方へ向いた。

気が付いたら彼のことを追いかけている。


彼に近づけるのはたまったお皿をウォッシャーへ持って行く時。

それから裏の冷凍庫へ行く時。

重いお皿の入ったBOXはいつもホールの男の子が持って行ってくれていた。

でも彼の近くに行きたくてわざわざBOXチェンジを買って出た。

マイナス20℃の冷凍庫にも半袖の制服のまま入って行った。


地味な行動だ。

でも自分なりの一生懸命な行動だった。

彼の近くを通るたび、彼の方を見た。

そんな私に気付いてか気付かないでか、彼とはよく目が合うようになった。

私が見過ぎているのか…。

またそう考えてしまうこともある。


でも後悔はしたくない。

精一杯の自分の想いをいつか彼に分かってもらおう、そう次の目標を立てた。

それからもっと彼に近付こう、仲良くなろう、そう思った。

そして何より、自分のことを知ってもらいたい、そう強く願った。


好きな人ができた。

そう実感する毎日だった。

何もかもが充実して楽しかった。

朝が早くても夜が遅くても、学校が楽しくなくても体調が悪くても。

そんなの全然つらくなかった。

今日も彼に会えると思ったら何でもやる気が出た。

自分でも驚くくらい、毎日が色濃いものとなっていた。


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