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19才  作者: mame
14/27

チャンス

数日後、学校から帰っている時のことだった。

ふと携帯を見るとメールが入っている。

開いてみると、ユウスケからメールがきていた。

私は驚きのあまり一瞬立ち止まってしまった。

彼がメールを送ってくれたのはその日が初めてだった。



 おつかれさん。今日休みやろ?

 たまにはのんびりしーや



簡単な文章だった。

それでも私にとっては何よりも嬉しい出来事だ。



 ちょうど今帰ってるとこです。

 今日は久々にツタヤにでも寄ってみようかな♪



とりあえず返信した。

前に彼と話をした時、最近よく聴く曲があると言っていた。

そのCDを借りてみようと思っていたのだ。

また次彼に会った時は話の種になる、そんなことを考えていた。



 ♪♪♪〜♪♪♪♪♪〜♪〜



数分後、返事がきた。



 オレはいつも近くのちっちゃいとこで借りてんで

 いっつも5本1000円やで

 今日は残っとる映画見るわ〜



そんなたわいもないやりとりだった。

それでも嬉しかった。

そのうち一緒に映画を見に行きたいなと思った。

新しい目標にしよう。


私はツタヤに寄って、彼が聴いていると言っていたCDを買った。

店でしばらく視聴をしていたが、私自身が気に入ってしまった。

結局アルバムの方をを買って帰った。



 こないだ言ってたCD視聴してみたらすごいよくて♪

 アルバム買って帰っちゃいました(^_^;)



 マジで?!

 アルバム出てたんや。知らんかったわ〜

 オレも今度借りよ。



 あたしの貸しますよ(^_^)v

 すぐ録音して車で聴くんで♪



 ほんまか??ほな頼むわ〜

 いつでもええで



 じゃあまた店に持ってきます

 次ん時で。



 おーありがとうな。悪いな。



 いえいえ、私も気に入っちゃったんで♪



 ほなまたな、ゆっくりしーや☆



 ありがとうございます(*^_^*)

 でわでわ。



そんなやりとりがしばらく続いた。

いつもの会話の延長のようたっだ。

ユウスケがメールをくれた、ただそのことが嬉しかった。


その日は買ったCDをずっと聴いていた。

彼が好きな曲、聴いているだけで心地よかった。

今までテレビやどこかの店で耳にする程度だったのに。

改めて聴くと、なんだかドキドキした。


歌詞を読みながら歌を聴くことなんてなかった。

不思議と温かい気持ちになる。

また明日会える、そう思うだけで嬉しい。

恋とは、きっとこの気持ちだ。

そう感じられる今、そう感じられる自分が幸せだった。



次の日、いつもと変わらず何事もなかったように、ユウスケはそこに居た。

会えると言っても休憩が重ならないことには話をする時間はない。

そんな時に限ってきれいに休憩は入れ違った。


結局、ユウスケはアップしてしまった。

今日はCDも渡せないだろうし、話もできないだろう。そう思った。

何も急ぐ必要など何もない。

彼もいつでもいいと言っていた。

しかし、なぜか珍しく私の中で焦りの感情が沸いていた。


そんな私の様子を見ていたのか、それともただの偶然なのか。

萩岡が私に事務所用務を頼んできたのだ。

備え付けのパソコンでフェアメニューの出数を数えてきてくれというものだった。

仕事に厳しい萩岡のことだから、やはり偶然のことだろう。

とにかくラッキーな展開だ。

早速事務所に入ってパソコンを開いた。


ユウスケはいなかった。

おそらく更衣室で着替えているんだろうと思った。

とにかく頼まれた仕事を優先させないとせっかくのチャンスも台無しだ。

萩岡にただ叱られて終わってしまう。

とりあえず、売り上げの集計を始めた。


10分ほど経った頃だろうか。

キッチンの方からユウスケの声が聞こえてきた。

疑問に思った時、手にカレーを持ったユウスケが入ってきた。



「お??なんや?ついに昇格したんか?」



「いやいや、ちょっと頼まれて…。」



「頼まれるようになったってことやな。昇格も近いで。」



「いや…そんなん考えたこともないし…。」



「まぁな、しょせんバイトやもんな。」



「今日はもう終わりですよね?」



「おーそうやで。ラストまでせんの久々やわ。」



「結構最近負担かかってますもんね。」



「自分もほどほどにせんといつか正社員なるで。」



「やめてくださいよ。バイトでお腹いっぱいです。」



「ほんまやな。オレももうちょっとシフト減らしたいわ。」



「そうですよね…。自分の時間欲しいですよね。」



「それはまぁまぁあんねんけどな。学校キツイわ。」



「そっか。講義の時間バラバラですもんね…。」



「そうやねん。正直結構行けてないんよな。」



「難しいですね…。店も店で今人いないし。」



「まあな。チーフええ人やから余計に言いにくいんやわ。」



「確かに…店長もいい人だし。」



「まぁそこまで気にする必要ないんかもしれんけどな。」



「複雑ですね…。」



「それより自分頼まれごと終わったんかいな?」



「あ、あと印字するだけなんで。表も今暇っぽいんで。」



「おっちゃんにまた怒られんで、はよせな。」



「はい、すみませーん。」



「まぁボチボチしーや。」



「あ。CD…言ってたやつ、持ってきたんで…。」



「マジで?!もう??自分聴いたん??」



「車で聴いてるんで。コレはもう大丈夫です。」



「何か悪いな。ほな借りて帰るわ。」



「返却はいつでもいいんで。ゆっくり聴いてください。」



「返却て。なんやねんな。ありがとな。」



「じゃあそろそろ戻ります。ごゆっくり。」



「おーお疲れ。」




私は持ってきていたCDを彼に渡して仕事に戻った。

いつチャンスがきてもいいように、パソコンの横に置いておいたのだ。


どうしても今日渡したかった。

急ぐ必要などないと思いながらも、昨日の余韻を引きずっていた自分。

あのままの流れで今日会えるなら、これもまたチャンスだと決めつけていた。

なかば無理矢理感もあったかもしれない。

それでもまた一歩、進めたような気がした。


少しずつ、少しずつ、彼との距離が縮まっていく感覚が嬉しかった。

彼自身はどう思っているのか、そんなことを考える時もある。

しかし、今の私はそれよりも前へ進む自分がいることに喜びを感じていた。

恋を楽しもう、毎日を楽しもう、そう思っていたからだ。

ユウスケが好き、今の私にはそれしかなかった。



恋をすると、周りの景色までもが違って見える。

いつもと変わりない街の風景も何だかキレイに見えたりする。

メイクをするのも楽しい。

学校に行くのも苦ではなかった。

何より、バイトに行くのが楽しみで仕方なかった。


彼のいる日、いない日、構わずその空間に居ることが嬉しい。

それくらい私の日常は変化した。

そんな私の様子を見て、周りの友達も色々と聞いてくることが増えた。

いいことでもあったの?とか、彼氏ができたんでしょ?とか様々だった。


どうしてここまで変われるんだろう、そう思った。

自分の心の中がこんなにまでも前向きになれる、不思議だった。

彼への想い、伝わる日が来るんだろうか…。

とにかく今は一日を大切にしていこう。そう思った。


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