プロローグ
物語に出てくる登場人物や各種名称はすべて架空のものです。
ご家族・お知り合い等と同じ名称が記載されていることもあるかもしれませんが、ご了承下さい。
「付き合ったらええんちゃうん。」
ほんとはもっとそれらしい始まりが理想だったのに…。
それは年も明けて間もない明け方のファミレスでの展開だった。
大晦日、私はバイトが休みだった。
彼は22時までシフトが入っていた。
その日、私は初めて彼と二人で出掛ける予定になっていた。
最高のチャンスだ。
同じバイト先で働くようになって1年近く。
働き始めた時期も同じで研修もよく一緒になっていた。
なのになぜか彼とは半年以上も会話を交わしたことがなかった。
そんな機会がなかったわけでもない。
ただ彼には話しかけにくかった、それだけなのだ。
バイトが終わってタイムカードを押したらそのまますぐに着替えて帰る。
話す時間もなければ話しかけるスキもなかった。
私にとってはただの同じバイトの大学生、といった存在。
彼は国立大の工学部に通う2年生。
兵庫県出身。
小さい頃からサッカーが好きで、サークルにも入っている。
私は、高校を卒業して専門学校に入った。
福祉保育コースの1年生。
小さい頃から幼稚園の先生になるのが夢だった。
とにかく好きなことだけを勉強したかったから専門学校に入学した。
家族は5人。
父と母、そして妹と弟がいる。
地元岡山で生まれて岡山で育った。
そんな私には、一つの小さな悩みが事あった。
恋愛を知らない…
私は、男の人と付き合ったことがない。
彼氏がいるというのはどんな感覚なのか、分からなかった。
高校時代は好きな人がいて、結局3年間ただ追い続けていた。
サッカー部の彼。
勇気を出して、高3の夏に告白をした。
「今色々忙しくて…。ごめん。」
彼はそう言い私はあっけなくフラれた。
忙しくなかったら付き合ってくれていたんだろうか…。
そんなことを考えながら失恋の傷をしばらく引きずっていた。
その後、友達や後輩に慰められ、渋々あきらめることに。
そんな苦い失恋の思い出を抱えているだけだった。
高校卒業を間近に控えた頃、私は新しくバイトを始めることにした。
選んだのはファミレス。
制服が可愛いいという理由で、ウェイトレスを希望した。
お金を稼ぎたかったから週5日入ってもいいと承諾し、採用された。
店で働いていたのは近くの大学に通う大学生や高校生がほとんどだった。
年が近いこともあり、すぐに仲のいい友達も出来た。
しかし彼はしばらくバイトのみんなとも距離を置いていた。
見た目は少し童顔のクールな印象。
背は高く体型はやせ形。
いつもカジュアルな服装で400ccのバイクで通勤してきていた。
私はただ、みんなで騒いだりするのが嫌いなタイプなんだろう、そう思っていた。
彼の名前はユウスケ。
私の名前はマキ。
私たちの恋愛は年明けのファミレスで始まった。
どこにでもいる普通の二人。
でもこの恋が私にとって初めての恋愛になった。
そして生涯で一番、忘れられない大きな恋になった。
初めての彼氏。
大好きだった。
きっと誰もが経験したことのある想い。
もうすぐ19歳、初めての恋愛が始まった…。