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ダンジョン探索者ナナちゃん6歳

作者: まのやちお

 ナナちゃん(6歳)は困っていました。


「ぶきがない」


 ナナちゃんを預かることになったので、お祖母ちゃんは危ない物は全部鍵のかかるところに仕舞っているのです。


 台所のナナちゃん用の包丁も、お祖母ちゃんが一緒じゃなければ触っちゃだめだと言われています。


 あとは?


 ほうき?


 あっ!


 部屋を見回したナナちゃんは良い物を見つけました。




「ピコピコハンマー!」


 お隣のおじいちゃんがこの前くれたのです。

 これならナナちゃんでも振り回せます。


 ナナちゃんはやっと見つけた武器を手に、裏庭に向かいました。


 昨日までは無かった小さな洞窟。


 ダンジョンをやっつけるために⎯⎯。



 ◇◇◇◇◇



 ある日突然、世界中にダンジョンが出現した。

 各地の大都市周辺にいきなり現れたダンジョンの入口には巨大なスクリーンのような物があり、“神のお告げ” なるものが映し出される。


 ダンジョンの中に、また時には外に溢れ出す魔物たち。そして魔物を倒すことによって手にすることができる不思議な力。


 電話もインターネットも繋がらない。テレビもラジオも届かない世界。崩れていく世界の秩序。


 世界はダンジョンと神のお告げを中心にした新たな世界へと変化していく。

 力を求める人々はダンジョンの最深部を目指す。

 彼らはダンジョン探索者と呼ばれた。




 ◇◇◇◇◇




 ナナちゃんにはパパがいません。

 ママと2人で町に住んでいましたが、ママが病気になってしまったのでナナちゃんは1人でお祖母ちゃんの家に行くことになったのです。


 ママは病院で悪いところを治してもらっているのです。

 電話も通じないので、ナナちゃんはただ待っていることしかできません。


 涙はおふとんの中だけです。

 泣いたらお祖母ちゃんを困らせてしまうからです。


 ナナちゃんはお祖母ちゃんの言うことをよく聞いて、良い子でママの帰りを待っていました。


 この村にはナナちゃんの遊び相手がいません。

 お隣も、そのお隣も、お向かいも、そのまたお隣も、この村に住んでいるのはナナちゃん以外全員おじいちゃんかおばあちゃんなのです。


 みんなが畑や田んぼの仕事で忙しいのはナナちゃんにもわかります。


 お祖母ちゃんにはおっかない魔物が出るかもしれないから庭から出てはいけないと言われています。

 だからナナちゃんはいつも庭で1人で遊んでいました。


 そして見つけてしまったのです。

 昨日は無かった小さな洞穴を。そして洞穴の中でピョンピョン跳ねているスライムを。


 ナナちゃんの両手に乗るくらいのプヨプヨした丸いものがピョンピョン跳ねています。


 ⎯⎯うん。スライムだ。

 ナナちゃんはゲームの中でスライムをたくさん倒したことがあるのです。

 ⎯⎯つまりこの穴はダンジョン?


 ナナちゃんは近所のおじいちゃんたちが暗い顔で話していたのを思い出しました。


 ダンジョンをなんとかしないとここにも魔物が来るようになるかもしれない。

 自分たちでは足手まといになってしまう。

 若い者にがんばってもらうしかないと。


 ナナちゃんは考えました。

 この村で一番若いのはナナちゃんです。

 だから、ナナちゃんが頑張るしかないのです。


 じっと観察していると、スライムは同じ場所で上下にピョンピョン跳ねているだけのようです。これならナナちゃんでも⎯⎯。


「えいっ!」ピコ


 ⎯⎯当たった!


 スライムは地面の上でビヨヨヨーンと震えて、崩れるように溶けていきました。

 あとには何も残っていません。


「えいっ!」ピコ、ビヨヨヨーン。「えいっ!」ピコ、ビヨヨヨーン。「えいっ!」ピコ、ビヨヨヨーン。


 ナナちゃんはだんだん楽しくなってきて、スライムをたくさんやっつけました。


 でもしばらくしてお腹が鳴ったので、今日はもう帰ろうと引き返すことにしました。

 途中、出てきたスライムを倒したら、溶けたあとに何かが残っています。


 ⎯⎯これは、宝箱?


 開けてみると中には真ん丸の石が1つ。

 ナナちゃんが手にとると溶けて手の中に吸い込まれてしまいました。

 そしてナナちゃんの目の前には⎯⎯



「ス、テ、ー、タ、ス」入学前ですがナナちゃんはもうカタカナも読めるのです。

 でも⎯⎯



 《ステータス》

【鈴木ナナ】LEVEL5

(体力)20

(魔力)50

(魔法)回復魔法①



 ナナちゃんの可愛い顔が思いっきりしかめっ面になりました。「よめない」


 すると、



 《ステータス》

鈴木すずきナナ】つよくなった

体力たいりょく)まだまだ

魔力まりょく)まあまあ

魔法まほう回復魔法かいふくまほう



 ナナちゃんは一番下の文字を見て、嬉しくてはねまわりました。

 ⎯⎯これ知ってる。


 次の日からナナちゃんの本気のスライム狩りが始まりました。




 ◇◇◇◇◇




 ダンジョン前のスクリーン。通称神の掲示板、略して “カミイタ” に探索者のリアルタイムの映像が映し出されるようになった。


 大きな “カミイタ” が9分割され、各地のダンジョンがランダムに映る迫力ある映像は、探索者以外にも大人気だ。だがその中に、


「おいっ! あれっ」「えっ。うそ」「子供だ!」


 “カミイタ” に映る小さな女の子。


「親は何してるんだ!」「どこだ、あのダンジョン?」


 “カミイタ” を見た大人たちが騒然となった。そして人々の注目が集まったところに新たな神のお告げが表示された。


『最も早くダンジョンを攻略した者を勇者として称え、以後、宝箱の武器は勇者と同種の物とする』


 神様、絶対面白がってる。と全員が思った。そして気づく。画面毎に違う数字が出ていることに。


「12/50って、現在の階層と最深部の階層だよな?」「あのダンジョン100層もあるのか?」


 ナナちゃんの映像の数字は1/1。

 今、頑張ったナナちゃんの目の前には巨大な扉が⎯⎯。


「ボスだけ凄く強い可能性も」「待て! 早まるな!」「親はどうした! 親は!」




 ⎯⎯そして扉が開いた。






 ◇◇◇◇◇






 あれから一年、ナナちゃんは村にできた小学校の分校で元気に勉強しています。


 ママはナナちゃんの回復魔法ですっかり元気。お祖母ちゃんと一緒に田んぼと畑を頑張っています。




 そして、今日もダンジョンには戦いの音が鳴り響く。




「どりゃー!」ピコ。「せいっ!」ピコ。「ふんっ!」ピコ。



「我が二刀流を受けてみよっ!」ピコピコッ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] ほのぼのしていて、何度でも読み直したくなります。
[良い点] かわいい。そして面白い [一言] 連載して欲しい
[良い点] ええ娘や。 かつては自分にも、あったかもしれない元気さにすこし元気づけられた気がしました。
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