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それを聞いた奏介と梨音は、目が点になった。
「…………ギターボーカル?」
一方の彼方は、まるで他人事のように首を傾げている。
「それ本気で言ってんの? さっき言ってたでしょ、彼方は歌は上手いけどギターは初心者だって」
「だがそういう梨音だって、ベース始めた頃はコードの意味もわかってなかっただろう」
「確かにそりゃそうだけど……」
すると、言葉を濁した梨音に代わって、今度は奏介が質問する。
「そもそも部長、彼方が練習するときのギターはどうするんです? さすがに俺もずっとギター貸すわけにはいきませんよ?」
「それなら、アコギでよければ1つ余ってるから問題ない。今もまだ文化部共用の倉庫にしまってあるはずだ」
「え、そんなのあったんですか? あたし初耳! ソウは知ってた?」
話を振られた奏介が首を横に振る。その話は、奏介にとっても初耳だった。
「そりゃお前らが入ってきてから見せてないからな。初耳で当然だろう」
「……そもそもそれ、本当に今も弾けるんですか?」
すると、ジェロムは腕を組みしばしの沈黙の後で。
「知らん!」
この男、言い切った。
「何せ俺ですらそいつを最後に見たのは、かつての持ち主だったここの先輩が引退間際に『こいつと軽音部の未来はお前らに託した!』と言って物置に放り込んでったとこだからな!」
それはつまり、いらなくなったギターを体よく置いていっただけでは? と奏介は思ったが、口には出さなかった。
「まあいい、ちょうどいい機会だ。試しにここらでそいつを引っ張りだしてみるか? 弾くかどうかは、その後で決めてもいいだろう」
かくして4人は、倉庫に眠っているという大先輩のギターを発掘しにいく流れとなった。




