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ワールズエンドの歌姫  作者: 染島ユースケ
3.ライブハウスの歌姫
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 そして、次の土曜日。

 あっという間にやってきた合宿当日。

 平日朝より1時間遅く起きた奏介は、ピーナツバター味のコッペパンをかじってからの、歯磨き。洗顔。そして制服に着替え。

 それから、荷物を確認する。タオル。歯磨きセット。洗顔フォーム。替えのシャツと下着。エトセトラエトセトラ。もしかしたら、いつもの通学時より膨らんでいるかもしれない通学用のスポーツバッグ。

 最後に、忘れてはいけないギターケースを担ぐ。準備完了。

「行ってきます」

 いつも通りの挨拶に、家族の自然体な「いってらっしゃーい」という返事が返ってくる。もう家族には、明日まで家に帰らないと伝えてある。

 なんだか不思議だ、と思う。

 これで、明日までこの場所に帰ってこない。その感覚が、不思議だった。しかし同時に、どこかわくわくしている自分にも気づいた。

 玄関を出る。

 そのわくわくは、正体不明。薄い幕がかかったように、掴めない。奏介は想像の中で、その幕を取り払う。

 通学路を歩く。

 取り払った先、現れたのは彼方のイメージだった。一緒にセッションする彼方。夜、部室棟から星を眺める彼方。朝、無防備な表情で寝顔を見せる――

 立ち止まる。

「……何考えてんだ、俺は」

 見上げた先。いつの間にか葉桜になっていた若葉の緑。夏色に染まりつつある太陽の光。今ここに、彼方と出会った季節の終わり。

 しばしぼけっと道の真ん中に立っていた奏介は、何かを思い出したように来た道を引き返した。

 今日は、自転車で行こう。

 たまには、それもいいだろう。

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