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そして、次の土曜日。
あっという間にやってきた合宿当日。
平日朝より1時間遅く起きた奏介は、ピーナツバター味のコッペパンをかじってからの、歯磨き。洗顔。そして制服に着替え。
それから、荷物を確認する。タオル。歯磨きセット。洗顔フォーム。替えのシャツと下着。エトセトラエトセトラ。もしかしたら、いつもの通学時より膨らんでいるかもしれない通学用のスポーツバッグ。
最後に、忘れてはいけないギターケースを担ぐ。準備完了。
「行ってきます」
いつも通りの挨拶に、家族の自然体な「いってらっしゃーい」という返事が返ってくる。もう家族には、明日まで家に帰らないと伝えてある。
なんだか不思議だ、と思う。
これで、明日までこの場所に帰ってこない。その感覚が、不思議だった。しかし同時に、どこかわくわくしている自分にも気づいた。
玄関を出る。
そのわくわくは、正体不明。薄い幕がかかったように、掴めない。奏介は想像の中で、その幕を取り払う。
通学路を歩く。
取り払った先、現れたのは彼方のイメージだった。一緒にセッションする彼方。夜、部室棟から星を眺める彼方。朝、無防備な表情で寝顔を見せる――
立ち止まる。
「……何考えてんだ、俺は」
見上げた先。いつの間にか葉桜になっていた若葉の緑。夏色に染まりつつある太陽の光。今ここに、彼方と出会った季節の終わり。
しばしぼけっと道の真ん中に立っていた奏介は、何かを思い出したように来た道を引き返した。
今日は、自転車で行こう。
たまには、それもいいだろう。




