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それからあっという間に、オーディションライブの日はやってきた。
「……本当にこれでやるのか?」
「何恥ずかしがってるのよ今さら。あんた男でしょ」
「男だからこそ恥ずかしがってんだよ!」
「ヘイヘイ落ち着け奏介、あんまり大声出したらステージの外に聞こえるぜ?」
今、ジェロムズのメンバーは舞台袖で待機している。もう楽器のスタンバイは完了していた。後は司会者からのバンド紹介を合図に外に出るだけだ。
例の衣装、ジェロムがどこからか取り寄せてきたメイド服を身につけて。
ついでに言うと、奏介の場合は普段伸びっぱなしの前髪もピンクのヘアピンで実に可愛らしくアレンジされていた。
「落ち着けって言われても……そもそもなんで部長は1人で金のジャケットなんですか?」
「じゃあ逆に訊くが、俺のメイド服姿を見て喜ぶ奴がいると思うか?」
「いや、それは……」
奏介は露骨に顔をしかめた。どうやら想像してしまったらしい。
「でも、そんなこと言ったら俺だって同じじゃないですか」
「そんなことないんじゃない?」
そこで反論したのは、同じメイド服を身につけた梨音。
「ソウは意外と似合ってると思うけど、メイド服」
「それは褒められている気がしない!」
「褒めてるというか、事実よ事実。ねえ彼方?」
梨音は彼方に話を振った。梨音にぴったり寄り添うように立つ彼方も同じくメイド服。その佇まいはさらさらとした長い黒髪と小顔にぴたりとはまり、奥ゆかしくも華やかな雰囲気を醸し出している。一番違和感なく着こなしているのは、間違いなく彼方だ。
「そこんとこ、彼方はどう思う?」
「奏介、似合ってる」
「例えばソウのどこらへんが?」
「メイド服と、髪型」
「ぐっ……」
反論に困っている奏介を見て、梨音は吹き出しそうになる。
「HAHAHA、もう観念しろ奏介! そろそろ俺達の出番だ!」
ステージに、司会者の声が響き渡る。空気が切り替わりつつある中、奏介は梨音に向けて小さくつぶやいた。
「なあ、梨音は平気なのかよ?」
「何が?」
「かわいい服、好きだけど苦手だろ?」
「克服したから大丈夫」
MCが何か面白いことを言ったらしい。会場から笑いの声が漏れる。
「梨音」
「ん?」
「それ、お前は似合ってると思う」
「……ソウも似合ってるよ」
「だから嬉しくないっての」
『それでは次の出場者、ザ・ジェロムズです! どうぞ!』
そして、4人は光の中へ。
ステージの幕が開く。




