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それから2人は、柏の街を縦横無尽に遊び回って満喫した。
マルイのアパレルショップでは「梨音はもっと、かわいくなろう!」と言い出した彼方の手により、梨音が「ものすごくガーリィな服(本人談)」を着ることとなった。彼方と店員からは大好評だったが、梨音は断固拒否した。
カルチェの2階にある山野楽器では、梨音は入荷したばかりという新型モデルのジャズベースを試奏させてもらった。ついでに彼方には即席ベース講座を開いてベースについてのイロハを簡単に教えてあげた。彼方は興味津々で、飲み込みも早かった。もっと本腰を入れて教えてあげたら、ベーシストとしても活躍できそう。でもジェロムズのベーシストの座は明け渡したくないから、やっぱりギタリストの方向で育てるのがいいかもしれない。
その後でツタヤにも立ち寄った。前面に押し出されていたMiX特集には目もくれず、お互いのおすすめアーティストを教え合った。[Alexandros]、RADWIMPS、BUMP OF CHICKEN、amazarashi、スピッツ、ストレイテナー、04 limited sazabys、UNISON SQUARE GARDEN……互いにおすすめするバンドはMiXがブレイクする前のバンドばかりだったけど、だからこそ思いのほか趣味が合った。今時珍しく、CDも結構な数を集めているらしい。だから今度、部室でCDを貸し借りする約束をした。
「楽しかった!」
待ち合わせの時に感じていた不安は、嘘のように消え去っていた。
「うん、すごい楽しかった」
彼方も、それに同調する。今や梨音と彼方は自然な距離感で、柏の二番街を歩いている。
「またさ、こういうことしようよ。オーディションに向けた練習が落ち着いたらさ」
「うん、いいよ。梨音と遊ぶの、楽しいから」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないのー!」
そのやり取りに、梨音は心地よささえ感じていた。ずっと昔から、友達だったような気さえする。
一つ、彼方と身近に接して気づいたことがある。
彼方はきっと、奏介に似ている。
例えば、何かに打ち込んだら一直線なところとか。
人が踏み込んで欲しくないところにもしれっと踏み込んでしまうところとか。
でもそれに悪気はなくて、むしろそんな弱点を肯定してくれるところとか。
そんな彼方のペースに巻き込まれれば巻き込まれるほど、奏介に通じるものを感じる。だから、奏介自身が彼方に惹かれているのも無理はないのかもしれない。
「彼方、まだ時間ある?」
そして、梨音は一つの決断を下した。
「もしよかったら、うちに来ない?」




