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ワールズエンドの歌姫  作者: 染島ユースケ
6.ワールズエンドの歌姫
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 他の車が一切通らない高速道路を駆け抜けるのは、なかなか壮観だった。

 通行止め区間の出口にあたる検問も、難なく通過。そこから、車は道東自動車道に入る。特に規制はかかっていないはずだったが、それでも車通りは少なかった。これから東の果てを目指す人間は、自分達くらいなのかもしれない。

 高速を走る間、足利はCDプレーヤーから気晴らしに音楽を流してくれた。傾向としては90〜00年代のロックバンドが多かった。Mr.children。エレファントカシマシ。GRAPEVINE。ストレイテナー 。今となっては古き良き時代の、邦楽チャートを彩ったロックバンド達。

 いくつもの長いトンネルを抜けると、いつしか日差しは大きく傾き始めていた。いくら空いているとはいえ、この調子だと今日中に釧路へたどり着くのは流石に無理そうだ。

「そろそろ高速を降りて、今日の宿を探そうか」

 ジムニーは帯広の手前で高速を降りた。郊外のインターチェンジは他に降りる人もいなければ検問もなく、閑散としている。周辺に住宅地や商店街の気配もない。追っ手や足止めの心配はなさそうだが、それよりも雨風をしのげる宿を見つけられるかどうかが不安だった。

 足利は一旦車を脇に寄せて、地図を広げる。旧型のジムニーなので、カーナビはついていない。BGMは流れたままで、ストレイテナーのベストアルバムが流れている。曲名は『Farewell dear deadman』。

「携帯の地図とかは使わないんですか?」

「使わない。GPSで居場所が割れる可能性があるからな」

 奏介は訊いてからそりゃそうだよな、と思う。そもそも、自分達も同じような理由で携帯を持ってきていないわけで。

「とりあえず、ここの道を北東に向かうと市街地に出れそうだが……どうするか」

「でもこのあたりに泊まれそうなところなんて……」

「ある」

 彼方の声が割って入った。端的な、しかし自信を持って答えたような2文字。

「あるって、どこに?」

「すぐ近く」

 しかし、道の周囲を見渡しても、そんな場所はない。あるのは畜産系の施設。その向かいに拓けた農場。それから生い茂る木々。

「そこ」

 彼方は後部座席から身を乗り出して指差した。

 その方向を見て、奏介は思った。

 自分達は、固定観念に囚われ過ぎているのかもしれない。その凝り固まった先入観が、時に無意識で選択肢を狭めてしまう。

 彼方が指差した先で、時代から取り残されたようなネオンが輝いていた。その場違いなほどに輝く電飾が映し出す、『HOTEL』の文字。

 要するに、ラブホテルだった。

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