相殺
「おい、返事の代わりになんかすごいの飛んできたぞっ!?」
どうやら敵と判断されたらしく、刃物のような斬撃が飛んできた。
たぶん当たったら即死する。
「この世界で僕らは今まで通り術が使えるのかなあ。」
「転生、というと見た目とかも変わって新たな人生を・・・、という感じがしますが何にも変わってませんね。」
「だよねー。」
あの眼鏡の優男曰く、転生させるといっていたが二人を見る限り特に変わったところはない。
しいて言うなら、今まで変化の術で隠していた本来の髪の毛や瞳の色になっている。
夜叉は黒がかった赤い髪に金色の瞳、鞍馬は黒髪に碧い瞳といった感じだ。
――私の本来の瞳は紅なので髪もやはり変わっているのでしょう。
いなりの考えは当たっており、鞍馬や夜叉からみたいなりは美しい銀白色の髪に変化していた。
だが、変化というのはそれぐらいで大きく変わったところはない。
鞍馬はマニュアルブックをぱらぱらとめくりながら何か参考になるものはないか探す。
「のん気に考えてないでどうすんだよ!あれなんかよけてもこっち向かってくるし!」
「よし、夜叉頼んだ。」
「はあ!?」
鞍馬は夜叉の首元に手をかけ、思いっきり投げる。
たくましい体躯をした夜叉と反対に鞍馬は結構細いのだが、力は半端ない。
夜叉と互角で腕相撲をまともにできる数少ない妖怪だ。
「何すんじゃてめえ!」
「とりあえずあれは夜叉に任したー!」
わあわあわめきながら夜叉は空中を飛んで斬撃に突っ込んでいく。
まあ心配は何もないのだが。
「オルラア!」
怒声とともに一瞬あたりに閃光が走る。
「あっぶねええ。死ぬかと思ったあ。」
アホ丸出しな声が聞こえてくる。
愛刀である大太刀・大嶽丸を手に夜叉は無傷でその場に立っていた。