転生させられました。
もともと異世界舞台で何か書こうと思っていたんですが、妖怪を主人公にしたかったのでもうひとまとめにして妖怪を異世界に転生させました。
「初めましてこんにちは。大変申し訳ないんですがあなた方はこの世界では強すぎるのでちょっと別の世界にうつってもらうことになりました。」
「「「はい?」」」
九泉 いなりは妙な空間にいた。
先ほどまで一緒にいた大嶽 夜叉と松林 鞍馬も一緒である。
目の前には眼鏡をかけた知らない男がいるだけで何もない。
まさに無、というのだろうか。
「おい待て待て。脳内で処理が追い付いていない。俺達普通に登校中だったんですけど?」
「ああ、そうでした。では、三十分前、何があったのか簡単に説明させてもらいますね。」
―――三十分前
「夜叉遅いねー。」
鞍馬は腕時計をしきりに確認する。
「遅れてすまねえ!」
「遅いですね。もう遅刻五分前です。」
「別に走ればいいんだろ?走れば。」
確かにいなりたちが普通に走れば一分で着くだろう。
たとえここが学校から3キロ離れていたとしても。
いなり、夜叉、鞍馬はそれぞれ妖狐、鬼、烏天狗という妖怪だ。
三人とも平安時代からだろうか。
そのくらいからの顔見知りで人の世界で生きてきた。
今は戦争とか戦とか面白そうなことがなく、便利な世の中に移り変わってしまったので高校生という仮の姿で過ごしている。
「ノブとかいたときはもっといろいろやらかしてくれてたから楽しかったのにな。」
「信長はいろんな人に喧嘩売りまくってたからねー。それも清盛みたくさ。」
昔であった友人たちを懐かしく振り返りながら三人は走る。
あともう少しで校門だ。
「よーっし、俺が一番のりい!」
夜叉が校門に一歩踏み込んだ時。
急に視界が暗くなった。
「・・・といった感じでしたね。」
「でしたね、じゃねーよ!!」
「僕らがここにいる意味が全く分かんないんだけどー。てかそもそもあんた誰。」
夜叉は眼鏡の男の首もとをつかみかかる。
「ふむ、簡単に言いますと、あなた方のいた世界を仮に現実世界としましょう。実はもう一つの世界が並行して隣に存在するんです。まあ、この世界をあなた方の視点から見て異世界、としましょう。今、現実世界と異世界のバランスが崩れかかってしまっているんです。」
乱れた服装を直しながら眼鏡の男は話す。
「別にそれがどうした?俺らにはかんけーねーよ。」
「それが関係大ありなんですねえ。あなた方は三大妖怪と世に謳われるほどの力の持ち主です。ですが、現実世界にそんな大物がいられると困るんです。現実世界は科学と機械と人の世界。異世界は魔法と魔物と人の世界。そういうふうに創ったはずなんです。ですけど・・・まれに現実世界にはあなた方のようなとんでもない大物が出てきちゃうんですよねー。」
やれやれとため息をつくようなそぶりを見せる眼鏡の男。
いや、こっちのほうが迷惑してるだろ、と夜叉がぶつぶつとつぶやいているのが聞えるが無視しておこう。
「妖怪なんか日本にめっちゃいるじゃん。なんで僕らなのさー。」
「言ったでしょう。強すぎるんです。もう最強。別にその辺にいる雑魚妖怪なんてほっといてもいいんですが、あなた方となると放置しておけないので・・・。そのため隣の世界、異世界に移ってもらいます。あ、もう時間がやばいのでとっとと転生させますね?はいこれあちらの世界のお金100クルンです。あとこちらが回復薬になります。」
「は?ちょ、え?え?俺らに拒否権は――」
「ありません。」
急に渡されたものに戸惑う夜叉をスパッと切り捨て眼鏡の男はあわただしく動く。
鞍馬はもうあきらめたのか流されるままに事の成り行きを見ている。
「あ、そうだ、言い忘れてました。あちらの世界には魔物という人ではないものがいます。あなたがたに近いものですよ。彼らは人と敵対しているようなのでまあなんとか頑張ってください。それでは、さっさと転生してください。」
眼鏡の男が言い終わると同時に急に足場が消える。
「は?おい待て待て!」
「あー、だめだねこれ術が発動しないや。」
「本性を現すこともできませんね・・・。」
なすすべもなく落ちていく三人に眼鏡の男がにこやかに手を振ってくる。
「てかそもそもあんた誰だー!!」
「僕ですか?うーん・・・呼ばれ方はいろいろあるけどどっちの世界にも通用する言い方だと、<神様>かな。」
いい加減な神様によって、妖怪三人組はこうして異世界に転生させられたのだった。