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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

四章

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革命と革命

「待てよ……。呼んだのは良いけど、色々とまずいかも知れない」
 勢いで精神科病院にあの二人を呼んだ好木は少し事の難しさに頭を悩ませていた。
 そう、毒を持って毒を制す方法を思いついたは良いものの、付きまとうリスクや弊害についてを度外視できない。色々と入念な打ち合わせをしておく必要がある必要を感じたわけだ。

「とりあえず、ばあちゃんからか……」
 好木は忙しい神田菊代に電話を掛ける。
 すると、秘書の人が出てくれ、どうやら今は空いている様ですぐに菊代に繋がる。

『ばあちゃん。実は……』
 これからしようとすることを簡単に話す。
 その結果として、祖母の神田菊代はあることを好木に話し始めた。

『わかりました。好きにやってみなさい。でも、これから海田加奈さんにすることは絶対に悟られてはいけません。そうしなければ、渦中に巻き込まれるのは間違いありません。とりあえず、人払いの方は任せておきなさい』
 これから好木がしようとしていることは変革だ。
 その変革を世間はきっと喜ぶだろう。
 しかし、その変革の犠牲にしたく無いがために秘匿する必要がある。

 こうして、人払いをした海田加奈の病室。
 そんな病室にやってきた人物。

「お待たせしました。神田君」

「待たせたわ。好木」
 そう、若田部若菜と寒河江調だ。

(調先輩俺の考えを読んでますか?)
 好木は頭の中でそう考えていると、調はこくりと頷く。

(人払いはしてあるんですけど、監視カメラとかはさすがにそのままなんで話すのは無しの方向で)
 再び、こくりと頷く調。

(じゃあ、手筈はさっき事前にメールで知らせた通りでお願いします)

「……」
 息をのむ寒河江調。それと同様に若菜も軽く深呼吸している。
 それもそのはずで、これからしようとしていることは毒を持って毒を制す方法。
 一歩間違えればさらに酷いことになる可能性さえあり得るのだから。


「なあ、酷いだろ? もしかしたら、皆の言葉でもとにもどるかもしれない。だから、声を掛けてやってくれないか? 二人とも」
 その言葉は好木が決めた作戦を決行するための合図だ。

「そうね、加奈さん。あなたはもう心配する必要はないのよ?」
 しかし、口を開くのは調のみ。
 ここからは調の他の者が口を開いてはいけない。

「安心しなさい。ゆっくりと、息を吸って吐いて? 息が上がっちゃってるじゃないの」

「そう、落ち着いて。落ち着いて。私はあなたの味方よ?」

「大丈夫。ゆっくりと、そう落ち着いて……」

「ほら、息が落ち着いてきた。そう、慌てる必要はないの。だから、まずは落ち着きましょ?」

「さてと、あなたはどうしてそんなに怖いの?」

「そんなことはないわ。だって、もうあなたは組織から抜け出せているのよ?」

「わかるわ。その気持ち。苦しい思いをしたくないのは当然ね。でも……」

 調はひたすらに加奈に話しかけていく。
 猿轡を噛まされて声を出せない加奈。
 そんな加奈と対話できるのは考えを読むことが出来る寒河江調のみ。
 いや、彼女だけでは狂ってしまった海田加奈と対話するのは不可能だ。

 狂ってしまった加奈に声を響かせるために重要な力はもう一つある。
 そう、若田部若菜の力の一つ、嘘が分かる超能力を他者に共有させる必要がある。
 嘘が分かる超能力は相手の言っていることが嘘かどうか判別できるため、聞いた言葉を重く感じ取るという副作用を利用しているのだ。



「ふふ、そう。まずは寝なさい。寝て、起きてもう一度話しましょう。とりあえず、今はゆっくりと寝なさい……」
 そして、数分もの間話したのちに調は指でバツ印を作る。
 それは若田部若菜の相手に嘘が分かる超能力を共有する力を止めさせるための合図だ。

「とりあえず、外に出て話しましょうか」
 調はそう言って部屋にいた二人を連れて、病院の外に出る。


 外に出ると、ちょっと人気のない場所に向かい調は二人に話し始める。
「まず、上手くは行きそうよ。狂ってしまった恐怖の緩和は十分できているわ」
 調は二人に今していることの成果を簡潔に告げた。
 どうやら、好木が思いついた方法は功を奏しているのを聞くと二人の緊張の糸は一気に解れていく。

「ほ、本当ですか?」

「ええ、それでも時間が必要よ。それこそ、何日も何日もかけてゆっくりと恐怖を和らげていくしかないわ。ごめんなさい、水を貰えるかしら?」
 好木は調に目を見やると服がべったりと張り付くほどに汗をかいていたので急いで自販機まで走り、一本の水を買い調に渡す。

「先輩。大丈夫ですか?」

「正直に言うけれど、かなりしんどいわ。だって、若菜さんが言葉の重みを強めている時にもし変なことを口走ればそれこそ一瞬で水の泡どころか、さらに狂うかもしれないのよ? 一人の精神状態を左右するという状態で汗をかかない方がおかしいもの」
 わざわざ調しか喋らないのはそう言った理由からだ。
 もし、言葉を重く感じる状態で精神状態に響く何かを言ってしまったらさらに悪化するかもしれない。
 だから、口を交わさずとも考えを読むことが出来て意思疎通とどこに恐怖しているのかを知ることが出来る調のみが話すことにしたというわけである。

「さてと、これからはどうするべきか……。海田加奈を狂わせたことを京香に話すべきか、それとも話さないで失踪していただけにするか……」

「でも、京香ちゃんに今回の事をしっかりと話して力を使わせないようにした方が良いんじゃないですか? また、同じように狂わせないようにしないと……」
 若菜が京香が力を使うのに躊躇いを持たせるという意味合いで力を使わせないために今回の事の顛末を話したほうが良いのではと言った。

「私もそうするべきよ。もし、狂い続けていたのなら話は別だけれど、回復に向かう兆しが見えてきたのなら話すべきね」

「やっぱりそうするべきだろうな。でも、力を使うのを躊躇わせたくないんだよ。物騒な世の中になってきているしさ。いくら、俺と京香が神田家の人だからって過激的に攫おうとしてくる組織だってこれから出てくるかもしれない。けど、やっぱり、相手を狂わせる可能性がある力を野放しにしておくのはできないし」

「そこらへんはやっぱり攫われる状況を作り出さない方向で考えましょう。やっぱり、あの力を野放しにしてはいけないわ。後、若菜さんも同様に力の使い方は気を付けるべきね」

「はい、あれを見て自分の力でもあれと同じように狂わせられる可能性があると思うとぞっとしましたし、使うのには十分気を付けます」

「よし、帰ったら話すか……」
 海田加奈を狂わせてしまったという事を本人に伝えるのを心苦しいわけで、なんとも言えない顔で話すことを決める好木。

「大丈夫よ。説明には私も手伝ってあげるわ。どうせ、今私たちがしている治療についても話さないといけないもの」
 治療という言葉を耳にした好木は周りに聞いている人がいるかいないか確かめた後、小声で囁く。

「とりあえず、今俺達がしていることは絶対にばれないようにしてください。もし、あの治療法が明るみに出ればどうなるかわかりますよね?」

「ええ、分かってるわ。正直に言うと私も驚いたの。あそこまで、狂った人に言葉を届かせられることにね……。そんな力、欲しくない人なんていないわ。だから、隠すわ。平穏を手放したくないもの」

「そうですね……。私たちの力が明るみになれば大変なことに巻き込まれる予感がします」
 この世の中で、超能力者は見向きされ始めている。
 二人の紛れもない強力な力を欲しがらない人はいない。
 ゆえに今、海田加奈を治療したことで有用と認められてしまえばいくら企業が身の安全を保障してくれているとはいえ守り切れないほどの争奪戦が始まるのは見えている。
 というか、身を守ってくれるはずの企業が利用してくる線すらあり得るだろう。

「超能力者はこのままいけば、利用されて行く最悪な未来が待ってるかもしれない。だから、決めた。ばあちゃんが超能力者と普通の人の平等を目指してるけどさ。俺は取りあえず超能力者が利用されない世の中にしたい」
 超能力者だからって言う理由で様々なことに利用されていく。
 このままの世の中であれば海田加奈の他にも悲劇的な結末を迎えている超能力者は増え続ける一方だろう。
 だから、好木は自身の立場を考えて決意した。

「利用されるんじゃなくて、利用する立場を目指す。俺はこのまま超能力者が振り回されて行くのを放っておけない。だから……。もうやめだ。平穏に生きて行くのなんておしまいだ」

「超能力者がふつうの人より優位な社会を目指す。そうじゃなければ、俺達はなんの自由も得られない。調先輩の力も若田部さんの力を今でこそ神田系列の企業は利用しない事にしているけど、きっとこの先利用しないなんてこと絶対にありえない」

「だから、力を貸してくれ。超能力者のために……」
 神田好木は決意した。
 利用される世の中ではなく利用する世の中を目指すことを。








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