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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

四章

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違和感の先に

時は今に戻り、京香の話を聞いていた好木は口を開いてこう言った。

「調先輩。少し、席を外しましょうか」
 京香は泣きそうであった。
 しかし、俺達がいるので強引に涙を抑えている。
 泣いてしまいたい気持ちを押さえつけるのは辛い。だから、好木は調を連れ部屋を出る。

 そして、部屋を出た好木は調を連れ京香を慰めるため、少しでも落ち着いてもらうために甘い物でも買いに行こうと提案する。

 甘い物でも買いに行こうと言って外に出て少し立った頃、好木は死体の山の中に海田加奈がいたことを断定されていないことなど、様々な違和感からもしかしたら生きているのではとか考えていると、それを読んだ調が突っ込みを入れる。

「もしかしたら、生きているかも知れないと私も信じたいわ。まあ、無駄でしょうけど違和感について意見交換しましょうか」

「そうですね、ただもやもやしてるのは無駄ですしね。じゃあ、まず俺が生きているんじゃと思った違和感の理由の一つは日記の日付の後に海田加奈と俺は会っています。確か、先輩がカレーを作った日にご飯を炊き忘れてコンビニに行った日だった覚えが……。まあ、詳しい日にちは覚えてませんけど」

「いえ、別に日記の書かれた日付に処分されたとは限らないわ」

「ですよね……。じゃあ、次に携帯電話の番号が変わったのが少しおかしくないですか?」

「なるほど、好木はあの携帯電話の番号が変わった点がおかしいと思ったのね。要するに携帯番号が変わったのは組織から抜け出せたからと言いたいのかしら?」
 調に考えを読まれ、口に発せずとも好木の考えは通じていく。
 それでも、話さないと意見のすり合わせは難しいので好木は話しをする。

「はい、そうなんですけど……」
 しかし、携帯電話の番号が変わったと言っても理由は様々である。
 そんな好木の様々な考えの内の一つを読む調。

「ええ、そうね。新しい携帯を組織が加奈に渡した説もあるわ」

「となると、携帯電話の番号が変わったのは組織を抜け出せた証拠にはなりえないんですよ。あと、思ったことなんですけど新しい携帯電話の番号からすぐに今の保護者を知ることが出来る。それが出来ていないと言うことはやっぱり組織から渡された携帯なのかもしれません」
 もしかしたら、生きているかもしれないという淡い希望すら少し考えれば破綻してしまう。
 やはり、海田加奈は死んでいるのかもしれないのだが、好木と同様に海田加奈が死んだことを割り切れていない調は無駄だとわかっていても意見を出す。

「でも、携帯電話が新しくなった日に嬉々としていたと言うのがどうも引っかかるわ。もし、嬉々としていた理由が組織を抜け出して新しい保護者の下で生活を始めていたからって言う理由ならおかしくないんじゃないかしら? それに今までにないほどの長電話をその日はしたというのも引っかかるもの。これまた、憶測でしかないけれどもね」

「どれもが、繋がりそうで繋がらない。曖昧な線。というか、捜索できていない時点でやっぱり死んでるんだろうな……」
 もしかしたら、生きているかもしれないという淡い希望も打ち砕かれた。
 やはり、海田加奈は死んでしまったに違いない。
 そう好木が結論を出そうとした時だ。

「ねえ、好木。無駄だとは思うけれども海田加奈さんが通っていた学校に色々と聞いてみないかしら?」

「そうですね」
 というわけで好木と調は海田加奈が通っていた学校に行き、先生方から話を聞くが何も教えてくれない。
 そりゃ、赤の他人に個人情報を教えられるわけがないし当然だ。

「ねえ、好木。これはきな臭くなってきたわ」
 しかし、寒河江調は相手の考えを読む力を持っている。
 海田加奈の事を伝えて、相手に海田加奈の事を考えさせれば口を開かずとも情報を得られるのだ。

「何がですか?」

「海田加奈さんは病気で休んでいることになっているの」

「え?」

「そしてね、海田加奈さんが休むことを伝えてきた人は叔父さんではなく福祉施設の人らしいの。そして、その福祉施設は神田菊代が立ち上げた超能力者を支援する団体が母体になっているわ」
 ドンドンときな臭くなっていく、海田加奈。
 そして、背後に神田菊代の影が見え始めてきたという事は……。

「死んだことにせざる負えない状況になっている?」

「これは私の考えだけれど……。もし、死ぬよりも酷いことになっていたらあなたならどうする? それこそ、京香ちゃんが絶望してしまいそうな風にとか」

「そりゃ隠しますよ」

「つまり、そう言う事よ。ねえ、京香ちゃんがあざの正体を突き詰める時にとっておきの力を使ったと言ったわよね」
 京香の話に出てきたとっておきの力。
 それは言わずもがな相手に恐怖を与える力の事だろう。

「覚えてますけど。とっておきの力って恐怖を与える力の事ですよね? 恐怖を与えることで相手を自分の支配下に置くことで拷問みたいに口を割らせる感じですか?」

「ええ、そうよ。だから、言うわ。たぶん、京香ちゃんのせいで海田加奈さんはあなたと同じように歪んだのかもしれないわ」

「俺と同じですか?」

「この際だから言うわ。まあ憶測でしかないのだけれど、あなたが嫌だと言った時に京香ちゃんは無理やりあなたに恐怖を与えて従えていたんじゃないかしら? 今はそんなことはないみたいだけれど、小さいときに嫌だと言った時に何度も何度も恐怖を与えた結果としてあなたはNOと言いにくくなったし、もし相手からの行動を拒否すれば恐怖が注がれると体が覚えこんでいるら嫌がらせじみた行為も否定できなかったんじゃないかしら」

「なるほど、確かに普通に小さいときは京香には甘く無かった記憶があるけど、いつしか甘くなっていたのはそう言う事だったのか? 父も母もいなくなって俺に依存することで他人に共有する力を得て、それを使って俺をコントロールしすぎた結果……相手からの行動を拒否できにくくなった?」

「まあ、そこらへんは後で詳しく追及するとして。加奈さんもあなたと同じく歪んだんじゃないかしら? 勿論、あなたとは比べ物にならないほどにね」

「つまり、京香が歪めたことを知れば……きっと京香は今以上におかしくなる……」

「だから、神田菊代は敢えて死んだことにした。自分の力でおかしくなったことを悟られない様にと」

「でも、だったらおかしくないですか? 京香を傷つけたくなければ死んだこと自体いう必要がないじゃないですか」

「もう埒が明かないからとりあえず、おばあ様に電話しなさい!」
 ドンドンと深まっていく謎に頭を悩ませて、埒が明かなくなってきたので答えを求めるべく調が意味が分からなくなったのか、好木にさっさと事実を確かめさせる。

「わかりました。ばあちゃんに問い詰めます……。なんで、死体の山なんて嘘をついたのかも含めて」
 しかし、神田菊代は世間における超能力者のあり方の急激な変化に対応すべく、どこにいるか分からないためメールで話がしたいと連絡を入れておくと、その日の夜に暇な時間があるから電話を掛けろとメールが届いた。
 そして、その時間になると好木は祖母である菊代に電話を掛ける。

『ばあちゃん。海田加奈さんの事なんだけど……』

『なんのことですか?』

『取り敢えず、会わせて欲しい。どうして、ばあちゃんがあんな嘘をついたのか知りたい』

『そうですか……。知っても良いことはありませんよ? 何もできないですよ?』

『分かってる。でも、知りたいんだよ。頼む……』

『わかりました。では、追ってメールをします』

 そして、翌日に神田好木はメールに送られてきた住所に向かう。
 一人でやってきたその場所は……。

「……」

 精神科病院だ。

 神田好木は受付に向かうと一人の看護師が案内してくれる。
 部屋の患者名の札には『海田加奈』と書かれている。
 好木がその部屋に入るとそこには紛れもなく狂人と化した『海田加奈』がいた。

「なるほどな。そりゃ、ばあちゃんもこれは嘘でも良いから京香に罪を感じさせるか……」
 手足を枷でつながれて自傷行為を防がれているのにも関わらず、暴れている加奈。
 そうなったのは紛れもなく……


 神田京香のせいなのだから。



 そう、海田加奈の腕のあざについて知ろうとした京香はとっておきの相手に恐怖を与える力を使った。
 その恐怖を与える力によって加奈は狂ってしまったのだ。
 要すると常に組織に対して並みならぬ恐怖を感じていたのにそこに過剰な恐怖を与えたらどうなる?

 そりゃ、狂うに決まっている。

 海田加奈は神田京香によって狂わされてしまった。
 死体の山は京香にマイルドに罪の意識を感じさせるための嘘である。
 たぶん、好木の目の前に広がっている光景を京香に見せれば今以上に酷い罪の意識からさらに問題は拗れていく。
 だがしかし、孫娘とはいえ取り返しのつかないことをしたというのに、平然と生きて行かせることはいくら身内とは言えど神田菊代には無理であったのだ。


 ゆえに死体の山という嘘をついて、京香に罪を背をわせた。



 神田菊代から送られてきたメールには目の前にある光景が出来上がった経緯が簡単だが書かれていた。
 あることがきっかけで裏の組織から抜け出せたときは平気であったらしい。
 しかし、組織を抜け出した後に襲われる不安によって恐怖は日に日に大きくなってしまったのだ。
 助け出されたのはまやかしでまた捕まるかもしれない。
 そうしたら、また酷いことをされるかもしれないと。
 そのくらいなら平気だったかもしれない。でも、京香が与えた恐怖と今まで感じていた恐怖の両方を加奈はフラッシュバックしてしまった。
 その相乗効果は異常なまでで……。

「その結果がこれか……」
 狂人と化した加奈が出来上がったというわけだ。

「どうしようもないじゃないかよ……」 
 もしかしたら、何とかできるかもしれないとつけ上がっていた好木は自身の無力を悔いる。
 結局は何もできない。京香のために何もできない兄であると悔しさを胸に病室を後にしようとした時だ。

「あの、これって治るんですか?」
 好木はふと案内してくれた看護師に聞いていた。

「詳しいことは知りませんが、主治医の先生曰く、今までの精神病とは明らかに一線を画しているとのことで、回復は難しいかと……。それこそ、画期的な新しい薬や治療法がない限りらしいです」
 好木を案内してくれた看護師が答える。

「新しい治療法……」
 そこに引っかかりを覚え、少し頭を悩ませる。
 しかし、精神医学のことなど好木には分らないので、諦めて再び出口に足を進めようとした時だ。

「もしかしたら……」
 好木はあることを思いつく。
 それは毒を持って毒を制す方法だ。 
 たぶん、絶対に元通りにはならない。それでも、今よりかは幾分かましになる可能性はある。
 そう思った好木はある人物に電話する。

「今すぐ来てくれないか? ……さん」




 











 
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