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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

三章

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可能性と後悔

 調先輩からこれからは絶対に迫られたら私たちのほうが拒否すると言われて俺が先に帰って行った波豆さんが待っている部屋に帰ってくるのだが。
 ドアを開ける前にドアの内側から波豆さんが身悶える声が聞こえてきた。
 どうやら、調先輩が俺のパンツを嗅ぎ、こすりつけながらすることをしているっぽい。
 なので、俺は少し時間を空けてからだなと思ったのだが、気が付けば聞き耳を立てていた。

「ん、ヨシ君。そこはダメだよ……。いや、そんな激しいの」
 何か聞いてはいけない物を聞いた気がする。
 いやいや、まさかなと思って玄関のドアから一度話した耳を近づける。

「あん♡」
 なんかすごい嬌声が聞こえてきた。
 そしてエロい光景が目の前に広がっているのなら見ても良いんじゃないか。
 別にみる位なら良いんじゃないかとか思ってしまった俺はドアノブに手を掛けとうとう波豆さんの住むアパートの玄関を開く。
 だって、俺だって男だもの。
 なに、一線を越えなければ良いわけで、ラッキースケベを装って入ればきっと俺の目には色々と良い光景が待ち受けている。

「ただいま」

「え、ヨシ君? ちょ、ちょっと待って」
 下着姿の波豆さんが居た。
 正直に言おう。エロい。

 そんな彼女は俺から逃げるように着替え始めたかと思いきや、急に着替えるのを辞めて俺の方に迫ってきた。

「ねえ、ヨシ君。しよっか」
 その時、俺の理性は崩壊した。
 先ほど、一線を越えようとしないと言った俺の理性はどこかへ消えて行ったらしい。

「はい、アウトよ」
 その時だ。波豆さんを押し倒そうとしたはずの手を調先輩に掴まれていた。

「え?」

「だから、アウトよ。何を普通に一線を越えようとしているのかしら?」

「あはは、ヨシ君。ダメだよ。調ちゃんのいう事はちゃんと聞かないとさ」
 俺から離れささっと着替えた波豆さんが腕を掴まれてきょとんとしている俺を笑ってきた。

「ええ、そうよ。何が一線を越えようとしないよ。思いっきり越えようとしたじゃない」

「あの、これは何で?」

「いやー、ごめんね。ヨシ君。私はさ、生徒会って言う居場所をくれた子たちを出し抜いてまでヨシ君に好きになって欲しくないんだよ。だからね、ヨシ君の私に対して傾きかけている好意をちょっと戻そうと思うんだ」

「いやいや、さっきの声は?」

「ん? 声は演技にきまってるじゃん。そしてね、ヨシ君。これから、フルコースだから」

「あの、何のフルコースなんだ?」

「ヨシ君が嫌がること。というわけで、調ちゃん。お願い」

「ええ、任されたわ」
 そう言うと調先輩はあっという間に俺の手足を手錠で拘束してきた。
 その結果、波豆さんの部屋に無様に横たわる俺がいる。

「あの、フルコースって?」

「ヨシ君が今までにされてきた嫌なことだよ? じゃあ、始めよっか。調ちゃん。万が一私がその気になった時は止めに来てよ?」

「ええ、あなたが好木の貞操を奪いそうになったら止めに来るわ」

「だから、フルコースって?」

「じゃあ、まずはあれ入りのこれを食べよっか。ちょうどお昼時だし」
 手に何かを持っているのは見える。
 そして、匂いは強烈だ。

「あの、波豆さん? こうした行為は俺がそのうち慣れて受け入れるからダメだって自分で言ってなかったか?」
 最後の最後に無い知恵を絞って何とか今から受ける行為を止めようとしたのだが、

「うん、でもね。気が付いてないと思うけど。ヨシ君が嫌がることは今後あまりないと思ってさ。だって、ヨシ君が一線を越えようとしなければヨシ君が今まで受けた嫌がらせじみたことは受けることはないんだよ? それだったら頻度が減るんだし、私が一回位、嫌がらせじみたことをしても良いんじゃないかなって思ったんだ。それなら、嫌がらせを受けても平気になって嫌がらせじみた行為を受け入れないよね?」

 それから俺は余りにも酷いことをされて気を失うのであった……。















 神田好木が波豆エミルによって盛大に嫌がらせじみた行為を受けた後、波豆エミルと寒河江調は少し家から離れた公園で話をしている。
 勿論、途中で気絶した好木は若田部若菜に任せているので安心してほしい。

「波豆さんはあれで良いのかしら」
 公園のベンチに腰かけている調は横に座っているエミルに話を切り出した。

「いや、まあ。後悔はしてるよ。普通に」
 歯がゆい顔をしているエミルはため息をつかんばかりに悪態をついた。

「別に良かったのよ? 好木はもうあなたに落ちかけていたじゃない。それこそ、私が腕をつかまなければゴールインは間違いなかったかもしれないというのに」
 押し掛けた好木を止めた調が申し訳なさそうに言う。

「あはは……。そりゃ、ヨシ君と恋人にはなりたいよ。でもね、私に居場所をくれた調ちゃんと若菜ちゃんを出し抜いてなんて嫌だからね」

「出し抜いて?」
 出し抜いての意味が素直に分からなかった調はエミルに問う。

「そ、だってさ。ヨシ君が喜ぶというか、嫌がらせじみたことをしなければ普通にどんどん落ちていくのに気が付いてない。それじゃあ、居場所を作ってくれた二人に失礼だから」
 波豆エミルにとって、神田好木は特別な存在。
 だが、彼女にとって調も若菜もそれと同じく特別なのだ。

「別にそんな事を気にしなくても良かったのよ? まあ、してくれるのならそれはそれで嬉しい限りだけれどもね」
 さも普通そうな顔で調は言う。
 だがしかし、普通そうで普通ではない。何かがこもっている発言なのは誰の目から見ても取れる。

「ううん、ダメ。たぶん、私とヨシ君がくっついたらきっと今ある日常は崩れちゃう。そんなの嫌かな? って、何ヨシ君みたいな事言ってるんだろうね。私」
 その顔は女の子に迫られてたじろぐ神田好木とそっくりだ。
 そんな顔をしたエミルに調は少し声を震わせていう。

「そうね……。正直に言うと重婚を認めさせられればいいのだけども……」
 弱音を吐いた調。
 彼女は今後超能力者が優遇されていく社会が形成されて行く、その際に超能力者、もしくはそうでなくても重婚が出来るように法律を変えられるのを見出していた。
 しかし、そんなのは難しいことくらい彼女には理解できている。
 不確定要素に突っ込んでいけば、きっと思いもしない最悪な結末が待ち受けているのを彼女も理解できているのだ。

「そりゃそうだろうね。ヨシ君だったらなんだかんだでそうなったら受け入れてくれるだろうし。そうなれば良いなって気持ちは普通にあるよ」
 エミルは日本で重婚の成立が難しいからこそ、今回はわざと嫌われた。
 彼女は好木と恋人になりたくとも、彼が日常が壊れていくのを恐れているし、自分も日常が壊れていくのが怖い。先ほどした嫌がらせじみた行為を逸脱した嫌われるための拷問みたいな行為をしたのは結局は今ある日常を維持するための先延ばしでしかない。

「ええ、だからこそ。やらなくちゃいけないわ。世界は今大きく変わろうとしている。それを上手くコントロールしなくてはならないの。でも、知ってる? 私たちは子供で無力でまだ選挙権すら持ってないのを」

「うん、知ってる。でもさ、1パーセントでも可能性があれば重婚を認めさせる法律を作るのに掛けたって良いに決まってる。だからさ、私たちはヨシ君が誰かを選んだとしても選ばせない状況を無理やり作ったんだからさ」
 好木が手を出しそうになった時に嫌がらせじみた行為をしてそれを収める。
 それは重婚を認めさせる前に誰か一人に傾いてそこで試合終了にならない様にみんなで決めたたことなのだ。彼女たちは互いに神田好木を果てしなく好きなことを知っている。
 だからこそ、そこまでして楽しい日常と輝かしい将来を手に入れたい。

 ゆえに彼女たちははこう決めた。

「世の中を変えてみせるわ。だって、私たちは十分な力を持っているのだから」
 調はエミルの言葉を受け弱音を吹き飛ばしてはっきりと宣言する。

「そうだよ。私たちは持っている力を過信して取りあえず突き進んでみよう。それで無理だったら最後は誰が恋人になるかそれを決めればいい」
 エミルは好木に嫌われたのは社会が変わって行くことを見てみたいから。
 世界が変わって、自分たちに都合のいいハッピーエンドを見てみたいからだ。
 だからこそ、敢えてゴールインできたかもしれないのにそれを棒に振った。
 後悔はするかもしれない。
 でも……

「そうね。幸い、私たちは選挙権すら持ってない子供。そう言った夢を見てもまだ間に合う、いえ、夢見るべき若者だもの」
 最初の内はエミルも重婚を認めさせるなんて無理だと思っていた。
 だが、今の調の発言は胸を張りしっかりと先を見据えた気迫がある。
 その気迫を信じて彼女は今回得たチャンスを棒に振ったのだ。

「あー、でも。本当に悲しくなってきた……。やっぱり、ゴールインしたほうが良かったかも……」
 だがしかし、やはり波豆エミルは恋人になれるチャンスを捨ててしまったのを後悔して気を落としているのであった。

 その時だ。

「だから、高校在学中に重婚を認めさせるような可能性を見出せなければ私は好木から身を引くわ。若菜さんも無理やりにでも引かせる。だって、あなたがゴールしそうになってたのは明らかだもの」
 話していくうちに強気を取り戻したのか調はそう言った。
 今回のエミルがくれたチャンスを無駄にしない。それをまるで体現しているかのような発言だ。

「良いの? そんな強気に言ってさ」

「ええ、良いわ。だって、変えてみせるもの。そして、やっぱり今回は本当にごめんなさい」
 調は公園のベンチから立ち上がり深々とエミルに頭を下げる。
 自分たちを思って好木に嫌われるようなことをしたのを悔いていないわけがないのだ。
 彼女はエミルに感謝と謝罪の意味を込めて頭を下げる。

「うん、頭を下げなくて良いから。可能性に掛けるってことは私が結局は決めたことだからさ。あー、でもやっぱり後悔が……」
 とやはり後悔を捨てきれないエミル。

「本当にごめんなさい。あなたには本当に悪いと思っているわ。出来ることならなんでもするから許して頂戴」
 何気ない調の発言。
 しかし、その発言を逆手に取ってエミルはあることを口走る。

「京香ちゃんの事さ。そろそろ、ヨシ君に話さない?」

「そこでそれを言うの?」

「そうだよ。だってさ、あのままだと京香ちゃんは本当に……。いや、今でも十分におかしくなっちゃってるんだからさ……」


















 
これにて三章完結です。
正直に言います。次の章はかなり人を選ぶかもしれません。
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