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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

三章

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抗う意思。しかし、甘い6

 波豆エミルは朝早くに神田家と名を称しているが、二名ほど神田という名前でない者が住む家を訪れていた。
 彼女が神田家を訪れた理由は簡単。
 神田好木が体調不良に陥った事に対して三人に説教をしに来たというわけだ。

 そして、朝早くに神田家のリビングには波豆エミルと寒河江調、若田部若菜、神田京香の四名が殺伐とした雰囲気の中、互いに顔を合わせている。

「さてと、流石に言わせて貰うけど。あれはやり過ぎだからね。ケーキに入れた睡眠薬とたぶんだけど私的にはその睡眠薬の苦味を隠すための過剰なまでの味付け。そのせいでヨシ君は今苦しんでるのは理解できてる?」

「……理解できてる」
 神田京香はケーキを食べさせた本人であり、まさかあそこまで体調を崩すとは思いもしていなかったため、割と責任を感じている様子で落ち込みを見せていた。

「うん、京香ちゃん。いくら、構って欲しいからって言って。ヨシ君位の年齢の人をすぐに眠らせられるくらいの睡眠薬を使わない方が良い。だって、分量を間違えれば普通に死んじゃうしね」
 神田好木は割と理解できていなかったが、そこまで即効性の高い睡眠薬はかなり危険で分量を間違えればお陀仏な代物なのだ。

「……」
 落ち込む京香に対して、波豆エミルは言葉を続ける。

「だからさ、ヨシ君の身をきちんと考えること。そんな単純なことも出来ないなら、正直に言うけどヨシ君を殺しちゃうからさ」

「私は殺すつもりなんて……」

「でも、現に今ヨシ君は苦しんでるよ? もしかしたら、今回ので死んでたかもしれないのは理解できてる? 殺すつもりはなくともこのままだと本当に殺しちゃうよ?」

「うん……わかった。気を付ける」
 殺すという言葉が相当に重くのしかかったのか、京香は意気消沈している。
 そんな京香に対して波豆エミルは京香に対して慰めの言葉など掛けない。
 神田好木なら普通に反省したのなら、直ぐに優しく許していつも通りに接するに違いない。

「気を付けるって言っても、もしかしたら遅いかもね。だって、ヨシ君はこのまま死んじゃうかも知れないからさ」
 さらに追い打ちを掛けるエミル。
 具合が悪いのを十分に知っている京香に対して、このまま具合が悪くなって死んでしまうかもしれないという事を示唆させより一層の反省を促す。

「ごめんなさい……」
 京香の目からぽたぽたと涙が流れる。
 その様子を見てもエミルは止まらない。
 そう、薬なんてものは分量を間違えれば本当に危険で、睡眠薬を盛るのは本当に命の危険があることをしっかりと分からせなければ本当に睡眠薬を用いて神田好木を殺してしまうかも知れないからだ。

「あー、うん。そう思っても遅いかもね」
 その言葉が効いたのか、京香は逃げ出すように神田家のリビングから飛び出していった。

 そして、残された波豆エミルと寒河江調、若田部若菜。
 エミルの前にいる二人は今回は悪くない様に見えるが、彼女は京香がいなくなった後、調と若菜を冷徹な目で睨みつけている。

「さてと、次は二人だよ? 何か言う事はないのかな?」
 数刻がたち、静まり返った場で波豆エミルは二人を叱責した。

「……反省してるわ」

「私も反省してます」

「あのさ、事件は起こってからじゃ遅いんだよ? さすがに言うけど、今回ばかりはヨシ君が許しても私は許せないから。取りあえず、京香ちゃんにどういう風にアドバイスしたか聞かせてくれる?」
 そう、睡眠薬をケーキに仕込むなんて普段の京香の素行をよく見ていたエミルは明らかに裏で調と若菜が京香に何かを吹き込んだことはお見通しであった。

 今回の行動はいくら神田好木が構ってくれていないからと言って、京香が起こす行動にしてはどこか狂気的だったのだから。

「私は京香ちゃんにまずは何をしてでも拘束して身動きを封じるようにとアドバイスして、私が持っていた手錠と睡眠薬をあげてしまったわ」
 京香が好木に用いた睡眠薬と手錠の出どころは寒河江調から。

「私は京香ちゃんに睡眠薬がばれないように料理はできるだけ失敗を装って失敗するようにとアドバイスをしてしまいました……」
 京香が睡眠薬をバレない様に好木に盛った方法は若田部若菜から。

 二人が京香に対してアドバイスをしたのはエミルの考え通りだったというわけだ。

「はあ……。取りあえず、言うけどさ。二人はなんでそんなことを京香ちゃんに吹き込んだの?」
 理由を聞いたのち、どうして京香にそんなアドバイスをしたのか問い詰め始める。

「京香ちゃんが好木に構って欲しいから、方法を教えてって聞かれたからよ」

「私もです」

「うん、でもさ。なんで、そんな方法を教えたの?」

「それは……。なんだかんだで好木なら睡眠薬をバレない様に盛って拘束されたとしてもどうしてそんなことをしたのか考えてくれて許してくれるからよ……」

「そうです。多少、酷いことをしても神田君は許してくれるので……」
 つまり、神田好木に構って貰うには少しやり過ぎても許してもらえるから大丈夫と調と若菜は思い込んでいるから、多少手荒な真似をしても大丈夫だからとアドバイスをしたというわけだ。

「正直に言うよ。それって、ダメだから。許してくれるから酷いことをしても大丈夫? 酷いことって分かってるのにさ構って欲しいからってそう言う事をして本当に許されると思ってるの?」
 そう言った瞬間、数秒の間もなくエミルに二人は答えた。

「好木なら許してくれるわ」

「神田君は優しいので」

 調と若菜がこうなったのは簡単だ。

 神田好木がすぐに許してしまうからだ。しかも、平然とした顔で。
 だから、迷惑を掛けても大丈夫、酷いことをしても平気、そう言った考えが根付いてしまっているのだ。

「はあ……。許してくれるからって何をしても良いとは限らないんだよ? だってさ、現に今回は明らかにヨシ君は体を壊してるんだからさ。明らかに二人はやり過ぎてるって事に気が付いてないの?」

「それはそうね……」
 答えた調と同様に若菜も自身のしていることに対して、後ろめたさを感じているのか俯いてしまっている。

「だったら、過激的に嫌がらせじみた方法で構って貰おうとするのを辞めたら? そこまで分かっててどうしてできないの?」
 エミルは嫌がらせじみたことをなんとも思っていない、本当に自己中心的で利己的な人であるのを恐れていた。
 もし、そう言った人物なら説得のしようがない。
 しかし、二人はやり過ぎたことに反省をしている様子を見せている。
 それすなわち、説得が通じる可能性を示唆しているわけで、神田好木に対する接し方を改めさせるのは今だと思った彼女は勢いをつけ彼女たちを捲し立てる。

「できないです。だって、神田君に構って貰うのはそう言う方法しかわかりません。だって、普通に出かけたりしたい時に誘ったとしても普通に誘ったら絶対に断られます」
 若菜は答えた。
 どうして、ひねくれたやり方でしか神田好木の気を引けないのかを。
 エミルは思った。そりゃ、デートの時にあれを飲ませてくるのだ。
 断って当然だと。

「そんなことはないと思うよ、と言いたいけど普通に誘っても応じて貰えないのはあんだけ嫌がらせじみたことを受けたからに決まってるよ? それが無くなればきっとヨシ君は節度は守るだろうけどそれなりに応じてくれると思う、ううん、絶対に応じてくれる」

「今更よ。今更、そんな風にしたところで遅いわよ……。私たちの思われ方は簡単に変わりはしないもの。だったら、許してくれるなら嫌がらせじみた行為で気を引くしかないじゃない」

「今更?」
 エミルは今更という言葉に反応した。
 なぜ、そんな言葉に反応したかは簡単なことだ。

「あのさ、まだヨシ君と出会って三か月と半月くらいしかたってないよね?」
 はっきりとエミルは言い切った。
 そう、意外にも長く見えた彼と彼女たちの関係だが、三か月と半月くらいしか時間は立っていないのだ。
 確かに一度付いてしまった印象は中々に変えることはできない。
 しかし、たかが三か月と半月くらいしかたっていないのにそれを諦めるのは明らかに早いし、根本から否定し試そうともしないのは傲慢である。

「波豆さんは別に良いと思います。神田君によく思われているからそう言った軽口が叩けるんです。だって、私たちはもう神田君に面倒くさくてうざいと完璧に思われてしまってるんですよ? いくら出会ってから三か月と言えど一度持たれた印象は無くなりません」
 若田部若菜は一度持たれた印象はずっと無くならないと言った。
 確かにそのケースが多い。
 だからと言って、嫌がらせじみたことを神田好木にされるのを黙っていられないエミルは二人に言う。

「じゃあ、賭けようか。もし、二人がこれから4日間自重してヨシ君をお出かけに誘う。それでヨシ君が快くOKしたら私の勝ちで。そうでなければ、二人の接し方にもう口を出さない。それでどう?」
 最近一緒に暮らしていて普通に接すれば普通に応じてくれることを理解できる波豆エミルだから言えることだ。
 そう、嫌がらせじみたことをされるから、神田好木は二人からの誘いを断ったりするようになった。
 素直になれば素っ気ない態度など取らないことをしっかりと理解しているから勝負に出たというわけだ。

「良いの? もし、4日間自重した後に好木を遊びに誘いに行って断られたら、今まで通り少し嫌がらせじみた行為を持って構って貰ったりするわよ?」

「はい、私たちはそうすることでしか神田君と接することは難しいですから」

「うん、良いよ。はっきり言うけど、ヨシ君の人の良さを舐めてるのはそっちだからね」

 こうして、神田好木に嫌がらせじみた行為を阻止すべく、ひとつの賭けが行われることとなったのだ。

 いや、駆けの答えは簡単だ。
 なぜなら、エミルは約一週間の間一緒に生活していて、彼は普通に振る舞えば、ただでさえ優しいのにさらに優しくて、それでいて適度に構ってくれることを知っている。
 そう、簡単に言い換えれば普通に接すれば、神田好木という人物はころっと落ちてしまうのを分かっているのだ。



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