挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

三章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

81/110

抗う意思。しかし、甘い2

 家で洗濯機を回し洗い終えた俺はと言うと、波豆さんの住むアパートに戻ってきている。
 本当にここは居心地が良い。

「家としての機能は断然に我が家のほうが上だけど。どうして、こんなにもくつろげるのだろう」
 部屋の大きさはでかくもない。
 それこそ、大の字で寝てしまえば足の踏み場なんてほとんどなくなるほどの広さだ。
 加えて、お風呂も小さいし、キッチンの使い勝手も我が家のキッチンに比べれれば雲泥の差。

 それなのに居心地がいい。
 居心地のいい部屋で俺は波豆さんが帰ってくる前に色々とし始める。

 まずはお風呂を掃除する。
 水を流しているからと言って風呂場の掃除を怠ってはいけない。
 放っておけば、置くほど後々の掃除で苦労するのだ。
 それなら、毎日しっかりと綺麗にした方が全然ましである。そのことを分かっている波豆さんは毎日のように掃除をしている。

 ここにお世話になって早4日目。
 さすがに至れり尽くせりのお客さん気分で居るのも少し申し訳なってきたので俺は波豆さんが帰ってくる前にお風呂を掃除する。

 そんな、掃除が終わるとまだまだ時間はあるわけで部屋に敷かれている絨毯を綺麗に掃除したりと、波豆さんの部屋を綺麗にしながら帰りを待つのであった。

 あらかた、掃除が終わった時だ。

「ただいま。いやー、料理に使う食材を確認しながら買ってたら結構時間が掛かっちゃったよ」
 この部屋の主が帰還した。

「波豆さん。お帰り」

「うん、ただいま。さてと、私の未熟な腕じゃさぞ時間が掛かるだろうし、早速料理を始めちゃうよ」
 台所に波豆さんは立ち、料理を始めたので、掃除をしてこの部屋の主に恩を返そうとしていたという事もありこう訊ねる。

「俺も手伝おうか?」

「あ、良いよ。別に。というか、手伝っちゃダメ。出来てからのお楽しみだよ」
 なんともご機嫌な波豆さんに手伝わなくて良いと言われてしまう。
 仕方がないので指を咥えて待つとしようか。

 鼻歌交じりに聞こえて来る、包丁で食材を切る小気味いい音といい匂いが俺の期待をよりいっそう深めていく。

 一体、何ができるか本当に楽しみだ。
 楽しみに夕食が出来るのを待っていた時だ、波豆さんの部屋に来客者を知らせるチャイムが鳴り響く。

「ごめん、ヨシ君。頼める?」
 と慣れない料理で失敗をしたくないのと、どの程度目を離していても大丈夫なのか分からない波豆さんに対応を任される。

「ああ、分かった」
 と玄関を開けるとそこには。

「あ、神田君。良ければ二人でこれを食べてください。作りすぎちゃって。もちろん、あれは怒られたので入ってませんから安心してください」
 昨日の件について割と申し訳なさそうな顔をしながら、ポテトサラダが入ったタッパーを俺に渡してきた。
 昨日のあれが入っていた兼のせいでいくら入っていないとしても、素直に受け取るに受け取れない。

「ごめん、遠慮させてくれ。いくら、作りすぎたからと言って受け取るわけにはいかない」
 素直に拒絶した。
 あれほどまでの事をされ受け取るのは無理だ。
 いや、本当はあれが入っていないて言われてものすごく反省してそうな顔をしてるし受け取りそうになったけどさ……
 でも、そんなことをするからつけ上がられる。
 だから、断ったのだが。

「そうですか……。神田君に怒られた昨日の出来事はやっぱり失敗だったんです。ごめんなさい、勝手に勘違いしてました。あれが入った食事であれだけの怒りで済んだのはそれなりに思われてるからで、だから今日、真面目に作った料理を渡しに行けばいつもみたいに昨日の兼を抜きにして受け取ってもらえるかも。そう思った私が間違いです……」
 少し、目を潤わせ若田部さんは反省の色を濃く出す。
 そんな彼女に俺はこう言ってしまう。

「ああ、若田部さんが間違ってる」
 その時だ。
 さっきの調先輩以上に好感度が下がる。

「そうですね。こんな、食事を作る重い女。間違いだらけでした」
その時だ光り輝く宝石のような雨粒が地面を濡らした。

「でも、俺は間違いだらけでも若田部さんは嫌じゃないからな」
 気が付けばそう言っていた。
 つくづく、甘いと思う。
 そして、その言葉を言った俺は強引に若田部さんが握っていたタッパーを奪う。

「だから、今日だけは特別に貰っておく。でも、今受け取ったこれ以外は当分は絶対に食べないからな?」

「神田君はどこまで言っても優しいんですね。これで私は失礼します」
 若田部さんはそう言うと、そそくさと去って行った。
 俺は受け取ってしまったけど、言うことは言ったし大丈夫だよな? とか思いながら後ろを振り向くと、

「はあ……。ダメだよ、ヨシ君。もっと、きちんと言わなくちゃさ」
 波豆さんやれやれ困った的な顔で俺に言う。

「いや、でもきちんという事は言ったけど……」

「別にさ、許すことに対しては文句はないよ。でも、少し言葉が足りてないかなって。だってさ、あの程度じゃ、また食事にあれを仕込まれるよ? 本当に色々とされたくないのならもう少しくどくどとしてでも良いからしっかりと言うべきだと思う」
 ぐうの音も出ない正論だ。
 毎回、なんだかんだで許してしまうから何度もつけ上がられる。
 許すこと自体は良いが、しっかりと注意して再発を防げって事か……。

「そうだな……気を付ける」

「でも、本当に謝れば許してくれるヨシ君は悪くないよ。だって、いくら謝ったって許してくれない人なんてごまんといるし」
 波豆さんは俺にもう少し謝る際に注意することを言った後に、許すこと自体は悪くないと言ってくれた。
 でも、今の俺の許し方はまるで駄々をこねる子供を上手く叱れない親がするようなやり方だ。
 ゆえに何度も何度も俺の嫌がることをやめて貰えないんだろうな……。

「わかった。しっかりと怒る。そして、許せって事だろ?」

「そ、分かってるじゃん。それがヨシ君のためであの子たちのためだよ。さてと、そろそろご飯が出来るから」

「ああ、分かった」

 波豆さんの手料理が机の上に並んでいく。
 メインを肉じゃがとした食事の様だ。

「よく、漫画とかで肉じゃがを作る女の子が多い気がするから、何となく作ってみたよ。というか、何を作れば良いか分からなかったからね」

「じゃあ、出来上がったことだし食べるとするか。いただきます」
 俺はまず手始めに肉じゃがから手を付ける。
 まずはじゃがいもを箸で取り口に運ぶ。
 皮むきで手間取ったのか若干形は悪いけど、味はしっかりと染みていてジャガイモのホクホク感もいい感じに出ている。

「ねえ、どう?」
 俺が口にしている最中にじっくりと見ていた波豆さんが咀嚼を終えるとそう言ったので、すこし意地悪をしたくなった俺はもう一度箸を取り肉じゃがのニンジンを取り口に運ぶ。
 人参も形は少し不器用だが味はしっかりと染みていて、それでいて人参が持つ甘みが良く出ている。
 うん、若干の粗はあるもののかなり美味しい。
 だが、しかし俺が何も言わずに二口目に手を付けたことから、美味しいのか、そうでないのかを知ることのできない波豆さんはより一層落ち着きがない。

「で、味は……」
 味について触れない俺の所為で非常にそわそわとしている波豆さん。
 正直に言おう、可愛い。

 なので、もう一つ意地悪をして肉じゃがの肉を取り口に運んだ。

「もう、いい加減に感想を言ってよ」
 とさすがにこれ以上味について先延ばしにしていると怒られそうなので、感想を言う。

「美味しいよ。基本的に若田部さんの料理って甘めな味付けなんだけど、波豆さんのはまた違って中々に美味しい」
 と感想を言ったのだが、

「む、他の子の名前を出すのはないなーって。というわけで、悪いと思ったらこれ食べてみて?」
 自分の箸で料理をつまみ俺の顔の近くまで運んできた波豆さん。
 確かに、他の子と比べて美味しいだのというのは余計か……。
 よし、素直に食べるか。
 というわけで、波豆さんの箸から料理をぱくりと頂く。

「やっぱり美味しいよ。波豆さん」

「なんだろう、料理するって意外に悪くないね」
 そんな時、食卓に並んでいた先ほど若田部さんから貰ったポテトサラダを食べた波豆さんは言った。

「あー、でもさすがに若菜ちゃんの腕には敵わないかな?」

「まあ、若田部さんは料理をして長いからな。一朝一夕じゃ追いつけるわけない。ま、波豆さんならそのうち追い越しちゃうかもな」
 軽いお世辞を言うと、波豆さんは

「もう、褒めても何も出ないよ?」
 ほんのりと頬を染めてまるで恥ずかしさを隠すかのように自身で作ったご飯を頬張るのであった。

 
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ