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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

三章

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抗う意思。しかし、甘い1

 今日も始まる一日。
 ただ、違う点を挙げるとすれば、今日の体育の授業が着衣水泳の指導であることくらいだ。
 服を着たまま川に飛び込んだり、海に飛び込んだり、ノリで突き落とされた時、服を着たままの状態で泳ぐことがどれほど難しく危険が付きまとうか生徒に理解させるための授業らしい。

 それもそのはずで、うちの学校ではないのだが他校の生徒で服を着たまま海に流され、溺れ死んでしまった生徒が出てしまったという。
 そのせいで近隣の学校には十分に注意を促された。
 こうした経緯を経て、対策としてうちの学校では着衣水泳の指導をするに至ったという感じである。



 そして、やってきた着衣水泳の指導の時間。
 俺のクラスの生徒たちの様子はと言うと……

「だりぃー」

「だよな……なんで、わざわざ服を濡らさないといけねえーんだよ」
 と言った感じに大不評である。
 だって、プールに浸したら服は水浸しになるし、水を吸えば絞ったりしたとしても濡れたままで持ち帰らなくてはいけない。
 そんな感じで本当に嫌気を感じる人が多くいるわけだ。

「てか、卑怯だよな。この着衣水泳の授業に出ないと成績が下がるって」
 と言ったように直接的には教師からの口から言われていないが、この授業に出ないと成績を下げられるという事もあり皆嫌々と参加するため更衣室に向かうのであった。

 そんな中、俺はというと、

「ねえ、好木。早く、行かなくて良いのかしら?」

「いや、行かせてくださいって」

「そうね、行けばいいわ」
 絶賛、廊下の途中で調先輩にプールに行くのを阻まれている。

「だから、カバンを返してくださいって」

「さて、なんのことかしら?」
 そう、実は移動中に俺が手に持っていた着衣水泳の指導用の服が入ったカバンを調先輩に奪われた。
 カバンを奪われた俺は取り返そうとしているのだが、中々に返してくれないのだ。

「はあ……。何が目的ですか?」

「なんもないわよ? 別に」
 そんなわけがない。
 人のカバンを奪っておきながら目的がないわけがないだろ、普通に。

「はあ……。返してくださいって」

「ええ、良いわよ」
 と急にカバンを返してくれる調先輩。
 カバンにはなにもされていないようである。

「で、何が目的だったんですか?」

「あなたを引き留めるのが目的だったわ。だって、こうして引き留めたくなるほどに好木を好きだから」

「……じゃあ、俺は何もなかったのに引き留められたと?」

「ええ、そういう事。だって、引き留めた目的は引き留める為だったんだもの」
 そんな時だ。
 授業開始のチャイムが鳴り響く。
 どうやら、調先輩にかまけていたら授業に遅れてしまったようだ。

「先輩のせいで授業に遅れたんですが?」

「そう、それほどまでに私はあなたを好きだから」
 意味が分からん。
 何だろう、昨日の一件もそうだけど、本当に暴走気味だ。
 これは本腰を入れてしっかりと怒らないとダメだな。
 このままだと絶対にどんどんエスカレートしていくのは目に見えている。

「はあ……先輩。こういうのは辞めてくださいって。じゃなきゃ、本当に無視しますよ?」
 少し、手厳しく当たる。
 これで俺がいかに怒っているかは伝わったはずだ。

「……嫌よ。だって、こんなにも好きな気持ちは抑えられないもの。本当は今すぐに好木を押し倒したいくらいに好きなんだからこのくらい甘く見て頂戴」
 まさかの上目遣いで俺に言ってきた。 
 演技なのか、本心なのか分からない俺にとってただ分かること。
 どちらにせよ、俺に対しての好感度が高いゆえにもたらされる発言という事だ。

「はあ……程ほどにしてくださいよ?」
 俺はそう言い残してその場を後にするのであった。
 って、あれ? 昨日散々、しっかりと怒るって決めたのにできてない気が……。

 そして、着衣水泳の指導というなんとも言えない授業が終わるとそれからは普段通りでなにも変わらない日常が待っていた。
 昼食はクラスの友達と食べ、午後の授業も普通に受ける。
 そんな流れを経て、帰りのホームルームを経て放課後になるのだが、

「さて、帰るか……」
 期末試験が近いので、生徒会活動もなく家へ帰るのだ。
 まあ、波豆さんの部屋だけどな。

「そうだね、帰ろっか」
 波豆さんの住むアパートに帰るのだ、鍵を持っていない俺は波豆さんと帰らないといけないわけだ。
 というわけで、二人で家路につく。
 帰っている最中に波豆さんがふとこう言った。

「ねえ、ヨシ君。手料理の中にあれを入れられていなければ食べる?」
 なんと言うか、少し曖昧で意図の分かりづらい言葉を投げかけられる。

「まあ、あれさえ入ってなければ食べるけど」

「今日の夕ご飯さ。私が作っても良いかな?」
 少し照れながら波豆さんは言う。
 なるほど、照れ隠しをするためあえて意図の分かりづらい発言から会話をし始めたわけか。
 だったら、どうしてだ? とかそんな無粋な返答は余計だ。

「ああ、頼んだ」

「あれ? どうしてだ? とか聞かないの?」
 と返って逆に波豆さんが俺に聞いてきた。
 まあ、何も聞かないで料理を作っても良いと言われて何も反応を起こさないのも不自然か。

「いや、聞かなくても良いかなって思っただけだ。だって、わざと意図を読み取りにくいような発言から会話が始まったろ? 恥ずかしい、もしくは照れてたからそうした会話の初めだったんだろうし。無理して聞かなくて良いかなって思ったわけだ。まあ、波豆さんが突っ込んできたから敢えて聞くけど。どうして、料理を作ろうと思った?」

「あはは、余計な墓穴を掘ったかな?」
 乾いた笑いで言う波豆さんからは変に聞き返すんじゃなかったという姿勢が見て取れる。

「さ、答えるんだ。波豆さん」
 そんな姿を見て、少し弄り倒したい気分になった俺は答えるように迫る。

「作ろうと思った理由は簡単だよ。若菜ちゃんが手料理をヨシ君はなんだかんだで感謝してる。それが少し羨ましく見えたから私が作ってもヨシ君はうれしく思ってくれるのかなって。興味本位で作ってみようと思ったんだよ」
 なるほど、俺はなんだかんだで若田部さんから作ってもらった料理に対しては結構な感謝は持っている。
 だから、自分が作ってもそうなのかな? と思ったのか。

「じゃあ、俺の舌をうならせるのを期待して待ってる。俺を喜ばせてみるんだな!」
 というわけで若田部さん同様、うれしく思われたければそれ相応なものを作って見せろと威張り散らしてみたのだが。
 その俺の姿を見た波豆さんは。

「っぷ。なにそれ。はー、面白い。うん、わかったよ。頑張っちゃうから、期待して待ってて。というわけで、ヨシ君。私は食材を買って帰るから、先に帰ってて」
 鍵を渡され先に帰らされる。
 なるほど、料理は何ができるかお楽しみにという事か。

「おう、待ってる」
 こうして波豆さんはスーパーへと向かうのであった。

 対する俺はというと、着衣水泳の指導に使った服を洗うべく、一度自分の家に戻る。
 まあ、波豆さんの家にある洗濯機を回してもきっと怒られないだろうが、少ない量で洗濯機を回すのが少し気が引けたからだ。
 なんだかんだで、波豆さんは自分のお金で光熱費とかはやりくりしてるしな。
 手洗いも考えたが、どうやれば良いのか分からなかったので我が家の洗濯機を使うこととしたのだ。

「誰もいないな」
 いまだ、誰も帰ってきていない我が家。
 そんな我が家の洗濯機に今日使った服をぶち込み洗濯機を回す。

 そして、その間に俺は自分の部屋に戻ったのだが、

「ナニコレ?」
 俺の部屋は少し変であった。
 タンスからはパンツが奪われ、寝るときにかけていた毛布はなぜかどこにも見当たらない。
 ベッドの上にはなぜかシミが出来ていた。

「はあ……毛布は絶対匂いがするとか言って調先輩が持ってたな。で、このシミはあれだな。調先輩がまた俺のベッドの上で盛大にあれしたんだろう。で、掃除のイロハを知らない調先輩はこのくらいで大丈夫だろうと高を括るもシミが残ったわけか」
 本当に何してんだ? と小一時間問い詰めてやりたい。
 そんな時だ。玄関から誰かが入ってくる音がした。
 何となく、開け方が雑であったので、きっと調先輩だろうと思った俺は玄関へ駆け寄って行く。


 すると、玄関には調先輩がいた。

「あら、好木。帰って来てたの?」

「いや、洗濯機を使いたくて一時的に帰ってきただけです。それよりも、調先輩。何か、言うことはありませんか?」
 彼女が考えを読める範囲は一キロ。
 当然、俺がついさっきまで考えていたことはお見通しなわけで、調先輩に俺の部屋がどうしてああなっているのか聞いた。

「だって、好木がいないのが悪いんじゃないの」
 そして、責任転嫁と来た。
 普通にムカつくし、ベッドのシミについては結構切れている。
 ここは心を鬼にして怒るべきだ。

「調先輩。ちょっと、やりすぎなんじゃないですか? 常識を考えてください。自分のベッドに見知らぬシミが出来ていたらどう思います?」

「汚れているわと思うわ」
 あ、うん。
 そうなんだよなあ……。この人、つい最近まで本当にゴミにまみれて生活してた人だった。
 そりゃ、俺との考えのギャップがあって当然か……。
 だがしかし、俺がわざわざ先輩の考えに合わせる必要はないわけだ。

「でも、俺は嫌なんですぐにとは言いませんけど。改めてください。色々と。毛布だって、こんな熱くなり始めた季節に汗をかかないわけないんですし、普通に先輩の汗とかで匂いとか色々と付くんですよ? 誰もがそう言った他人の匂いとかそう言うのを受け入れると思ったら大間違いですから」
 ふう……言えた。
 はっきりと、言えたな。

「……好木は私のことが嫌いなの?」
 なぜか、調先輩は落ち込んでいた。
 確かに先輩の匂いに対する執着心について否定したけど、そこまで落ち込む必要はないと思う。

「嫌いじゃないですけど。誰もが同じ考えや匂いフェチを持っているとは限らないってことです」
 だが、引かない。
 ここで引けば、また俺は流されてしまう。
 そうすればきっと俺は本当に先輩と同じ匂いフェチになってしまうかもしれない。

「そう……。そうね……。誰も同じなわけないものね……」
 その瞬間だ。
 初めて、俺に対する調先輩の好感度が下がった。

 ……っく、ものすごい心苦しい。
 あの調先輩の好感度が下がった。
 もしかしたら、このままずっと下がり続けて俺の事なんて見向きもしてくれないかもしれない。
 そう考えた俺は……。

「はあ……。別に完全に辞めろって言うわけじゃないですって。ただ、限度を弁えろってことだ」
 ものすごい、甘い答えを返してしまった。

「……良いの? あなたの匂いを嗅いでも?」

「限度までなら」

「ええ、そう。じゃあ、この位は良いかしら?」
 調先輩はそう言って、俺の胸元に顔を押し当ててきた。
 なんと言うか、ものすごい息が荒いな……。
 そして、普通によだれを付けられてるのか、冷たい感触がする。

 その時だ。
 洗濯機が鳴り、選択が終わった事を知らせてきた。

「調先輩。離れてくださいって。よだれを付けないでくださいって」

「今のはあなた的に大丈夫かしら?」
 そう言うと、調先輩は俺の胸元から顔を離して俺に聞いてきた。

「まあ、大丈夫ですけど……」

「わかったわ。毛布はきちんと洗って返しておくから安心して頂戴」
 そう言うと調先輩は自身の部屋へ引っ込んでいった。

 さて、俺も洗濯物を回収して波豆さんの部屋に戻るとしよう。







 だがしかし、この調先輩に対する甘さが後にとんでもないことを起こすのはこの時の俺は知らないのであった。
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