挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

一章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

8/110

超能力者は闇が深い。だから、俺は見捨てることはできません。2

「あれは一年前の時ね……」


 一年前の蝶野高校。そこには若かりし頃の寒河江調がいた。

「ねえ、寒河江さん。寒河江さんって超能力者なのよね? 頼みたいことがあるんだけど」
 高校に入る前から超能力者である事を理由に虐められていた彼女。
 だがしかし、精神の成熟とともに周りから虐められることは無くなり、高校では割と受け入れられ、最初の一週間は彼女にとって今までにない以上に楽しい生活であった。

「ええ、良いわよ」
 その生活が彼女の倫理観を少しマヒさせていた。気が付けば自分が超能力を使えることを友達の加藤に話し、自分を受け入れてもらおうと考えが分かることを言ってしまったのだ。
 そして、超能力者だという事を加藤に知られていたがためあることを頼まれた。
 その頼まれごとをきっかけに寒河江 調は最悪な事態に巻き込まれる。いや、最悪な環境へと陥る。

「というわけで、隣のクラスの山田君に私のことをどう思ってるか聞いて、その時に山田君が考えていることを教えて欲しいの」
 頼み事は恋について。
 相手がどう思っているのか率直に知りたいという事で、考えていることが分かる彼女を頼ったのだろう。それを彼女はダメダメだと思いながらも頼みを受けてしまった。

「ねえ、私のクラスの加藤さんのことはどうかしら。あの子、あなたに興味があるみたいなの」
 気が付けば直球的に聞いていた。
 そう、寒河江調はどのようにして調べるかまでは指定されなかったので彼女なりに聞くことで頼まれごとを遂行しようとする。

「え? なに。誰それ」
 山田の眼中に寒河江と同じクラスの加藤の事など頭になかった。
 それどころか、『加藤って誰なんだよ。てか、お前の告白じゃねえのかよ。期待させんなよ』と考えていた。
 友達には超能力者だと話しているものの、他の物には話していない。当然、山田も寒河江が考えをわかる超能力者だと知らない。

「というわけで、調べて来たわ」
 ありのままを伝えた。
 加藤のことは知らないし、眼中にないことをしっかりと伝える。

「ねえ、寒河江さんはなんでそんなひどいことを言うの?」
 なぜか、怒りと憎しみにまみれている加藤。
 それをどうしてか当時の寒河江はわからない。

「私はあなたに頼まれた通りに
 彼女の声は加藤によってさえぎられる。

「いくらなんでも言い方ってものがあるでしょ。そんなことも分からないの?」
 なんて身勝手なやつだと思った。 
 友達だからはっきりと伝えて、もう少ししっかりとアプローチをした方が良いと言いたかっただけなのに。逆に切れられるとは思いもしていなかった彼女は茫然と立ち尽くす。

「ごめんなさい。配慮が足りなかったわね……」
 だが、言い方が悪かったのも自覚していた。
 だから、謝る。何せ、今までにない以上に恵まれた環境。
 それを手放したくなかったのだから。

「そうよ。分かれば良いの」
 その日はぎくしゃくとした時間が流れていた。

 だが、次の日。ぎくしゃくとした関係を通り越してしまう。

 次の日の朝、寒河江は自分のクラスに入るべく教室のドアを開けようとしたのだが、中から少しばかり気になる会話がなされていたので、ドアを開けずに耳を澄ました。

「ねえ、知ってる加藤さんが寒河江さんが超能力者だってことを良いことに利用して山田君からどう思われてるか調べようとしたんですって。友達を道具みたいに使うなんて最低よね?」

「ええ、そうね。寒河江さんがかわいそうね。友達と思っていたのにそんな道具みたいに扱われる何て。ところで寒河江さんはなんの超能力を持っているの?」

「そこまでは知らないわよ。さすがに……」
 と言ったような会話がなされていた。
 そして、その会話は続いているので寒河江は入って気まずい空気に陥るのを恐れ、したくもないのにトイレに逃げ込み少しの間、息をひそめ教室に向かう。

 だが、寒河江が教室に入った瞬間……。

 周囲から冷ややかな視線が向けられた。

「ねえ、知ってる。寒河江さんが山田君のことが気になるからって、わざと加藤さんの名前を使ったって」
 わざと、教室に入ってきた彼女に聞こえるようにある生徒が言った。

 そう、彼女がいなかった数分間の間に事態は逆転していた。

 事態が逆転したことを調べるべく、寒河江はクラス全員の考えていることを読む。
 超能力は小さい頃は不安定で念じてもいないのに発動してしまう事がある。そのため、周囲の考えを常に読み続けてしまう彼女は話していることではなく考えていることに答えを返してしまうことが多くあった。
 そのせいで、虐められていた。
 コントロールができるようになったのに高校に入るまで虐められ続けたのだが、それを彼女は耐えた。
 そう、彼女は常に人の考えていることを読み取り続けたことにより精神だけは人一倍に大人になっていた。
 だから、いじめを耐え抜くことが出来た。

 そして、精神は人一倍大人なゆえに、彼女は泣き言を言う前に自分を陥れた犯人を捜す。
 ただ泣くだけではない。精神的に少しだけ大人な彼女はやり返すことの優位性を理解しているのだから。

「ええ、加藤さん。酷いじゃない。周りに嘘を付くなんて」
 犯人はすぐに見つかった。
 教室に入ると自分のことを悪く言われていた加藤は咄嗟に勝手に自分の名前が使われたと周りに弁解していたのだ。
 それを周りは信じた。なにせ、加藤は寒河江のみならず多くの友達をクラスに作っていたのだから。

「何を言ってるの? 寒河江さん。それはこっちのセリフだけど」

「そう。だったら、良いわ。はっきりさせましょうか」
 ポケットからボイスレコーダーを取り出す。
 取り出されたボイスレコーダーは考えを勝手に読み取り会話ではなく考えていることに対して発言をしてしまわないように、再三と確認できるよう用意された特別性。
 常に録音され続け、一週間分録音できる高性能品だ。

「え?」

「確かあれは一昨日の帰り道だったわね。その時の音声が……」 
 そう言った瞬間に加藤は取り乱す。
 考えの手に握られたボイスレコーダーを奪うべく駆けだしてしまう。

「あら? どうして焦ってるのかしら?」
 その焦りは周囲に加藤が嘘を付いたことを知らしめた。

「え、みんな違うの。ねえ、違うから」
 だが、もうおしまいだ。誰も加藤のいう事は信じない。

 そんな中、教室に担任の先生が入ってきた。

「おいおい、どうしたんだ?」
 慌てて、加藤と寒河江の間に割って入る担任。

 生徒指導室で二人は担任に事情を説明した。多少意見の食い違う発言。
 だが、ボイスレコーダーが決定的な証拠で加藤が悪いという判断を担任は下す。

「まあ、加藤も悪いけど。頼みを受けた寒河江も全く悪いわけじゃないからな?」 
 そして、担任はお互いに解決したことをクラスで宣言させ丸く収める。

 だが、周囲の目は一度見てしまったものは忘れない。
 加藤と寒河江は問題を起こしたやつという認識が出来てしまい、だれもが近づかなくなった。
 そう、精神的に成熟し始めた結果。いじめではなく、無視に切り替わったのだ。
 あと、超能力者は差別されやすいため、学校側にもきちんとマニュアルが存在し、寒河江調の超能力が相手の考えていることが分かるという事は特定されなかった。
 もし、特定されれば無視に加え、冷ややかな視線も彼女を襲っていたに違いない。
 最も、そのマニュアルで周囲をごまかしていた担任が常に保守的で自分のことを何も考えていなかったのに失望したりもした。

 でも、彼女は学校に居座る。

 揉めごとを起こした加藤、気が付けば不登校がちになり学校をやめてしまったというのに。

 対して、寒河江は虐められていた過去もあり人一倍メンタルだけは強く、校内における清掃やボランティア活動に精を出し無視される空白の時間を補いながらなんとか生活していた。

 だが、いじめよりも無視。構われないというのは辛く、悲しいものであった。

「もう、疲れたわ。もしかして、虐められていたほうが良かったのかもしれないわね」
 すっかりと人のぬくもりを忘れた寒河江 調。 
 その心はすっかりと冷え切っていた。
 そこにさらに追い打ちをかける事件が起こる。

「生徒会長を決めたい。今年は誰も立候補者がいない。だから一年生からも募ることを決めた。あくまで、生徒会は自主的なものだからな。こっち側で押し付けることはできない」
 この学校の生徒会は割と学校の行事に割り込んだ活動を行っている。そのためチームワーク重視にするためまず生徒会長を決めて生徒会長が残りの役員を決めるという制度を取っている。
 そして、今回は立候補者が現れていなく一年生にまで話が回ってきたのだ。
 おそらく、教師側から生徒に強くお願いした場合、自主性を損なうからだろう。


 問題は深刻化し始めたころ、寒河江調と同じクラスのある生徒が彼女に話しかけた。

「ねえ、寒河江さん。あなた、ボランティア活動とかよくやってるみたいだし、生徒会長でもやったら?」
 そう言われてしまう。
 だが、彼女に人脈はない。当然、断ろうとした時だ。

「そうだよ。やってみれば?」
 周りは同調し圧力をかける。
 だが、無視され続けていた寒河江調に甘い考えを浮かばせる。

 もし、生徒会長になればみんなが話しかけてくれるかも、もしかしたら生徒会に入ってくれる物好きがいるかもと。


 その結果現在に至る。
「そう、結局、誰一人役員を集められず。その結果、仕事を部長や委員会の代表に回すことになったの。そのせいで私は人も集められないのに立候補して学校の運営を滅茶苦茶にした身勝手ものとして嫌われているのよ」
 寒河江調ははっきりと今までの経緯を神田好木に語り終える。

「……」
 彼は言葉を発さない。

「どう、幻滅した?」

「……」

「ねえ、何か言って頂戴?」

「……」
 だが、神田好木は黙り続ける。 
 そんな彼に少しイラつきを覚えた寒河江調は考えている事を読み取る。

 その瞬間、大粒の涙が寒河江調から零れ落ちた。

「先輩。俺もこういうことを経験してきました。だから、俺は同じ苦しみを持つ人を見捨てられません。節度さえ守ってくれればこんな俺でも構いますから。泣かないでください」
 そう、彼が見せたのは自身の過去。
 彼も又、超能力に振り回されて生きている。その振り回された過去を見せつけたのだ。
 しかも、同じような悩みを持つ事に同情と慰めの感情を込めて。

「ねえ、本当に良いの?」

「正直、後悔するかもしれません。でも、先輩は最後まで俺を見捨てないですよね?」

「ええ、そうね」
 その瞬間、先輩の好感度はバカみたいに跳ね上がる。
 これ、大丈夫か? 先輩の思考回路は普通に地雷だし、俺本当に取り返しがつかないことをしてるかもな……。
 まあ、きっと大丈夫だろう。

 そんな考えが甘いことをこの時の俺はまだ知らない。
シリアスはとりあえずおしまい!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ