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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

三章

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更生したのは伊達じゃない1

「さて、ヨシ君。自分の家のようにくつろいで良いよ」
 波豆さんに連れられてやってきた波豆さんが今住んでいるアパートの一室。
 なんというか、波豆さんの部屋はとても実用的なものの配置になっている。

「……俺は何をされるんだ?」

「何もしないけど? 別にあの三人みたいに私は何かをするってわけじゃないから安心して」

「そうなのか?」

「うん、そうそう。言ったでしょ? 私はするよりも見ることが好きだって。だから、ここでヨシ君がありのままで暮らす姿を見せてくれればそれで満足だから」

「いや、それはそれでありがたいけど。本当に俺はこの部屋で一週間暮らさないとダメなのか?」

「まあ、嫌なら帰っても良いよ。でも、お試しで一日だけはお願いするかな?」
 と言ったように嫌なら一日一緒に過ごしたら家に帰って良いらしい。
 連れて来られたものの、何かが起こるというわけでもなく、波豆さんは俺をただ見つめている。

「そう見つめないでくれるとありがたい。チラチラと見られる分には良いが、こうもずっと凝視されているとなんだか気が緩まないし」

「うん、わかった。じゃあ、適当にチラチラと見ることにするよ」
 波豆さんは部屋にあるノートパソコンを開き、ネットサーフィンに興じ始める。
 たまに、俺の方をちらりと見るがそれ以外はこれと言って何も起こらない。

「さてと、携帯は持ってるけど。さすがに携帯だけで暇をつぶすのは少しばかり無理があるな……いや、できなくはないけど……」
 なんて、呟いていると波豆さんは押入れを開ける。

「そんなヨシ君は本でも読んでみたら?」
 押入れにはびっしりと本が詰まっていた。
 マンガやら、ビジネス書やら、はたまた一般文芸、ライトノベル、本当に多種多様な本がずらりと並んでいた。

「波豆さんって本好き?」

「そうだね。本を読むことも又見ることだから。さて、私的にここにある本で一番面白くなかったのはこれかな?」
 と言って渡された一冊の本。
 まさかの一時期はやった携帯小説を書籍化した本であった。

「なんで面白くないのを進めて来たんだ?」

「だって、面白い本を進めるなんてありきたりだし、それにその本を読んで面白くなかったという事を一緒に話してみたいからかな?」

「まあ、そう言うのもありか……」
 と言ったように波豆さんから勧められた本を読むことになった。

 一時期、流行った携帯小説の書籍化なのだが、読めば読むほど読むのを辞めたくなる。
 だがしかし、不思議とそのクソさのせいで読むことを止められない。

 文は滅茶苦茶、唐突な視点変更の嵐、変なポエム、文章から滲み出す狂気、携帯小説を書籍化したことによる読みやすさを考慮したのかスカスカで半分以上が空白のページ、そんなおかしい本。

「どう? 面白くないでしょ?」
 読み始めて十分しかたっていないのにスカスカな本文のおかげかすでに30ページも読み進めていた時に波豆さんが俺に聞いてきた。

「ああ、面白くない。でも、なんか読むのを辞められない、面白く無くて反吐が出そうだ。だけど、面白く無さ過ぎて逆に面白い」
 自分でも何を言っているか分からない。
 だってさ、本当に糞な要素ばかりで面白くもないのに気が付けば手はページをめくってるんだからな。

 そして、再び本を読み進めて行く。
 それから一時間かけ、俺は波豆さんに勧められた本を読み切る。

「波豆さん、この本は本当に面白くなかった」

「でしょ? でも悪くはなかったでしょ?」

「まあ、悪くはなかった。さてと、まだまだ時間はあるし良ければ、他にも本を貸してくれないか?」
 すっかりと読むことに魅入られた俺は波豆さんの部屋にある本を読んでいいか聞いた。

「もちろん、そこにある本は好きに読んで良いよ」
 そう言われて俺は普段は絶対に手を付けないようなビジネス書に手を付けて読み進める。

 本に取りつかれたように俺は読書していたら、気が付けば時間は夕方を通り越し夜になっていた。

「さて、ヨシ君。ご飯は何を食べる?」

「いや、波豆さんにお金を貸してもらったけど。懐にはそこまで余裕が……」

「じゃ、もう少しだけお金を貸してあげる」
 と言ったようにお金を追加で借りた結果。
 いつもと同じくらいの懐の温かさになった。

「そうだな、久々に手料理以外が食べたい」
 そう、若田部さんによってほぼ毎日のように手料理が振る舞われていた。
 しかし、本音を言えばジャンクな物が食べたい時も普通にある、まあ手料理を振る舞って貰えているのは最高の贅沢でもあるんだけどな。
 でもそれでも、ジャンクフードが食べたくなってしまうのだ。

「そっか。じゃ、外に行こう。何を食べる?」
 と言ったように波豆さんと二人で外へ繰り出すのであった。

 そんな外に繰り出した俺達が入ったお店はハンバーガー店。
 夕食として食べるには栄養が偏ってしまう気もするが、食べたくなったのだから仕方がない。
 ポテト飲み物が付いたセットと物足りなさを感じたので単品でもう一つハンバーガーを頼み、トレイに乗せられた頼んだものを持ち適当な席に向かう。

 そして、適当な席を確保した俺達は若田部さんが見たら『不健康です!』と怒られること間違いなしの夕食を取り始める。

「久々に食ったけど、美味しいな……」
 久々にハンバーガーを食べた俺は久しく忘れていた味を懐かしむように噛締める。
 そんな俺を見た波豆さんは軽く笑っていた。

「っぷ。本当に美味しそうに食べるね。どれだけ、抑圧されてきたんだか」

「だってさ、毎日のように若田部さんが食事を作ってくるし、こう言うのを食べるのは本当に久しぶりなんだよ」

「じゃあ、こう言うのが食べたいからって言えば良いのに」
 波豆さんにそう言われるが、

「はは、それが出来たらどれだけ楽なことか。だってさ、健康とか、俺の体重とか、そう言うのに絡めて食べるように迫って来るんだぞ? 断るのは至難の業でしかない」

「まあ、そうだね。でも、もう少し頑張りなよ。そうすれば、思いは通じるかもよ?」

「うーん、確かに俺も流されやすいからな。そう言うのもあって、ああいう感じに好き勝手される面も少なからずあるしな。そうだな、もう少しだけ強く断ってみるか……」

「うん、それで良いと思うよ? それにしてもすごい食べっぷりだね。あっという間にハンバーガーを二つ食べるなんてさ」
 そう、話ながら食べている間にもう二つのハンバーガーを食べ終えてしまったのだ。
 波豆さんなんて二口くらいしか食べてないのにな。

「本当に久々で美味しかったからな。俺のことは気にせずにゆっくり食べてくれ」
 そう、相手がいるのに自由気ままなペースで食べてしまい、相手を焦らせるのはあまり良くないし、ここからはゆっくりとポテトを食べるとしよう。

「じゃあ、お言葉に甘えてゆっくりと食べるよ」
 と言ったように非常に緩やかな速度で某ハンバーガーチェーンで夕食を取るのであった。
 勿論、それが嫌なわけはなく楽し気な物であったのは言うまでもない。

 夕食を取り終わり、家に帰る俺達。

「さて、ヨシ君。服とか色々と取りに一回家に戻りなよ。さすがに家から連れ出して財布と携帯くらいしか持ってないでしょ? ま、戻ってこなくても何も言わないけどね」
 少し寂し気に波豆さんが言ってきた。
 特に戻ってこなくても何も言わないけどね。と言っている時の顔は本当に寂しそうに見えた。

「それもそうだな。一回家に戻って色々と取ってくる」
 波豆さんに言われた通り、一度家に戻る。

 家に戻ると、少し大きめなカバンに服やら生活必需品を突っ込む。

「ねえ、好木。そのまま、バックレても良いんじゃないかしら?」
 調先輩に何、馬鹿正直に波豆さんのもとに戻ろうとしているのかと言われるも、俺を一度家に戻らせたときの寂しげな顔が脳裏から離れなった。
 なに、波豆さんは更生してこの家に住み着いた三人より全然普通だ。
 一日くらい一緒に同じ屋根の元で過ごそうが何も起きないに決まってる。
 俺的には波豆さんは仲の良い友達、そんな感じだ。その感じが俺に安心感を与えてくれるし。

「いや、なんだかんだで先輩とかの言うことは聞いたりしてますし、波豆さんにだけそれを適用しないのはどうかと思うので取りあえず、今日一日だけは波豆さんのところでお世話になります」
 と適当に理由を付け俺は我が家を出た。
 そして、隣、と言っても少し離れているが波豆さんの住むアパートを訪れ、先ほど知った波豆さんの部屋の前についているチャイムを鳴らす。

「あ、ヨシ君……」
 出てきた波豆さんは嬉しそうで悲しそうな顔をしていた。

「どうしたんだ。そんな顔して?」

「いや、うん。本当にヨシ君って優しいんだなって。わざわざ戻って来るってさ。それに驚いただけ」

「そうか? だって、波豆さんは普通だし、あの家にいると疲れるからな……。そう考えれば戻ってくるのは当然だ。波豆さんは別に俺をどうこうするつもりはないんだろ?」
 軽い口調で砕けた感じで戻って来た理由を説明すると、その説明がツボに入ったのか少し笑って波豆さんは俺に返事を返す。

「うん、しない。だって、私は更生したからね。まあ、少しおかしいところもあるけどあの三人に比べたら全然ましだから」
 胸を張って言う波豆さん。
 その姿は俺を安心しきらせるほど十分である。

「あれか? 更生したのは伊達じゃないってことか?」

「そう言う事。さ、いつまでも玄関に立ってないで入りなよ」
 そう言われ、俺は波豆さんの部屋へ入るのであった。

 正直に言おう。
 波豆さんの部屋は我が家よりも普通に居心地が良いんですけど……。

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