挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

一章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

7/110

超能力者は闇が深い。だから、俺は見捨てることはできません。1

 公示

 神田 好木を生徒会副会長に任命する。

「ナニコレ?」
 うちの学校では出来るだけ紙の資源を大事にするため、連絡事項等は掲示板を通して通告される。
 そのため、下駄箱の近くに連絡掲示板が設けられている。
 その連絡掲示板に俺を生徒会副会長に任命するという趣旨が書かれた紙がでかでかと貼り付けらていた。

「よし、きっと誰かのいたずらだな……」
 見なかったことにし、自分の教室に向かう。
 教室に着いたとほぼ同時に教室にいた太郎が俺に話しかけてくる。

「おい、お前どうして生徒会副会長になってるんだよ。生徒会は生徒会長が役員を決める権限を持っているから、生徒会長である寒河江 調先輩が任命しない限り成れねえんだぜ?」

「いや、知らん。身に何も覚えがない」

「まあ、変わり者らしいけどな。でも、美人だから告白は絶えないとか噂もあるぜ? 本当にどこであったんだよ。お前」
 あの、地雷に告白だと? まあ確かに外見は良い。
 でも、それ以上に中身がダメだ。変わり者と言われているのはまさに事実であるし。

「まあ、あれだ。ちょっと、直談判に行ってくる」
 さすがに身に覚えがないのにいきなり生徒会副会長に任命されても困る。
 時間もあるし先輩にちょっと問い詰めに行くとするか……。

「おう、行ってこい」
 だが、俺は先輩のもとに向かうことが出来ない。

「先輩のクラスって何組だ?」

「おい、知らなかったのかよ……。2年4組だ。朝のホームルームが始まる前には戻ってこいよ?」
 太郎に見送られて俺は2年4組の教室の前までやってきた。 
 教室に入ろうとするある先輩に声をかける。

「すみません。寒河江調先輩がクラスに居たら呼んでほしいんですけど」

「ああ、あの子ね。嫌よ、会いたいならクラスの中に入って自分で呼べば?」
 ああ、そう言う事か……。
 そう、変わり者、告白されることが絶えない人。
 そんな人が周囲の女子から好まれるわけがなく、当然嫌われているのが一瞬にしてわかってしまう。
 お言葉に甘えて、先輩の教室に入る。

 そこには窓際の席で読書に勤しむだけなのに華麗な姿の先輩がいた。

 そして、入ってきた俺に気が付いたのか、本を閉じこちらに向かって歩いてきた。

「ここでは目立つから場所を変えましょうか。ついて来なさい」
 言われるがままについて行くと、そこは生徒会室であった。
 中は会議用のロングテーブルが円のように設置されており、いかにもという生徒会室だ。
 しかも、お湯を沸かす用のポットまである。

「さて、適当に腰かけて良いわよ」
 先輩は生徒会長だというのに下座に座る。
 もしかして、俺が逃がさないためにあえて下座に座ったのか?

「いえ、違うわ。いつも仕事をしているときカーテンから差し込む光がうっとおしいからここによく座るだけよ」

「あ、はい」
 と言って俺も一応席に着く。
 右隣に座ったがもちろん人二人分の隙間を作って座ったのは言うまでもない。

「というわけで、あなたは今日から生徒会副会長に任命されたわ。そうね、私は立場上はあなたの上司に当たるわけだし、これからは好木と呼ばせてもらうわね」

「な、なにを勝手なこと……」

「勝手? 昨日あなたは委員会についてきちんと『機会があれば程度にって』言ったわよね?」

「あ、そう言えばそんなことを。でも、勝手に決めるのはダメだと思うんですけど」

「じゃあ、私ともども一週間の停学を食らいましょうか」
 ん? どういうことだ。
 一週間の停学になるようなことをした覚えはないぞ? 一体、何のことを……。

「先輩、何を言って」

「昨日、私からパンを貰ったじゃない。実はね、うちの学校では生徒同士の金銭のやり取り、奢る、奢られると言った行為はれっきとした校則違反なの」

「な、そんなのみんな守ってないですよね?」

「ええ、守ってないわよ。だから、脅しとしては体を成していないわ。だから……」
 先輩は制服に手を掛ける。ボタンを一つ一つ外して行く。
 そのボタンの先に見えるもの。慎ましいながらも滑らかな曲線を描く胸を覆い隠す下着が露となる。
 その下着越しの胸に俺の手を無理やり添えて先輩は言う。

「今、ここで私が叫んだらどうなるかしら?」
 そう、実力行使。
 俺が生徒会副会長の任命を受けなければ、この場で叫び二人もろとも不純異性交遊で停学にするという堅い意志が先輩の目には宿っている。

「どうして、そこまでして……」

「言ったでしょ、好木が私を嫌いに思わないからよ。そうね、嫌いに思えば良いじゃない。そうすれば、私はあきらめるわ」
 だが、嫌いには思えない。
 それ以上に彼女をここまで変えてしまった超能力が憎く感じてしまう。本当はこんな風に振る舞わずにもっと普通な彼女がもしかしたらいたのかもしれないのだから。

「うふふ、だからよ。出会っても間もないけど。だから、私は好木を好きになったの。でも、こうすることでしか愛情を伝えることが出来ないの」
 ここで、青春を棒に振るのはダメだ。
 何よりも、それは高校入学式の日に笑顔で送り出してくれた京香とばあちゃんに示しがつかない。
 めい一杯、精一杯、俺は青春を謳歌すると約束した。もう、あんなクソみたいだった中学生活には戻りたくない。

「そう、あなたにも譲れないものがあるのね……ごめんなさい。強引に迫ってしまって。もう、これからは近づかないし生徒会副会長に任命する件もなかったことにするから安心して頂戴」
 愛想笑いで言いながら、俺の手を胸からどけボタンを留めている。 
 そう、これで良い。これで俺の青春は守られた。

 だけど、心の中でどこかさび付いているかのように思考がうまく回らない。
 これで良いと思う自分、これじゃあ先輩が救われないと思う自分。
 一体、どうするのが良いんだよ……。

 そんなとき、すっかりとボタンを留め終わった先輩の後ろにある生徒会室の扉が開いた。

「寒河江調。生徒会役員が増えたんだろ? 俺達に任せた仕事を返させに来てもらった」
 扉の先を見るとつい最近行われていた部活歓迎会や委員会活動の説明で壇上に立っていた部や委員の代表者達がずらりといる。

「それは、どうしてかしら」

「お前は生徒会役員が少ないのを理由に一部の仕事を部長や委員長に兼任させてただろ? 生徒会役員が増えたんだろ。だったら、任せられていた仕事を返しに来るのは当然に決まってる」

「ええ、そうね。でも、あなた達が誰も生徒会長に立候補しないから私を他推という形で生徒会長の席に立たせたんじゃないのかしら?」

「ああ、だから。いつまでたっても増えない役員のせいで俺たちが一部の仕事を引き受けていたろ?」
 今繰り広げられている光景はなんだ?
 確かに変わり者かもしれない先輩だけど、なんでそこまで憎たらしく先輩を見ているんだ?

「ええ、そうね」

「というわけで、仕事を返させてもらう」
 バンと乱雑に投げられる書類。それはまとまっていたが止めていたクリップが外れ乱雑に散らばる。

「ごめんなさい。残念なことにあの話はなかったことになったの。だから、引き続き
 先輩が淡々とやってきた連中に言うのだが、

「あっそ」
 聞く耳を持たず、去って行ってしまった。

「ごめんなさい。見苦しいところを見せてしまったわね……」
 散らばった書類を回収しながら言う先輩。

「あの、その」

「ふふ、私の心配をしてくれるのは相変わらずなのね。じゃあ、少しその心配に甘えても……。いえ、何でもないわ。だって、もう私はあなたと関わらないんだものね」
 冷めた笑い。
 寂しそうに笑う先輩。それにどこか胸が痛む。
 妹の京香、ばあちゃんの顔がよぎったが、もう止まることはできなかった。
 ごめん、京香、ばあちゃん。俺、二人に約束した青春を謳歌するって事できないかも。

「先輩。何があったか教えてくれますか?」
 そう、俺は青春を謳歌するというのを振り捨てる覚悟で先輩に話を聞く。

「本当に良いの? あなたは器用なはず。だから、今回はきっとうまく生活できるはずなのに?」

「でも、それ以上に先輩のことを同情しています。周りから同情されない先輩。そんな、先輩を俺くらいが同情したって良いじゃないですか」
 息継ぎをし俺は続ける。

「先輩、何があったか良ければ聞かせてくれませんか?」

 ああ、なんてことしてんだろうな俺。先輩と関わればまともな学校生活が送れないかもしれないって言うのに……。
 でも、超能力に振り回される気持ちはわかる。
 だから、俺は先輩を見捨てたくない。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ