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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

三章

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普通な生活は彼女を苦しめる3

「嫌がってるので辞めてください」
 肩を軽くつかみこちらに気づかせる。
 そして、こちらを向いた時にはっきりと言った。

「あ、なんだてめえ?」
 さて、どうしたものか……

「だから、嫌がってるようなので辞めて貰えませんか?」

「は? どう見てもうれしそうじゃんか。おめーの頭、スカスカなんじゃねえの?」

「若田部さん。大丈夫?」
 しかし、その隙にも若田部さんは囲まれていた場所から抜け出し、俺の背後にやってきた。

「はい、大丈夫じゃないです。普通に嫌です」
 ここで、大丈夫と言えば相手をつけ上がらせるのを若田部さんは理解しているのか、きちんと大丈夫ではないと言ってきた。
 やはり、リーダー格の男とそのほかの数人に囲まれていたのはそれなりに恐怖であったらしい。

「だそうですけど?」

「ああん? 誰にそんな口をきいてるんだよ。俺の親は、この地域を仕切ってんだぞ?」
 どうやら、偶然にも肩を掴んだのはリーダー格で親が少しお偉いさんであり親の力を振りかざしてきて好き放題できるようにしている張本人であった。

「それがどうしたんだ?」
 後ろで過剰なまでに震える若田部さん。
 そんな彼女を見てしまった俺は止まるに止まれない。

「は? マジかよ。おいおい、お前馬鹿か?」
 何も面白いことはないのに軽く笑いながら言うリーダー格の生徒。
 周りにいる取り巻きも俺がバカに見えて仕方がないのか、笑っている。

「少なくともあんたよりかは成績は上だ」

「っち。マジムカつくな。おい、お前名前は?」
 まさか、ここまで歯向かって来るとは思っていなかったのか、相当に怒り始めている。
 現に俺の名前を聞いて後で親の力を借りて、学校に俺のことに対して苦情を入れようって魂胆が見え見えた。

「神田好木」

「神田好木、じゃ、楽しみにしておけよ? さ、帰ろーぜ」
 と言って周りにいた連中を引き連れ帰ろうとするも、それを許さない。

 俺は帰ろうとした連中の前に立ち、進路をふさぐ。
 さすがにこのままだと虫の居所が悪いので少しばかりダサいがちょっとばかしの嫌がらせをしよう。

「そんなだらしない恰好でずっとだらだらとして。そろそろ、将来の事を考えたら良いんじゃないですか?」
 相手が今、一番悩んでいそうなことを嫌みったらしく言った。

「お前に何が分かるんだ?」

「いえ、俺は先輩方を心配してるんです。そろそろ、これからについて考えなくちゃダメな時期が迫ってきているはずで、これからのことを考えないといけない筈なのにこうしていつまでも、だらしない恰好で闊歩して本当に大丈夫なんですか?」
 言葉に嘘はない。
 偽りのない言葉で責め立てる。こんな風に相手を煽って少しでも不安や疑念。気持ち悪さを抱かせるのが、俺にできる精一杯のやり返しだ。

「……、別に俺は親が金持ちだし、一生働かなくても、生きてけるし」

「じゃあ、したいことは? 働かなくても良いけど、夢はないんですか?」

「……、俺は……っち」
 そんな、俺のささやかな相手への不安や疑念を出だせて気分を悪くするのは効果を示したのか、普通に嫌気を指した顔で俺の横を通り過ぎて行った。
 若田部さんにしつこく絡んでいた奴らは全員、不満そうな顔をして去っていった。
 ざまあみろ、将来に不安を覚えてやがれ。
 なんで、あんなにも効果的だったんだ? てっきり、耳も貸して貰えないかと思ったんだけどな……

「さて、若田部さん。大丈夫だった?」

「はい、大丈夫です。腕を掴まれたり、スカートをめくられたりしたのは本当に嫌でした。助けてくれてありがとうございます。変に言動が嘘か本当か曖昧ですごく不安な気持ちになってましたし」
 なかなかに距離が離れていたせいで、見えていなかっただけで結構な酷い付きまとわれ方であったようだ。
 そりゃ、腕を掴まれたり、スカートをめくられたりしたら、逃げて来たとき、俺の後ろで怯えていて当然である。
「いや、生徒会の仲間として困っていたら助けるのは当然だろ?」

「……そうですね。ありがとうございます」
 学校外であったら、お礼と称して色々と尽くされた可能性が高いのだが、ここは学校。若田部さんは口だけのお礼で済ませてくる。
 そんな様子をみた周りの反応はこのようなものだ。

「あそこまで、助けて貰っても、全然若田部さんが神田君になびいてる気がしないな。ほんと、可哀そうに見えて来るぜ。どう見ても、あんなこと、神田君が好意を持ってなくちゃしないのにな」

「だな、あの若田部さんの様子から見て全然脈なしだよな」

 と言ったように俺が勇気を出したのにも関わらず、あまり若田部さんの反応が好意を持ったようなものじゃないことから周りからそう囁かれた。
 本当にそうであったら良いんだけどな。
 絶対、帰ったらお礼と称して過剰なことが待っているんだよ……


 そんなひと悶着があったが、放課後の生徒が少なくなる時間帯まで校門での服装検査は続いた。

 そんな、活動があった日の放課後。
 いつも、俺が帰るタイミングに合わせて、約束もしていないのに一緒に帰ろうとしてくる若田部さんであったが今日は違った。
 調先輩の代わりに生徒会活動を仕切り、活動の終わりを宣言したときにそそくさと先に帰ってしまったのだ。

「どうしたんだろね。若菜ちゃん。いつもはヨシ君と帰ろうとしてるのにさ」
 俺を手助けする役目を解雇されたため、俺をフランクにヨシ君と呼ぶ波豆さんにもそう言われた。
 それほどまでに俺を置いて帰るのは珍しいことなのだ。

「一体何があったんだろうな」

「ま、気を付けなよ? 今日の放課後の初めらへんで言ってた通り、能力が少し不安定気味っぽさそうだったし」

「ああ、気を付けておく」
 と言ったように若干の不安定要素が若田部さんに見られるものの、先に帰った若田部さんを追うように俺と波豆さんも帰るのであった。なんで、追うようにかって?
 だって普通に帰り道が同じだからそうなるに決まってるだろ。

 そして、家に帰り玄関を開け家に入る。

「ふう、疲れた」
 服装検査の際にひと悶着あったせいでいつもより疲労感が凄まじい。
 リビングでダラダラと過ごし、その疲労感を取り除いていると、いつものように玄関のチャイムが鳴る。

「はい、神田です」
 インターホンのマイク越しに来客者に話しかける。

『神田君。私です』
 来客者はいつものように若田部さんである。
 そして、さり気に横には調先輩がいた。

「なんの用? てか、調先輩。体調は大丈夫ですか?」

『ええ、休んだらすっかりと良くなったわ』
 と言ったように熱中症気味は休んだことにより治ったらしく、意外にも元気そうである。

「で、なんの用で?」

『私は服装検査の時のお礼をしに来ました』

『私も保健室に連れ添ってくれたのを改めお礼しに来たわ』
 そう、二人とも俺がしたことに対してのお礼にやってきたのだ。
 別にこうしてお礼しに来るような程の事じゃないと思うんだが?

「で、お礼って何ですか?」

『私は料理を作ろうかと』
 そう言った若田部さんの手にはスーパーの袋が握られていた。
 しかも、それなりに袋の中に物が入っている様であり、どんだけ豪勢な食事を作る気なんだよ……。
 てか、先に帰ったのは今持っている食材を買うためだったんだろうな。

「調先輩は?」

『私はあなたに差し入れよ』
 調先輩はかき氷機とシロップを見せてきた。
 どうやら、暑くなってきたのでかき氷でもと思って持ってきたのだろう。

「……毎度の事思うんですけど、なんでそこまで二人はお礼とか、そう言うのは一段と凄まじいんだ?」

『当たり前の事をして何がいけないんです? このくらいの事をしなくちゃお礼にはなりません』

『そうよ。このくらいのお礼をしなくちゃ絶対にダメよ』
 両者ともに明らかに過剰気味なお礼にも関わらず、さも当たり前のようにそう言い切った。

「まあ、さすがに好意でしてくれることは無下にできませんし、良いですよ。今から、玄関を開けに行きます」
 こうして、わざわざしてくれるというのを無理に断るのは正直のところ、気が引けてしまうので仕方がなく今日はその好意を受け取ることにした。

 二人を家に入れるや否や、若田部さんはキッチンに立ち料理を始める。
 調先輩もそれを手伝い始めた。

「俺は何かすることはある?」
 二人がせわしなく動いているのが少し申し訳なく感じた俺はそう言ったのだが、

「お礼ですから、ゆっくりとしていてください」

「ええ、そうよ。あなたはゆっくりと休んでなさい」
 二人とも、強めに手伝わなくて良いと言ってきた。
 俺って、そんなにお礼されなくちゃいけない事はしてないと思うんだけどな……。


 手伝う必要はないと言われたのでリビングで色々としながらくつろいでいたのだが、気が付けば、ものすごい量のご馳走が出来上がりつつあった。
 明らかに三人で食べきれない量だ。
 そして、その量から本当に俺にお礼をしようという気持ちで作られた料理たちだという事が真摯に伝わってくる。

「どうして、こんなに過剰なんだろうな……」
 嬉しいのだが、こうも過剰気味だと逆に申し訳なさが湧いてくるんだよな……。

「……好木。その疑問の答えを教えてあげても良いわよ。でも、聞かない方が好木にとって都合が良いのは間違いないわ」
 どうやら、調先輩に考えていることを読まれたようだ。 
 やけに調先輩はまともな雰囲気を醸し出している。一体、過剰に尽くす姿勢に何が隠されているんだ?

「聞かない方が良いって……。でも、できれば聞きたいです」

「……わかったわ。じゃあ、話してあげる。そうしないとまた危なくなるもの」

 一体、過剰な尽くすという行動について何があると言うんだ? 
 ただのアプローチじゃないのか?



 
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