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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

二章

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看病編(神田好木)

 先輩から激励を受けたあの日。
 俺は右腕が使えない先輩を色々と助けてあげたことを語るとしよう。

「さてと、先輩がおかゆ以外が食べたいようなのでコンビニに行ってきます」

「胃を壊しておかゆで良いのなら別に私もおかゆで良いわ。体調を崩してもいないあなたが食べるにはおかゆとかは味気ないと思って、ああ言っただけで気を使わなくても全然平気なのよ?」

「いえ、別に大した手間じゃないんで行ってきます」
 と俺は家を出る。
 近くのコンビニに行き、先輩のリクエストを聞き、リクエストである唐揚げ弁当を買った。
 たしか、おかゆを買った時に貰ったプラスティックのスプーンがいくつかあるし別段とスプーンを貰う必要はないだろう。と店員さんにはお箸だけつけて貰った。
 え? なんで食べるものが必要かって? そりゃ、先輩の部屋に箸もスプーンもフォークもないんだから仕方がないだろ……。まあ、そのうち買わせるか、あげるかしなくちゃさすがにダメだろなんて思いながらコンビニを後にする

 そして、先輩の部屋に戻って来たのだが、

「さてと、おかゆを買った時に貰ったスプーンはっと。あれ?」
 しかし、スプーンは見当たらない。 
 記憶が正しければ、二、三本は絶対にあったはずなんだけど……。

「好木、どうしたのかしら。何か、慌ててるようだけど」
 調先輩がわざとらしく言う。
 あ、こいつ。捨てやがったな?

「はあ……。大方、そうすれば箸しかないから食べさせてもらえると考えてますか?」

「そんなことないわよ? でも、箸しかなければ左手じゃ使いいにくいもの食べさせて欲しいとだけ言わせて頂戴」
 やはりスプーンは調先輩が捨てるなり隠すなりしたようだ。
 仕方がない、甘やかすのもほどほどに食べにくいだろうが左手で箸を握って食べて貰う事にしょう。

「酷いわ。病人に慣れない左手で箸を持たせて食べさせる。もう少し、優しさを見せてくれも良いじゃないのと私は思うのだけど」

「いえ、先輩にもなんでも受け止めるのは良くないって言われたので仕方がありません」
 と俺は遠慮なく温めたお弁当と箸を調先輩の前に置いた。
 まあ、割り箸くらいは割ってあげるけどな。

「さてと、若干一名が冷たい気もするけど、食べさせて貰うわ」
 左手で箸を握り食事をし始める調先輩。
 多少ぎこちなく、何度かおかずやらご飯を落としているが食べられないわけではないのだが、

「……。これ、すごくイライラするわ」
 しかし、弁当の器を持つことが出来ずにいたせいで口に運ぶ前に何度もポロポロと落としてしまっているせいでかなりイライラとしている。
 そして、箸から物を落とす度に俺のことをチラチラと見てくる。

「なんです。その目は。てか、さっさと自分で隠したスプーンを出せば良いじゃないですか」

「それは無理よ。だって、全部こうだもの」
 砕かれたプラスチック製のスプーンを自身の服のポケットから出す調先輩。
 やっぱり壊してたのか……。

「てか、俺。おかゆを食べようと思ったんですけど。食べるために使う箸とかスプーンがないんですけど……」

「じゃあ、この箸を使って良いわ。別に箸で食べれなくはないでしょ?」
 絶賛使用している箸を貸してくれるらしい。
 まあ、キスしたりとかそう言うことを考えれば別にどうってことないんだけどさ。
 だからと言って、これ見よがしに箸をわざとらしくしゃぶるのは辞めて欲しいんですけど……。

「じゃあ、早く食べ終わってくださいよ……」

「無理ね。だって、こうも食べにくいと時間がかかってしまうもの」
 ちらっとこちらを見る先輩。 
 そこまでして、食べさせて欲しいのか?

「まあ、待てるから良いですけど」
 ここで折れてはだめだ。
 ついさっき、調先輩にさんざん言われただろ? 
 優しすぎてもそれはそれでダメだってな。

「いけずね……」
 調先輩はあきらめて慣れない左手で箸を使いながら弁当を食すのであった。

 そして数分後、食べ終わると箸を俺に渡してきた。

「この箸使うのか……」
 いくら、胃が痛いとはいえこれ以上空きっ腹にしておくのもダメであり。
 この場でおかゆを食そうと思ったのだが、食べるものがない。
 てか、おかゆなら別に温められれば器を傾ければ普通に食べられるな……。

 と思った俺は箸をおく。

「あら、使わないのかしら?」

「はい、よく思えばおかゆなら器を傾けて流し込むように食べれますし」
 俺は適当に買ってきた卵が入ったおかゆのレトルトをお椀に移し、レンジで温める。
 レンジで温めた後、恰好は悪いが器に口をつけ流し込むようにおかゆを食べ進めた。

「あまり、良く無い食べ方ね」

「誰のせいでこんな食べ方をしてると思ってるんですか?」

「さあ、なんのことかしら」
 と言ったような感じでとぼけながらも食事を終えるのであった。


 今日は看病すると言った手前、他に何かして欲しい事はないかと聞くと。

「このギブスが濡れないようにビニールを巻いて頂戴。さすがにそろそろシャワーを浴びたいわ」

「はい、良いですけど」

「じゃあ、頼むわ。後、好木もシャワーを使ったらどう? あなただって昨日からシャワーを浴びていないじゃないの」
 確かに言われてみればそうだけど……。
 いやいや、先輩の家でシャワーを浴びるなんて自殺行為に等しくて何されるか分からないのを考えると素直に先輩の好意を受け取れないんだよなあ……。

「別に覗いたりなんてしないわ。今日くらいは素直に振る舞うわよ……。散々、暴れた結果がこれだもの」
 折れた右腕を見せつけながら好意の裏に何もないと語る調先輩。
 相当に腕を負ったことを反省しているようだ。

「じゃあ、借ります。調先輩のその言葉を信じますよ」

「ええ、じゃあ。好木にギプスをビニールで覆って貰ったことだし先に浴びて来るわ」
 調先輩はそう言って浴室に行った。
 数分も経たないうちに調先輩はシャワーを浴びて戻ってくるのだが、

「髪を拭いてくれないかしら。無理にとは言わないけどものすごく片手でやりにくいのよ」 
 頭にタオルを被せてまだ髪を拭ききれていない調先輩が俺に頼んでくる。
 確かに拭きづらそうだし、そのくらいしてあげても良いだろう。

「わかりました。そのくらいなら別に良いですよ」
 先輩をソファーに座らせ後ろから髪の毛をタオルで拭き取っていく。
 女の子の髪なんて生まれてこの方弄ったことがないので丁寧に拭き取っていると、

「そこまで、丁寧にしなくても良いわ。もう少し、強めでお願い」

「わかりました」

 そうして先輩の髪の毛を拭きとるのだが、このくらいならと思って髪の毛を拭いてあげているが、先輩の髪の毛から漂うシャンプーの香りが割とドキドキとさせる。

「嗅ぎたいなら、嗅いでも良いわよ?」

「匂い大好きな先輩じゃありませんし、そんなことしないですよ」

「ふふ、それもそうね」
 髪の毛を拭きながらの何気ない会話。
 そのどこかに温かみを感じてならない。
 特段とすごいことをしているわけでもないのに、どこかほっこりとした感覚が周囲を包む。

「さてと、これでおしまいです」

「ありがとう、好木。さ、あなたもシャワーを浴びてきなさい。いつまでも、そんな匂いを漂わせていると顔を押し付けて嗅いじゃうわよ?」
 その発言はいつもだったら危機感を覚えるくらいだったが、今朝の一件を反省しているようで実際にやってくる気配は全然しない。

「そうですね。じゃあ、使わせてもらいます」

「ええ、タオルはあそこの棚に入っているのを使って良いわ。シャンプーもリンスもなんでも使って頂戴」

 そして、俺はシャワーを浴びる。
 途中、調先輩がやって来るとか色々と考えたものの、結局なにもされずに俺は体の汚れを落とすのであった。

「ふう、シャワーありがとうございました」

「じゃあ、私はベッドで休ませて貰うわ。体はだいぶ楽になったけど、やっぱり頭が少し痛むわ……」
 骨折ではなく、昨日からの体調不良を今だ引きずっている調先輩はそう言うと寝室に行き夕方なのにも関わらず眠りにつくのであった。
 こうして眠りにつくのなら、もう俺のお役は御免かと思っていたものの調先輩のことだ。
 今、帰ったらどうして帰ったのかしら? と怒られるに違いない。
 だって、遠回しにそれを伝えるためにこれから帰って家でシャワーを浴びられるというのに俺をここでシャワーで浴びさせたのだから。
 なに、まだ夕方だ。
 どうせ、このまま朝まで眠るわけじゃないだろうし、起きるまで見守らせて貰う事にしよう。
 ま、先輩が寝ているそばじゃなくてリビングでだけどな。

 すっかりと日が暮れてあたりが暗くなったころ、調先輩は寝室から出てきた。

「あら、まだいたの?」

「まあ、どうせ家にいてもすることはないですし、一応見守りを兼ねて」

「別に帰っても良かったのよ?」
 あれ? あのシャワーは帰るなって事じゃなかったとでも言うのか?

「ええ、ただ単に気が回らなかっただけ。あなたが家に帰ってシャワーを浴びられるという事まで気が回らなかっただけよ。さすがに、今回ばかりは本当にあなたに感謝しているもの。そんな、恩人に無理を言うわけにはいかないわ。変に思わせて、ここに残らせてしまったのを謝らせて頂戴」
 考えを読んだ調先輩はそう言った。
 なんだろう、今日の調先輩は若干の強引さを残しつつも結局引き下がってくれる。
 すごく、アリだなって思ってしまうのは俺だけか?

「ふふ、引き際を弁えるとあなたはそんなにも私に魅力を感じるかしら?」

「ま、そうですね。でも、どうせすぐいつも通りのあの強引な先輩に戻っちゃうんですよね?」

「ええ、当たり前よ。だって、シャワーを浴びられるというのに覗きたかったわ。でも、さすがに朝の一件を思えばふざけて強引にするのは気が引けてしまって手が出なかったの」
 腕をこれ見よがしに見せてきた調先輩。
 さすがに、これだけの大けがだ自重をしないわけはないようだ。

「そういえば、夕飯はどうしますか? 買って来いと言われれば買ってきますけど」

「お昼が遅かったし、後はあなたが買って来てくれたこれでも食べておしまいにするわ」
 俺がおかゆの他に買ってきた固形の手軽に栄養補給できるバランス栄養食、まあ某カロリーなんちゃらを片手に持ち買ってくる必要はないと言われた。


「ほかに何かしますか?」

「そうね、することはないわ。まあ、私が起きるまで待っていてくれたのは無駄だったというわけね。本当にごめんなさい。あなたも、疲れているでしょ? 家に帰ってゆっくりと休みなさい」
 俺を強引に家に帰らせようとする調先輩だが、それは俺に負担を掛けたことに対しいて引け目を感じているからなんだろうな。

「じゃあ、帰ります。先輩こそ、何かあったらすぐに呼んでくださいよ? 昨日のあの憔悴しきった状態にならないでください、普通に心配ですから」

「優しいわね。じゃあ、何かあったら遠慮なく頼らせて貰うわ。それじゃあ、おやすみなさい」

 こうして、調先輩の家から出た俺は帰り道であることを呟いた。

「今日の先輩。すごく、ドキドキしたな……」
 少し、スプーンを割ったりして食べさせて貰おうとか考えていたりとおかしなところもあったが、トータルで見れば素直な調先輩にどうしようもなくドキドキとしてしまったのだ。

「普段からああだったら良いのにな」

 とか、思いながら家に帰るのであった。


 

次は若田部さんが看病する予定
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