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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

二章

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間延びしたデート

 若田部さんに連れられてやってきたのは公園。
 とりあえず、そこら辺のベンチに座っている状況だ。
 デートなのにそんな手軽に来れるような場所で良かったのだろうかとか思いながらも若田部さんには若田部さんなりのデートプランがある。
 俺はそれに付き従うまでである。

「ふと思ったんです。こうした間延びしてしまうようなデート場所で何気ない会話を繰り広げられるのこそ真の恋人だと」

「まあ、恋人じゃないけどな」
 そう、俺は若田部さんと付き合った記憶などない。
 なぜか、勝手に恋人みたいに扱われている。それを甘んじて受け入れれば本当に怖い体験が待ち受けていそうでこうして否定は毎回している。
 だってさ、否定しなかったら、否定しませんでしたよね? とか言ってすでに恋人だと思われそうだからな。

「さてと、公園に来たのは良いですけど、することがないです」
 何だろう、遠回しに楽しませろみたいな雰囲気を感じる。
 いやさ、そりゃ公園だもん。デートで来たとしてもそれこそ他愛のない会話を繰り広げるか、手軽なスポーツをして楽しむくらいしかできない。
 手軽なスポーツをするにも道具はないし、結局他愛のない会話をするしかないんだけどな。

「なあ、若田部さん。若田部さんって俺のどこがそんなに好きなんだ?」

「嫌いにならないところです。嫌気や、気まずさ、不満、そう言ったことを見せますけど、結局は嫌いにならないでいてくれるのが好きです」

「嫌いにならないってそんなにすごいことか?」

「ええ、そうです。最近でこそ、超能力とうまく向き合い、ほぼ使わないで日常を送ることで高校ではお友達もできました。でも、小さいときは考えも未成熟でしたし、能力を使ったはっきりとした物言いをすることも多かったんです。だから、周りから嫌われましたし、それを直そうとしても噂が先行しました」
 今でこそ、超能力を正しい使いどころで使えるようになったものの、子供の時はそう言うわけにはいかない。自分の持ちうる力を使いたい、自分は他人とは別の力を持っていて優れている。
 そうしたことが思考の根底にある。
 だからこそ、周りから浮くし、爪弾きにされてしまう。

「まあ、そうだな。俺も中学のときに調子に乗って超能力を使ってさ。大きな問題を起こした。高校生で言うのはまだおかしいかもだけど。やっぱり思考が未成熟でそれを気づけないせいで爪弾きにされるんだよな……。もちろん、それ以外でも爪弾きにされる理由なんて山ほどあるけどさ」

「はい、そうです。少し、昔の話をしても良いです?」

「ああ、良いぞ」



 小学校一年生になった時の若田部若菜はまっすぐで自身が嘘を見分ける能力を持っているせいか、人一倍正義感が強かった。
 小学一年生ともなればまだまだ空気を読むことなど到底できず、はっきりと嘘を付いたら、嘘を付いたでしょ? と間違いを正していた。
 例えば、いたずらをして知らんぷりをして嘘を付いて否定する子が現れればその子を嘘つきと言って、なんでいたずらをしたことを認めないの? と言った感じで問い詰めると言ったような事だ。
 そして、そんなことを続けていれば当然嫌われる。
 自信がやましく思い嘘を付いたことをわざわざ指摘される、それが鬱陶しくないわけがない。

 こうして、一年生の時からゆっくりと若田部若菜は嫌われ始める……。

 年を重ねるごとに自身が嫌われていく原因に気が付いた。
 そう、相手が嘘を付いたことをわざわざ正す、それが嘘を付いた当人にしてみればうざったくて仕方がないと気が付いたのだ。
 些細ないたずらで、目を瞑る程度でも嘘を正していた。
 ゆえに、若田部若菜に嘘を指摘されうざったく思っている人は想像以上に多く生まれたというわけだ。
 そんな若田部若菜に嘘を指摘されうざったく思う人同士の中で出来上がった人物像。

 それは『正義感が強いだけの勘違いで空気が読めない子』

 それに気が付いて、程度の低く本当に些細ないたずらなら若田部若菜は目を瞑るようになった。

 しかし、遅かった。
 すでに若田部若菜の回りに友達と呼べる人物はいなくなっていた。
 勿論、いじめられているわけではない。
 ただ、距離を置かれ近づいて貰えなくなっただけである。

 それでも、学校は広い。
 クラス替えでそう言った自身の噂を知らない事仲良くなることを夢見ながら小学三年生になった。

 クラス替えが行われた当初は周りの子に積極的に関わり、仲良くなろうとした。
 最初の内は皆仲良くしてくれていたのだがすれでも、少なからず噂は尾を引いた。
 その直接的な原因は前年度同じクラスで今年も同じクラスになった生徒が言った言葉。

『あの子、嘘つくとすぐに嘘つきって罵ってくるから、近づかない方が良いよ』
 軽く周りの子に言ったのだ。

 だが、そのくらいじゃ流される子は少なかったのだがある事件が起きた。

 盗難事件だ。
 盗まれたのは当時話題になっていた卵型ペット育成ゲーム機。
 勿論、学校に持って来て良いものではなく、盗難被害を出すのは恥でしかない。
 だが、小学校三年生ともなれば自身の間違いよりも他人の間違いを強調したいお年頃。
 持ってくるのがダメであるというのに、盗まれたことばかり目が行き、当時通っていた学校で嘘が分かる超能力者とバレていた若田部若菜にこういった。

「一生のお願い。犯人を捜して?」
 そう言われた。
 小さき嘘は目を瞑る。
 その姿勢を取っていた若田部若菜だが、盗難事件ともなれば正義感は働く。
 盗むことはダメ。そう認識していた若田部若菜は快く犯人捜しを手伝うことにした。

 しらべる方法は簡単。
 クラスメイト達に
『盗んだ?』
 と聞き、はい、いいえで答えて貰うだけだ。

 これが大いに間違いで、このせいでより一層嫌われしまう。

 そりゃ、盗んだ覚えがないのに犯人かのように扱われるのは普通に嫌な気持ちでしかない。
 ましてや、持ってくるのがダメな卵型ペット育成ゲーム機。
 盗まれたほうが悪いと思っている生徒が大半の中、そんな事をしてしまった。

「人を犯人って疑うのは最低だよね」
 そうした意見が囁かれるようになる。
 数日かけて数人に聞きまわり、いまだ見つからない犯人を捜し続ける日々なのだが、最悪なことが発覚する。


「ごめん、若菜ちゃん。盗まれてなかった。部屋の隅っこに落ちてた」
 盗難は勘違い。
 実は盗まれていなかったことが発覚した。

 いない犯人を捜していただけであった。
 そして、犯人扱いされた皆に謝って許してもらうも前年度と同じように距離を置かれるようになるかと思いきやそうはならない。
 さすがにそれで皆の怒りは治まらなかった。
 ゆえに虐めが始まった。
 犯人扱いされ気を悪くした人たちに上履きを隠されたり、急にどつかれたり、様々なことをされた。

 でも、卵型ペット育成ゲーム機の持ち主の子は若田部若菜にこういった。

「ごめん。私のせいで……。私は絶対に若菜ちゃんとずっと友達だから」
 嘘は言ってない。
 彼女の超能力は嘘を見分ける力。
 それが嘘ではないとしっかり理解でき、虐められてても『ずっと友達』そう言って貰える子が出来るのが何よりもうれしかった。

 ずっと友達と言ったこの言葉に偽りはなく、若田部若菜をいじめている子が

「そんな子をかばうとあんたも虐められるよ?」
 と言ったのにも関わらず若田部若菜と友達であり続けた。

 そんな、友達であり続けてくれる子に感謝している若田部若菜は嫌われないように尽くす。
 給食のデザートをあげたりとか、宿題を代わりにやってあげたりとか。
 本当に色々なことをした。

 尽くし続ける日々が続くにつれ、若田部若菜に『ずっと友達』と言った女の子は嫌気を覚えた。
 まあ、嫌気を覚えたからと言ってすぐに離れていくわけではなく、嫌気を覚えてからもそれなりに長い期間友達の関係性は崩壊しなかったし別れるまで友達であり続けたのだが、時々若田部若菜に尽くされて嫌な顔を見せるようになった。
 その顔が若田部若菜を不安にさせた。
 もしかしたら、離れて行ってしまうかもそう意識させさらに尽くすことをエスカレートさせていった。

 そんな時に若田部若菜に『ずっと友達』と言った子が転校することが決まる。

 結局、仲良くなるために尽くすことを分かっていたため『ずっと友達』と言った女の子は最後まで若田部若菜の尽くすという姿勢をはっきりと否定できなかった。
 ゆえに、彼女は友達とは尽くす存在だという思い込みを強く抱いたまま過ごし続けることとなる。

 友達は尽くせば尽くすほど仲良くしてくれると勘違いした彼女はクラス替えが行われるたびに、知り合った新しいこ子と友達になろうと尽くすのだがその子にこういわれる。

「それ、うざいから」
 だが、若田部若菜は尽くすのをやめるのではなく、尽くす方法が悪かったと勘違いした。

 だから、尽くすことを間違いと思わなかった彼女は、何度も何度も繰り返して尽くしては嫌われ、新しい子に尽くしては嫌われるを延々と繰り返す。

「ありがとう。若菜と友達で良かったよ」
 なんどもそう言われて、好意を抱かれるも

「ごめん、若菜うざい。友達としてそれはない」
 と言ったようになんども嫌われた。

 嘘は言っていなくても、次にあった時それが嘘になってしまう。
 当然彼女を大きく傷つけるが、彼女は嘘に変わったとしてもそれは仕方がないと考えて嫌われる辛さを耐え忍ぶ。

 だが、仕方がないと割り切るもそれは辛いものであった。
 そんな辛さを割り切るための魔法の言葉『尽くすのが足りなかった』
 それを胸に彼女は友達を作ろうと多くの人に話しかけては何度も嫌われて言ったというわけだ。

「こんな感じです。で、電車の中で神田君と出会って、神田君にも尽くして仲良くなろうとしてたんですけど、あの時尽くすことを否定されました。でも、否定したうえでこれからも友達でいようって言ってくれたのは神田君が初めてです」

「そうなのか? 聞いた感じ何度も何度も嫌われてるみたいだし、そん時に何か言われたりしなかったのか?」

「いえ、言われませんでした。すでに、嫌いになってるんですよ? そんな人が親切にそこまではっきりと伝えてくれると思いますか?」

「まあ、無理だな。すぐにかかわるのを辞めたいだろうしな……」

「まあ、神田君に否定されてからは本当に尽くすのを辞めたんですよ? で、そのおかげでクラスの子たちとは上手く良い関係を気づけました。まあ、最初は尽くす以外のことが分からなくて私から距離を置いちゃってたんですけどね。でも、浅草のあの時、尽くす以外で勇気を出して関わって仲良くなれました」

「それは良いことだ。できれば、俺にも過度に尽くすのは辞めて欲しいんだけどな」

「いえ、それは無理です。だって、神田君を好きですからやめられないです。調先輩もいますし、こうして尽くすことで私の存在をアピールしないとダメなのでこれからもどんどん尽くします!」

 と言ったように普通に近づいているものの、俺に対しては尽くす姿勢を辞めないとはっきり伝えられるのであった。
 いや、尽くされるのは別に良いんだけどさ、本当に過度すぎるのが問題なんだよな……。





 
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