挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

一章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

34/110

地獄の二日間1

 家電量販店でパソコンを購入し、俺の家で作業をし始めたのは良いものの。

「このペースだと間に合わないな……」
 そう、整理されていないせいで、いくつもの書類を跨ぎ、作業時間が途方もなく膨大に膨れ上がっている。
 まあ、実際にはこの作業時間はすでに打ち込んで終わらせているのだが、その時は時間に余裕があったので苦しくも、時間が足りないとも思いやしなかった。

「ええ、書類が整理されていないのが辛いわ」
 ひたすらに各部の予算をパソコンに打ち込み表にしていく。
 地味で辛い作業であり、三人がかりでも全然進んだ気がしないし、元々が紙媒体であるため、読みにくいのにぶつかるだけで本当に気が滅入る。

 部活動の予算管理をひたすらに打ち続けること早数時間。

「もう、こんな時間ね……」
 時計の針は真夜中を示していた。
 俺達は休憩を適度に挟みながらも、気が付けば夜更けまでデータを打ち込みし続けていたと言うわけだ。
 一つあたまの部活動を打ち込むのに40分かかる。
 お金に関わる重要な書類なので、打ち間違えてはいけないので早く打つことはできず、これ以上のペースアップも厳しくなっている。

 それでいて、蝶野高校の部活数が多いため終わる気がしない。

「どうします。作業を続けますか?」
 だが、眠気も相当なもので作業速度も正確性も落ちつつある。
 もし、仮に打ち終わったとしても間違いだらけの欠陥品になってしまいそうで非常に怖い状況だ。

「少し、寝ましょうか。さっき、若田部さんの方を見たのだけど打ち間違えが多くて直すのが二度手間になりそうだったわ」

「わかりました。若田部さんは……」 
 と、やけに会話に割り込んでこなかったなと思ったらすでに眠ってしまっているようだ。
 無理な姿勢で体を痛めてしまうのも困るし、ベッドに運ぶとしよう。

「というわけで、あのベッドを使って良いですから」

「嫌よ。あれは私と好木のよ。若菜さんと使うつもりはないわ」
 そう、まったく自重しなかった先輩は俺のベッドを大惨事にした二日後、先輩は急に俺の家にやってきてあることを伝えてきた。

「今日、あの時のお詫びが届くわ。きちんと受け取ってくれるか、確認しに来たの」
 と言われ荷物が届くのを外で待たすのもあまり良くないと思い、仕方がなく家に入れた。
 調先輩と待つこと数時間。
 来客を知らせるチャイムが鳴ると、家主である俺でなく調先輩が玄関に行った。
 それに追従する形で後ろを追い、玄関に出ると。

「お願いします」
 宅配便の人? に調先輩が言うと、トラックの荷台から大きなものを下ろし始める。

「こっちの部屋です」
 と荷物を下ろし始めた人に調先輩は俺の家で使われていない部屋を案内した。

 そして、大きなものは複数回によって運ばれて、その場で組み立て始められる。

「あの、これって。もしかして……」

「ええ、ベッドよ。汚してしまったのだからお詫びとしてあげるわ」

 目の前に出来上がったのは楽々と二人が寝れる大きさなキングサイズのベッドであった。

「一つ言って良いですか? 限度ってものを知ってください」

「そうね、限度を知ったわよ? あなたのベッドのサイズじゃ致している最中に転げ落ちてしまうもの。だから、お詫びを兼ねてそうならないようなのを選んだの」
 そう言う事じゃないんだよなあ……。

「お疲れ様です。これで、失礼します」
 と業者の人が去ろうとしたので

「すみません。お金は払うんで返品をしたいんですけど……」
 ここで、自由にされてしまってはこれから先も思いやられると思い。
 設置し終わって一安心して帰ろうとしていた業者の人に行ってみたが、

「すみません。この後も予定があるので後日サービスセンターの方にお電話ください」
 そう言われてしまう。
 だよね、直ぐ持って行って貰うのだって向こうに都合があるだろうし無理だよな……

「そうよ、あなた。恥ずかしがらなくても良いじゃない」
 調先輩が新婚夫婦みたいに言ってきたのが、ものすごくうざい。
 マジで怒ってしまいそうだ。

「じゃ、失礼します」
 そして、やはり先の予定が詰まっているのか業者は去って行ってしまう。
 勿論、家主なので玄関まできっちりと見送り、その後キングサイズのベッドが置かれた部屋に戻る。

「あの、いい加減にしてください」

「……。今回は本当に怒ってるのね……ごめんなさい」
 そう、今回ばかりは本当に怒っている。
 考えが読める先輩は本当に俺が怒っていることを理解しているはずだ。

「とりあえず、これは返品します」

「本当に怒ってくれるのね……。真に怒られたのなんていつぶりかしら。ごめんなさい、今回は全部私に非があるわ。だから、このベッドの始末はきちんとさせて。こっちが、業者に電話を掛けるから……」
 しみじみとして調先輩はそう言った。

「それなら、信じて良いんですか?」

「ええ、きちんと処分させて貰うわ。本当にごめんなさい」

 だが、しかし。
 処分の手配などしてくれずにそのまま放置された。

 ゆえに、俺の家にキングサイズのベッドがあるというわけだ。

「この大きさなら別にぶつからないように二人で寝れますよね?」
 そんなわけで、せっかくあるのだから使って貰おうという事だ。

「はあ、仕方がないわ。そうさせて貰うわ。若菜さんをあなたに運ばせるのは嫌だから私が運ぶことにしようかしら」

「持てるんですか?」

「ええ、人一人くらいなら余裕よ」
 若田部さんの脇に手を入れ、ずるずるとキングサイズのベッドが置いてある部屋に引っ張られていく若田部さん。
 その後ろを付いて行く。
 調先輩の姿はまるで死体を運んでいるようで、引きずられている若田部さんが起きないというのもシュールで笑えて来る。

「ふう、これで良いわ」
 無事、調先輩は若田部さんをキングサイズのベッドに寝かせることに成功する。

「じゃあ、先輩もここで寝てくださいね。絶対に来ないでくださいよ?」

「ええ、分かったわ。でも、その前に何か寝巻を貸してくれないかしら? ごらんのとおり、何も考えずに来てしまったもの。制服しか着て来てないのよ?」

「じゃあ、ちょっと待ってください」
 俺はリビングに行き、戸棚からあるものを取り出す。
 それを持ち、調先輩のもとに戻り渡した。

「これは、女物のパジャマね」
 服を奪われるの忌避するために買っておいたのだ。
 家に来るたび、服を奪われてはたまったものじゃないから用意したのだ。

「ええ、これで俺のを使わなくても大丈夫ですよね?」

「そうね……」
 渡したパジャマを握りしめ下を向いている。
 そんなに俺の服を着る口実が無くて悔しいのだろうか?

「じゃあ、それに着替えてくださいね。下着とかはさすがにないんで我慢してください」
 いまだ、下を向いている調先輩に言って去ろうとした時だ。

「ありがとう。何よりも、嬉しいわ」
 なぜか、涙していた調先輩がいた。

「あの、どうしたんですか?」

「こうして、人から物を貰うのは久々で嬉しいのよ。だって欲しいものは普通に買えたけど、貰う機会はなかったもの。こうして、ものを貰えて嬉しいわ」
 大事そうにパジャマを抱えている調先輩。
 その姿は思いもしなかった。てっきり、悔しがられるかと思っていたのでなんだか微妙な気分になる。
 だが、それと同時に嬉しがる調先輩を見てどこか心がほっこりとしてしまう。

「じゃあ、俺は自分の部屋で寝るんで」

「ええ、本当にありがとう。おやすみなさい」

「あ、ああ。おやすみ」
 やけに素直な調先輩。
 物を貰って嬉しがる先輩を見て、俺もまたいい気持ちになる。
 だって、あそこまで大事そうに抱えてくれる姿は、パジャマをあげて良かったと心底思うんだからな。

 だが、同時に悲しさも覚えた。
 調先輩があそこまで喜んだ理由は……人からプレゼントを貰うのがほとんどないから。

 それが、先輩の人とのつながりの希薄さをどうしようもなく感じさせたのだ。

「さて、俺も寝よ」

俺は少しでも先輩が人とのかかわりを持てるべく、頑張ろうと思いながら眠りにつくのであった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ