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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

一章

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特別視(重すぎる愛)

 若田部さんが生徒会に加入して以来の俺の朝はこのようなものだ。
 まず、目覚ましをセットしているのだが、
 ピンポーンと家に来客を知らせるチャイムが鳴る。最も、俺が寝ている部屋から少し遠いので聞こえる音は小さい。
 そのため、気が付かずに眠っていると、

 ガンガンガンと玄関のドアを叩かれる。
 一日目の朝は何事か? と思って慎重に動いたものの、犯人は若田部さんであった。
 そう、第一に生徒会活動を行うようになったため若田部さんと同じ時間に登校することになったため、起こしに来るようになった。

「おはよう」
 今日は玄関を叩かれる前に俺は起きることが出来、間の抜けた声でやってきた若田部さんに挨拶をする。

「はい、おはようございます」
 そして、若田部さんは俺の家に上がり込む。
 え? 今まで、若田部さんや調先輩を家に入れることを拒んできたのにどうして入れるかって?

 だって、じゃなきゃ俺の家の前で俺が出て来るまで待ち続けるんだよ……。

 最近でこそ、俺が人目を気にしすぎだったと理解しているけどさ、女の子を玄関前で俺が身支度を整える最低でも20分近い時間の間、待たせるという事は普通に目立つはずである。

 だから、家に入れざるおえないのだ。
 そして、家に入った若田部さんは朝ご飯を作り始める。
 この点に関しては俺が悪い。
 墓穴を掘ったせいで若田部さんが毎朝俺の家のキッチンで朝食を作ることになった。朝食を作るようになった経緯をさかのぼるとすればこのような感じだ。

「神田君は朝ご飯は食べないんです?」

「いや、若田部さんが一緒に登校するためにやってきているから、なんか待たせるのも悪いし」

「いえいえ、そんなの気にせずに食べてください。私はなん時でも待ちます」

「そう言われてもなあ。一人だけ、食べるのは気が引けて」

「じゃあ、私もここで食べて良いですか?」
 確かに一人で食べるのは気が引けるし、その方が良いのか?
 なんて思った俺はつい口走ってしまった。

「それなら、別に良いけど」

 こうして、俺と若田部さんは朝食を共に取ることになる。
 そんな時だ、朝は軽くパンで済ませていたのだが、そのパンだけである朝食の少しばかりの侘びしさについてこういった。

「パンだけじゃ、寂しくありませんか? スープでも作りましょうか」
 と言ったのだ。

「いや、それは申し訳ないから大丈夫だ」
 これ以上、若田部さんに距離を詰められてはいけない。
 そう思ってしっかりと断った。
 若田部さんは迷惑だと言えば、案外素直に言葉を受け入れてくれていたのだが、好感度が上がったせいなのか知らないが。

「私の朝ご飯としてスープを作ったんですけど作りすぎちゃって……」
 と強引に物事を推し進めるようになってきているのだ。
 距離を詰められまいと俺はせっかく作って貰たものを受け取るのを拒否した。

「じゃあ、もったいないので全部飲みます」
 明らかに二人分を勿体ないと言って食べ始める。
 そして、食べ終わる頃には苦しそうにしているのだ。
 そう、俺が食べなかったから、こうして苦しんでまで食べているんだぞ? と言わんばかりに苦しんでまで全部食べ干すのだ。

 それが、毎日続いた。
 そんな、苦しそうに食べ続ける姿を俺は見かねてとうとう俺の方が折れ、

「今日は貰う」
 と若田部さんの作ってきた料理を食べることになった。
 そして、それはどんどん芋づる式に膨れ上がっていき、最初はスープとか副菜とかであったのだが、気が付けば全くもって全部の朝食を作られている。
 さらにはいちいちタッパーで持って来たりする手間があるせいか、いつの間にか俺の家のキッチンが使われるようになった。

「そろそろ、できますよ」

「ああ、分かった」
 とまるで夫婦さながらな朝食を頂くことから俺の朝は始まる。
 だが問題もあり、疲れている日に精力が付くものを味を鑑みないで作るのが、本当に嫌である。
 だって、朝からすっぽんを出されたときはマジかよ……とか思いながら食べ渋っていたら、家を出る時間になってしまったのだが、食べ終わるまで俺は席を離れることを許してくれなかった。
 そう、強引さに強制的が含まれるようになってきているのだ。

 そして、朝食が終わると若田部さんも朝食を一緒に食べたので歯磨きをするのだが、洗面所にある俺の歯ブラシが使われる。
 さすがに口内の汚れを落とすものだ。共用するものではないし、きちんと若田部さん専用のも用意してある。なのに、隙を見せれば俺のを使われるのだ。

 正直に言おう。マジで辞めてくれ……。
 あ、ちなみに隠して使われないようにしてみたが、すぐに見つけられるので意味がなかった。
 加えて、鍵付きのところに隠しても鍵を見つけられるのでこれまた意味がなかった。

 そして、なんだかんだで家を出るのだが、
 隙あらば、俺の横を詰めてくる。肩と肩が触れ合うくらいまでの距離を詰めて歩こうとしてくる。
 これまた鬱陶しい。ただ単に鬱陶しい。

 このような感じで毎日、学校に登校するようになったのだがマジで一人が良いなって思う。
 だって、若田部さんの行動はまるで長年付き添ったいわゆる晩年の関係。そんなのを出会って数か月の俺に押し付けてくるのは居心地が悪いのだから。

 そして、生徒会に入ったことにより登校する時間も同じになったのと同時に下校する時間も同じになった。
 その結果。

「帰りましょうか。そう言えば、今日の夕ご飯で悩んでいるんです。何が良いでしょうか?」
 帰り道。何気なくこの聞かれる発言。

「熱くなってきたし、冷たいものが良いんじゃないか?」

「そうですか……。じゃあ、冷たいものを作りますね」
 そう、俺が食べる前提でことが進んでいるのだ。
 俺は一度も食べるとも言っていないのに関わらずに作られる夕食。

 日に日に日常を侵食されていく、それが結構なストレスを俺に押し付けてくるのと同時にこのまま若田部さんに身の回りのことを握られていくことに対して楽さを感じてしまう。
 そんな雑多な気分で若田部さんからのご厚意を受け取るのだ。

 とうとうストレスが限界に達し、俺は言う。

「ごめん。なんと言えば良いんだろうか。さすがに一人の時間が欲しい。一人でゆっくりと気ままに夕食を取りたいから今日は遠慮させてくれ」
 さすがに一人でゆっくりと過ごしたくなりそう言った。特に若田部さんは尽くしてくる姿勢が重苦しい。ゆえに気ままなひと時も欲しいのだ。

「はい。それがどうしたんですか?」

「だから、一人の時間が……」

「だから、どうしたんです?」
 威圧的な若田部さん。
 お前は何を言っているんだと言わんばかりの雰囲気で言われ、俺の要求を受け入れてくれない。

「ごめん。正直に言うと、少しストレスが……」

「いえいえ。少しのストレスくらい平気です」

「てか、若田部さんこそ。最近、俺に尽くしてばかりで良いのか?」

「はい、良いです」
 うん、ダメだ。
 完璧に悪化してやがる。
 もはや、俺がダメだと言っても行動が止まらなくなってきている。

「頼むから、もう少し距離を取ってくれ。ほら、近すぎてもダメだってよく言うし」

「いえ、絶対に離れないと約束してくれましたよね?」

「でも、

「でも、なんですか? なんで、私を避けようとするんですか? どうして、私を拒むんです? 言いましたよね? 絶対に離れないって」
 やばいなあ……。
 好感度上がりすぎて完璧にこじらせている。
 俺は一体どうすれば良いんだ?

「お困りのようね。好木」
 そんな時だ。
 後ろから、調先輩の声が聞こえた。

「調先輩」

「最近、好木がストレスをため込んでいるのはやはり若田部さん。あなたの所為よ。甘えるのもいい加減にしなさい。それがどれだけ好木に負担を強いているのか分からないのかしら?」
 はっきりと調先輩が言ってくれた。なんと頼もしいのだろう。

「そ、それは……」
 第三者からもそう言われて、少しばかり自身の考えを改めているように見える。

「だから、毎日、甲斐甲斐しく好木に構うのは辞めてあげなさい。本当に嫌われるわよ?」

「でも、やっぱり思ったんです。仲いい人が出来つつある今、やっぱり神田君は特別ですし、もっと尽くして好かれないとダメだと感じるんです」
 ああ、俺と周りをよりいっそう差別化を図ろうと最近は甲斐甲斐しく動いていたのか……

「だから、それが行き過ぎているという事よ。さすがの私も最近のあなたは擁護できないわ」
 先輩……今日ばかりは本当に頼もしいです。
 でも、後で助けてあげたんだから何か対価を頂戴といわれるんだろうなあ……。

「擁護できないですか……。でも、神田君は絶対に離れないって約束してくれました」
 あのさ、俺の言葉を過信しすぎじゃないか? 

「いや、離れないって言ったけど。嫌いになったら離れるからな?」

「そうなんです? やっぱり、神田君も心変わりするんですね。その場限りで『はい』と言って後で平然と裏切る。だったら、神田君。一緒に……」
 何だろう、とてつもなく嫌な気が……

「今、死にましょう。変わる前に、変わってしまう前にそれを真実に止めておきましょう」
 ……うん、こうなることが分かってたけどさあ。
 だから、極力距離を詰められて思考が過激的になるのを防ごうとしてたんだよ。
 さて、どうしたのものか……。

 そんな時だ、調先輩が軽く耳打ちしてきた。

「好木、見捨てないことをはっきりと分からせればきっと若菜さんはこの場は引くわ。だから、どこかにキスでもしてあげなさい。頬でも手の甲でも、でこでも、どこでも良いわ。そうすれば、一時の安寧は手に入るはずよ。こういう輩には明確に見捨てないとアピールすればちょろいのよ」
 一時の安寧。それが非常に不安要素でしかないが、この場をどうにかするには先輩の言う通り、俺が若田部さんのことをきっちりと思っていると知らしめること。
 それを効果的に示すのはやはり行動である。だから、どこかにキスをしろと言ったのだろう。

「若田部さん。手を貸してくれ」

「はい? 良いですよ。どうせ、死ぬんです。死ぬ前にはなんでもいう事を聞きます」
 手を俺の前に出した若田部さん。
 俺はその手の甲に軽くキスをした。

「簡単に死ぬなって言うなよ。これからも、楽しいことがたくさんあるんだからさ。でも、さすがに俺も一人の時間が欲しい。頼む、たまにで良いから一人の時間をくれ」
 あれ? なんで俺が頼んでるんだ?
 普通に構図がすでにおかしいのは気のせいか?

「もう、神田君。そんな風に頼むなんてずるいです」
 そして、調先輩の言う通りちょろい若田部さん。
 ちょろすぎて心配になるくらいだ。
 だが、そのちょろさはやはりあまり周囲から愛されていなかったせいなんだろうな。

「じゃあ、」

「はい、今日はおとなしくして、神田君の家にご飯をつくりにはいきません。一人の時間が欲しいのは当然です。だから、今日はもう失礼します」
 と無事に考えを改めさせ、事を終えることが出来た。こうして、一時の安寧を手に入れたかと思いきや。

「助けたあげたのだから、対価として今日あなたの家にご飯を作りに行かせてもらうわ」
 若田部さんがおとなしく去っていった後、調先輩が俺にさも当たり前な顔で要求してきた。
 あれ? 何だろう。
 今までのやり取りが一瞬にして水の泡と化したのは俺の勘違いだろうか。

「いや、その」

「あら、助けてあげたのに何もお礼をしてくれないのかしら? だったら、次は助けないわよ? それで良いのかしら。最近、あの子。あなたをどんどん、特別視し始めているもの。今後、もっと過激な行動をされるかもしれないわよ?」
 調先輩も調先輩でめんどくさい。
 俺の平穏はどこへ行ってしまったのだろう……。

「わかりましたよ。来て良いです……」
 しかし、調先輩の助けがなければきっと俺はこの先、生き残れない。
 ゆえに先輩の言うことを聞くしかないのだ……。
 
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