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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

一章

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踏み出す勇気

 東京駅を気ままに散策した俺達二人はそこらにあった喫茶店に入っている。
 少し散策をして疲れたからだ。ちょうど小腹も空いていたのでケーキセットを頼んで優雅なひと時を送っていると言ったような感じだ。

「さて、とりあえず。他に行きたいところはあるか?」

「いえ、割ともう満足しました」
 確かに色々なお店に行ったし、これ以上行くところはないなと俺も思っている。

「さて、どうしたものか。もう、帰るか?」
 と聞くと同時にだ。

「はあ……」
 若田部さんが大きなため息を吐いた。
 どことなく、悲しさを感じさせるもの。

「どうした?」

「いえ、本当にこれで良かったのかなと。もし、あの時、帰りますと言わないで微妙な雰囲気でもう少し踏み込めていたのなら仲良くなる機会があったのかもと思っているんです」

「確かにそうだけど……」

「私、思ったんです。雰囲気が悪いから、空気を読んでとか、そんなことを考えている内は友達なんてできないんじゃないかって。嫌われる覚悟で積極的に触れ合って行かないとダメなのかなって」
 紅茶が入ったカップをスプーンでぐるぐるとかき回しながら言う若田部さんの姿。
 その姿が切に周りとの関係を再び持とうとしているのが感じられた。

「でも、それで嫌われたら」

「その時はその時です。正直に言うと、今日は楽しかったのは楽しかったんですけど、友達と遊びに行くような馬鹿げた楽しさじゃなかったです」

「確かにそうだ。デートみたいなもんだし。楽しさの方向性は若干違うよな」

「はい、そう言う事です。こうして、無邪気に友達と遊んでいられるときは少ないですし。だから、悔しくて悲しくて仕方がないんです。神田君にもう一度、気の知れた友達を作れと言われてから日に日にその思いは大きくなってきて」
 若田部さんが何を言いたのか、若干分かってきた気がする。
 きっと、若田部さんが言いたのは……

「だから、全力で向き合って良いですか? 嫌われる覚悟で周りに話しかけても良いですか? 一歩踏み出して砕け散っても文句は言いません。だから、」

「そうかもな。俺達は心の底で嫌われないように嫌われないようにと受け身であり続けた。そこが悪くて、もう少し周りに話しかけて自分を知ってもらおうという努力を一切しなかった。特に俺なんて噂が流れてからは周りに否定するために大きな声で俺はやってないと言わなかったのが悪い」
 そう、俺達はどうしようもなく臆病だ。
 今思えば、嫌われているから、嫌われたくないから、と受け身になりすぎていた。
 そう言った受け身である内は真に気の知れた友達などできるはずがない。

 だから、ここで踏ん張らずしてどうしたものか。そう、俺は周りから白い目で見られ初めて何をした? いや、何もしていない。それがダメなのかもしれない。
 このままで居たくない。今日の散々な結果が俺を奮い立たせた。

「はい、なので。踏み出します。でも、それが怖いんです。だから、言質を取っても良いです?」
 覚悟を決めるための一歩を若田部さんは踏み出そうとしている。
 だったら、俺も踏み出そうではないか。

「ああ、なんだ?」

「もし、周りからどうしようもなく嫌われても神田君は私のことを見捨てないでくれますか?」

「ああ、もちろん。俺こそ、もし俺が罵倒されたり白い目で見られる以上に嫌われたとしたら、若田部さんは俺から離れて行かないか?」

「はい。って、なんか中二病っぽいですね」
 と互いに宣誓したことに対しての発言の臭さにクスクスと笑う若田部さん。
 その気の抜けるような雰囲気が肩の力を抜き、俺にやる気をくれる。

「俺、明日。周りのみんなに俺は生徒会室で性行為に及んだという事を思いっきり否定してみる」

「はい。私は積極的に話題を振ってみようと思います」

 そう、俺達は突っ走しっても大丈夫な後ろ盾がある。
 だから、逃げるのはもうやめだ。
 いつか、普通の学校生活に戻れればなんて考えじゃなくて今すぐに戻らなくてはと考えを改める。

「あの、やっぱ。来週からじゃダメです?」 
 ちょっとびくついた若田部さんが雰囲気をぶち壊すのであった。


 そんなことがあった次の日。

 俺は学校に入るや否や先輩との噂が流れる前、仲良くなりつつあった連中に挨拶をした。

「おはよう。悪いな、変な噂を流されているせいで俺のせいでクラスの雰囲気が最近悪くて」
 はっきりと言った。
 噂を流され始めてから、白い目で見られているようで仕方がなかった俺は一歩踏み出して周りに白い目でみられていることによって悪くなった雰囲気について謝る。

「お、おう。気にすんなよ」
 噂が流れる前に仲良くなりかけていた、中西というお茶らけた奴にそう言って貰えるどころか、

「あの噂ってマジなのか?」
 と質問まで返してくれた。

「やってないし、やるつもりはないな」

「いやいや、恥ずかしがるなって。本当はやっちまったんだろ?」

「まあ、やってないけど。顔だけ見ればそう言う気持ちが沸かないわけではないな」

 そんな些細な会話が一時の間続いた。
 そう、周りにはっきりと否定して臆せず話に行かなかったのがダメだった。
 話している時に分かったが、出会って間もない俺が変な噂を立てられてどう話しかけてやれば良いのか分からずにいて、完全に嫌われていたわけではなかったのだ。

 ゆえに、結果から言えば

 過剰に周りを気にしすぎて、臆していた俺が悪かったのだ。
 少なからず嫌われてるのを気にしすぎて、これ以上嫌われたくないからと言って臆していた俺が間違いであったという事だ。

 それから数日間、俺は皆に当たり障りのない話題で話しかけた。

 周りを気にしすぎて、臆していた時よりみんなの好感度はどんどん上がっていった。
 都合の良い話だと思われるだろう、簡潔に言えば俺があまりにも皆に行動と言うか話しかけると言うか、そういったこちらから歩み寄る気概が足りていなかっただけであった。
 そんな、踏み出してから数日経ったとき、一番最初に俺が話かけた田中が口を開く。

「悪かったな。俺、噂のせいでお前を無視するような形を取っちゃって」
 再び、前に進むことを始めた俺に田中がそう言ってくれた。
 マジで受け身であるうちはダメだったんだな。そりゃ、俺だって変な噂を立てられている奴に話しかける気はしない。
 だから、こっち側から否応でも話しかける。それが正解だったんだろうな。
 なんでそんな簡単なことに気が付かなかったんだろうな……。

「いや、話しかけづらいのは当然だろ。てか、俺のせいでクラスの雰囲気が悪くなってたのはマジで謝る」

「おう、そうか。じゃあ、寒河江先輩とどんな関係か洗いざらい話して貰おうか?」

 こうして、おかしくなっていた学校生活が少しマシな方向に戻り始めるのであった。
 まだクラスの何人かと俺と接点がない生徒の多くには白い目でみられている気がする。まあ、そりゃそうだろう俺がなんとも言えないクラスの雰囲気を作ってしまっていたのだから。

 対して若田部さんはというと、

「うーん。どうなんでしょうか。話しかけてみたんですけど、ウザがられてないか心配です。会話はたくさんできて前より楽しいんですけど……」 

「いや、大丈夫だ。そのまま突き進め。俺の能力によると若干好感度は上がってるからな」
 無事、若田部さんも少しづつ関係をより良い物へと変えていくのであった。
 俺の言葉を聞いた若田部さんの顔がどこかほっとした顔になる。

 今思えば、若田部さんには上辺でも良いから関係を維持し続けろと言ってきた。
 でも、積極的に話しかけていけとは言いはしなかった。

 笑っちゃうよな、積極性を出さずにいつ来るか分からないチャンスを待てって言ってたようなもんだ。
 友達を作るなんて、チャンスじゃなくてきっかけが重要でそのきっかけを作るのは自分自身だったというのにさ。
 そんなことにすら気づけていなかったのが、今思うと馬鹿みたいだ。

「ところで、調先輩。さっきから、何をしてるんですか?」
 そう、俺と若田部さんが話しているのは生徒会室。
 いつものように若田部さんが持ってきたお菓子でお茶をして休憩していた時なのだ。

「いえ、ちょっと嫉妬で狂いそうなのよ。二人だけ、そんな関係を作って。私を置いてけぼりにしていくなんてひどいと思ったの」 
 と言いながらガンガンと机を殴っている調先輩。

「というわけで、若田部さん。お願いがある」

「はい、なんです?」

「生徒会に入ってくれ。調先輩の地に落ちた評価をあげるには生徒会をまずきちんと機能させる必要がある。だから、お願いできないか?」

「はい、良いです。周りを気にしすぎて、何もかもに臆しているのはダメです。だって、突っ走ってダメになったとしても神田君が責任を取ってくれるんですから、全然平気です」
 あ、うん。
 俺、若田部さんの好感度をどんどんあげている気がするんだけど、友達もできて世間的に普通に戻ってきているしきっと大丈夫だよな?


 
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