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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

一章

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自業自得の始まり

「という事があった。あいつのためにも話しかけられても無視てくれ」
 海田加奈と出会った翌日の放課後における生徒会室活動の休憩中に、俺は若田部さんと調先輩に言った。
 いきなり仲良くしたいと言ってきた海田 加奈について調先輩と若田部さんに話しかけられても無視するようにと。
 あの様子からして、周りには恵まれているようだし、俺達みたいな社会不適合者に関わるのは良くないからな。

「中二病ですか……。自ら恵まれた環境を捨てるなんて馬鹿みたいです」

「ええ、自分が恵まれていることが分かってないのね」
 二人も俺と同じ考えである。
 だって、俺達は仕方なくこうして三人でいるというのにな……なんだろ、中学生に周囲の環境で負けているのが俺たちがいかに不甲斐ないかわかるな……。
 ちょっと悔しい。

「というわけで、絶対に構うなよ? それがあの子のためだ」

「ええ、そんなの分かってるわ」

「はい、分かってます。それよりも、神田君。どうするんですか、あの件」
 あの件か……。

「校外学習の事か? まあ、一応、班には入れて貰ったけどさ。まあ、あんまり期待できないだろうな」

「どうせ、いないように扱われるのが落ちです。休んでいいのではないかと思います」

「いや、さすがにそれはしたく無い。不憫な思いをしようが学校の行事だ参加はしとくさ」

 一年生の俺達は校外学習という名目のもと浅草観光と言ったちょっとした行事が催される予定なのだが、問題は班行動という事。
 そう、俺はクラスで孤立している。
 それが意味するのは簡単なこと、班には入れて貰えても誰もいないように扱われてしまうことだろう。
 そのせいで、ちょっとした憂鬱な気分なのだ。

「そうですか。でも、辛かったら休んだ方が良いです」
 若田部さんの心配が地味に嬉しい。
 こういう気づかいはマジで良いんだけどな……。だが、この良いところを打ち消すくらいの欠点がありすぎるからプラスマイナスで言えばマイナスに傾くからな若田部さんは。

「私も一年の時、辛かったわよ? この校外学習と名を打っている新入生の結束を深めるレクリエーションの校外学習の時にはもう私は周囲から白い目で見られていたもの」

「でも、行ったんですよね?」

「まあ、一応行ったわよ。でも、置いて行かれたわ。だって、軽く浅草を見学した後、班別に分かれて行動なのだけど解散は各自なんだもの。その結果、私には解散と言って残りのメンバーで観光をしてたんだからね」
 マジか……。
 俺もそのパターンだろうなあ。
 何だろう、そう考えたら行きたくない気がしてきたけど、それは勿論なしだ。
 こういった行事ごとにすら参加しなくなったら本当に高校に通う意味を見失いそうだからな。
 俺はまだ普通の高校生活をあきらめたわけではない。復帰できれば復帰してやる気持ちはある。

「ちょっと、調先輩の言葉を聞いて少し私も行くのが嫌になってきました。だって、私は神田君よりかはひどくないですけど上辺だけの関係に近いんです。つまり、」

「ええ、若菜さんも、急に解散と言われたのち、他のメンバーは何食わぬ顔して合流してそのまま観光をするでしょうね」

「「はあ……」」
 息ぴったりにため息を付く俺達であった。

「さてと、生徒会の仕事に戻るわよ」
 そう言って、俺と調先輩は仕事に戻る。
 若田部さんは今日持ってきたお菓子のゴミを片付けて帰っていった。
 生徒会の仕事を手伝うと申し出を受けたのだが、調先輩曰く、こうして他人の目を盗んでお茶しに来ているだけで危ないのだから、これ以上藪を突かれるようなことは辞めておけとのことで断っている。

「そう言えば、先輩は一年の時はボランティア活動とかしてどうにか学校生活を送ってたんですよね?」

「ええ、そうね。だって、友達がいないんだもの。そういうことに参加してちょっとでも高校生っぽさを得て耐え忍んだわ」

「学校をやめるとかは考えなかったんですか?」

「ええ、辞めるつもりはないわよ。だって、友達がいないくらいで高校を辞めるとかさらに社会不適合度が上がってしまうもの」
 当然のように言う先輩。
 友達がいないくらいで学校をやめるわけにもいかないか……。そりゃ、当然だよな。

「まあ、今の時代は友達がいなくても娯楽で溢れてるからどうにかできるか……。ゲームをしたりとかそう言う楽しいことがあるし、高校が詰まらなくても全然平気だ」

「負け惜しみにしか聞こえないわよ?」
 いや、まぎれもなくボッチなことを忘れるための負け惜しみだ。
 高校ってさもっと友達とかとワイワイと楽しく過ごすものじゃなかったのか? っていう気持ちがまだまだ捨てきれないだけである。

「ワイワイとしたいなら。休日、私達と遊びに行けば良いじゃない」

「いや、それは結構です。まあ、最近はあまり口にしてなかったんですけど、先輩たちの俺に対する好感度がじわじわと上がって来て、怖いんですよ、普通に。だって、お菓子に髪の毛を入れたり、俺の知らないところで飲み物に唾液を入れて飲ませるような人ですから」

「酷いわね。そのくらい普通よ。普通」
 何食わぬ顔をして普通と言い張るのが、これまた怖いんだよなあ……。

「先輩、ノートパソコンを使いたいんで金庫を開けてください」
 実は生徒会には書類を作るためのノートパソコンが一台、デジカメが一つ、プリンターが一つと割と電子機器の類がそろっている。

「ええ、良いわよ」
 先輩が金庫を開け、中からノートパソコンを取り出す。
 金庫から取り出されたノートパソコンは最新のものである。
 最近、学校に多額の寄付があったため新しいものと取り換えになったらしい。

 一体、ばあちゃんはどんだけ寄付したのだろうか……。

「さて、今日も、あと少しだけ頑張りますか……」

 こうして、俺は今日も生徒会副会長としての責務を全うしたのだ。

 生徒会の仕事を終えた俺はいつものように通学路を歩いていると、少し騒がしい女子のグループが目についた。
 その中に昨日俺に話しかけて来た海田 加奈がいた。
 楽しそうに友達と話す姿。それだというのになぜ俺たちの関係に憧れるのだか……。
 俺達はお前が持っているものが欲しいというのにさ。

 そんな時だ。
 少し離れていた海田加奈がこちらに気が付き、友達に断りを入れて俺の方に歩いてきた。

「ども、先輩。見かけたんできちゃいました」

「あのなあ。俺なんかよりも、今さっき歩いてた子たちと仲良くしとけって。いかにお前が恵まれているか分からないのか?」

「えーでも。恵まれているって言っても。皆過保護すぎて嫌なくらいなんですって」

「はあ。ほら、さっさとあっちに戻れ。絶対に俺達みたいになるのは辞めろ」
 目線で、先ほど楽しそうに話していた中学生女子のグループを見て、海田 加奈にあそこに戻れというのだが、

「いえ、戻りません。私、今すっごく先輩とお話したい気分ですからね!」
 ダメだこれ。
 マジで、超能力者同士慰め合っている俺達に対して憧れているんだろうな。
 てかさ、倫理観はどうなんだ? 年は近いとは言え高校生と中学生だぞ。OB、OGじゃない限りそう言った交流を持つのは危機感を覚えろって話だ。
 特に高校生にもなれば度胸もつくし、男子生徒なら普通に巧な言葉でやり捨てられるぞ?

「なあ、どうしたらお前は俺たちの仲に割り込むのを諦めるんだ?」

「いえ、諦めませんよー。だって、先輩たちの関係ってすっごく良いじゃないですか。周りからちやほやと同情されて仲良くして貰っている私なんかより全然すごいじゃないですか」
 同情して仲良くして貰ってる? 
 あの、俺の前を女子数名で話しながら歩いているあの姿が同情だと? 笑わせるな、あれはどう見ても気が知れた友達同士の間柄を物語ってるぞ?

「はあ、次話しかけて来ても無視するからな」
 そう、俺達に関わってはダメだ。
 今さっき見た海田加奈と友達が笑いあいながら下校する光景は俺達が追い求めているもの、なのにこいつはその有難みを分かっていない。

「ちょ、無視は酷いですよー」

 そんな声が後ろから聞こえるが無視して俺は自分の家に帰るのであった。

 そう、恵まれた環境を手放そうとする奴なんか話しかけられても無視して当然だ。
 それがアイツのためである。

「聞いてくださいよー。ねえ、せんぱーい」

 だがしかし、こうも後ろでうるさくされてしまっては無視できない。

「うるさいって。ご近所さんの目を考えろよ。さすがにここは俺ん家がある近所だ。騒ぎ立てるんじゃない」
 そう、まぎれもなくここは俺の家の近所。
 そんなところで、女子中学生がしつこく、そしてうるさくと、つきまっとてくる姿を見られれば噂されてしまう。
 ゆえに対処するしかないのだ。無視したいけど。

「だったら、仲良くしてくださいって。そうしたら、黙りますから」
 はあ、しつこい奴だ。
 正直に言ってしまうか。

「俺、お前の事、生理的に受け付けないからどこかに行け」
 しっかりとした声音で言った。
 そりゃさ、羨ましいもん。あんな、楽しそうに友達と歩いて下校するとか嫉妬でおかしくなりそうだ。
 だから、生理的に受け付けないレベルで海田加奈のことを俺は気に入らない。

「酷いです。これでもクラスでは可愛い方なんですよ。そんな、ぴちぴちな女子中学生に生理的に受け付けないとか男としてサイテーですよ」

「ああ、俺は最低な野郎だ。だから、これ以上付きまとえば普通に警察を呼ぶからな?」

「またまた、そんなご冗談を」
 と、まるで俺のいう事を信じないので、

「あ、すみません。お宅の生徒についてちょっとした報告をさせてもらいたくお電話しました。海田加奈さんについてなんですが……」
 俺は躊躇なく携帯で警察ではなくとりあえず中学校に電話を掛けた。
 何、海田加奈が着ている制服はこの近所の中学校の物だ。
 連絡先なんてすぐにわかるんだからな。

「え? ちょ、何してるんですか?」

「はい。あの、男子高校生に見境なく話しかけるのは少し危機管理が足りないと思いまして……」
 そう、俺は海田 加奈が通う中学校に高校生に見境なく話しかけることに対して、苦情を入れ始める。

「あ、はい。いえ、急に話しかけられて馴れ慣れしくというか、付きまとわれて……」

「あの、冗談ですよね? 本当に電話をかけてないですよね?」
 だが、俺は通話し続ける。

「というわけで、そちらから注意の方をお願いできないでしょうか。こちらも少し付きまとわれて迷惑しているのと、それ以上に高校生に見境なく話しかけるのは色々と問題が起こったら大変ですから。あ、まだ近くにいます。じゃあ、代わりますね」
 と俺は携帯を海田加奈に渡す。

「あの……。はい、はい。すみません。もうしないです。あ、はい。それじゃあ、失礼します」
 あからさまに叱られたような雰囲気で通話を切り俺に携帯を返してきた。 
 さすがに学校側から注意されてへこまないわけがない。

「というわけだ。俺には近づくな。迷惑だ」

「酷いです。まさか、学校に電話するなんて、ほんと酷いですよ!」

「あのなあ、そりゃそうだろ。だって、俺とお前は、ほぼほぼ面識がないんだからさ。てか、お前も気を付けろって話しかけたやつが全員俺みたいなやつじゃなくて悪い奴もいるんだからさ」

「でもぉ……」

「じゃあな、これでお別れだ。じゃあな」
 俺はそのまま海田加奈を無視して家へ帰るのであった。
 そう、あいつは俺達なんかと関わるべきじゃない。


 だが、この時にはもう取り返しはつかない事態につながりつつあることを海田加奈は知らない。



  
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