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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

一章

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俺が手を差しだした理由は祖母にある。

ばあちゃんの口調が定まらない……
 生徒指導室から解放され、ばあちゃんに連れられてやってきたのは、高層ビルに入っている高級なお店。
 しかも、個室だ。
 お値段は高いという事は言うまでもない。

「とりあえず、二人とも疲れたろう。ゆっくりしなさい」

「ご厚意ありがとうございます。まさか、超能力者への支援団体を創設したお方が好木君のおばあ様だと思いもしませんでした」
 そう、俺のばあちゃんは多くの企業を束ねる親会社の社長で、その有り余る利益を元手に超能力者を支援する団体を創設した人だ。
 支援団体は発足当時から超能力者のために色々と支援を行ってきた。
 そのノウハウを最大限に生かしたカウンセリングのおかげで散々であった中学時代から俺は立ち直ることが出来たのだ。

 普通に立ち直ったと思ったか? 残念だが普通に立ち直れるほど俺のメンタルは強くない。

「礼儀正しい子じゃない。好木、これからも仲良くするんだよ」
 ばあちゃんは先ほどとは違った声音で話す。とても優しい声だ。
 さっきとはまるで変った印象を受けるその声に、調先輩も少し驚いている。

「わかった。ばあちゃん」

「それで、二人とも。よく頑張ったね。超能力者は白い目でみられることが多い。だから、手を取り合っていくのが良いんだよ」

「はい、おばあ様」
 俺が調先輩と若田部さんを見捨てられなかったのはばあちゃんのこの超能力者は手と手を取り合って頑張っていくという姿勢を見て来たからにすぎない。

「好木。中学みたいにならず普通の学校生活を送ると約束したけども。破ったのかい?」

「ごめん。ばあちゃん」

「好木が選んだのならそれで良い。超能力者は不憫。だから、手を差し出すのは本当に勇気ある行動だとっ誇っていいんだよ?」
 高校入学時に約束したことを破った俺を優しく慰めてくれるばあちゃん。
 そして、調先輩と若田部さんに手を差し伸べたことについて褒めてくれた。

「ごめん。トイレに行ってくる」
 今までしてきたことを肯定され涙が出そうになり慌てて俺はトイレに行った。





 そんな、神田好木がいなくなったレストランの個室の一室。

「あの、おばあ様」

「よく頑張ってきたね、寒河江調さん。あんた、苦労してきたろう?」

「は、はい」

「超能力者は世知辛い。私は良くしようと動いてきたけど。まだまだ、不十分。でも、好木ならきっと変えてくれると信じてるのさ」

「希望ですか?」

「あの子はこのまま順当に行けば私の後釜になる。超能力を持った好木ならもっと超能力者にとって良い世界を作れる。そう信じてる。でも、世の中急激に変えることは不可能で、だから好木にはまず超能力者が互いに手を取り合っていける世界を作る希望の架け橋になって欲しいと思ってる」
 まずは超能力者同士が手と手を取る世界。
 その先に超能力者とそうでない人とが交わった世界があると神田 菊代は考えている。
 まず、超能力者は超能力者と手を取り合うという段階を踏んで、世界を変えようとしているのだ。

 だから、神田菊代は好木を引き取って以来、超能力者に優しくできるようにと育ててきた。 
 それが実を結んで寒河江調、若田部若菜に通じ始めたというわけだ。

「今回の件、二人でやり返すと良い。二人の噂を立てたやつを懲らしめても何も言わない。超能力者は少しでもやり返したら非難される。それはおかしい。だから、超能力者が泣き寝入りするような世界を壊してほしい気持ちもあるんだよ」
 そう、神田菊代は激怒していた。
 自分の孫とその仲良くしている友達が性行為に及んで風紀を乱したという噂を立てられて激怒していないわけがない。
 そう、二人には超能力というやり返す力がある。
 もちろん、超能力で相手にやり返していれば、さらに超能力者の立場は悪くなるかもしれない。
 超能力者を支援する団体の創設者として、やり返して良いというのは間違っているだろう。
 だが、神田菊代はやり返しても良いと公言した。

「では、やり返します」

「そう、そう。超能力者が立場が悪くなると思ってやり返さなければいつまでも泣き寝入りするしかない。でも、それを払拭するためやり返されることも周囲に知らせねばダメ。でも、犯罪には手を染めてはダメなのはわかる?」
 普通の人同士はやられたらやり返しているのに超能力者はなぜそれをしてはいけないのかと神田菊代は考えているのだ。
 本当に超能力者とそうでない人を対等なステージに持ち上げようとしているからこその考えだ。

「はい、犯罪は絶対にしません」

「まあ、この私が言うのもおかしいけどもね」
 神田菊代は愛想笑いをする。 
 こういったことを言える立場ではないのだ。だが、やはり孫の事、かなり怒っているのだ。
 じゃなければ、こんなことは言わなかっただろう。
 超能力者の支援団体の創設者と言えど、やはり人。身内に何かされたら切れるのは当然だ。

「そして、ありがとうございます。これ」
 寒河江調は自分用に作られた特別製のボイスレコーダーを机の上に出す。
 小さい頃は考えていることを知るという能力を制御できずに、考えていることに反応して返事をしてしまうことがあった。ゆえに再三と言われた言葉を確認するために用意されたボイスレコーダー。

 その製造元は神田菊代が創設した支援団体なのだ。

「おやおや、それはうちの物かい? 少しでも役に立ててうれしいもんだね」

「はい、今は制御できるようになりましたけど。こうしてお守りとしていつも持ち歩いています」

「それはうれしいことだよ」

 なんて、二人が談笑していると好木は流れそうになった涙を止めて戻って来た。



「二人ともお待たせ」
 寒河江調、神田好木。そして、神田菊代。
 三人は談笑をしながら、食事をとるのであった。

「好木、今日は送って行ってあげなさい。きちんと部屋までね」
 食事を終え、解散となるのだが好木と調を一台のタクシーに押し込む。
 そして、タクシーに寒河江調の自宅の住所を神田菊代は伝え向かわせた。
 なぜ、神田菊代が寒河江調の住所を知っているかは超能力者を支援する団体の創設者で支援してきた超能力者の現住所を握っているからだ。

 一人取り残された神田菊代は悲しそうに言った。

「好木。寒河江調さんを救ってあげなさい……」
 神田菊代は超能力者を支援する団体の創設者。
 長い期間、超能力で不憫な目にあって来た人を見続けていた。それによって培われた目は寒河江調を不憫な人と紛れもなく捉えたのだ。

 神田菊代もいい年。できることは限られている。
 だからこそ、神田好木を後継者として育て上げなければいけない。多くの企業の親会社の社長としてではなく超能力者を支援する団体の後継者として育て上げるという事。
 それが節に神田菊代が超能力者の世知辛さをなくそうと考えていることに違いないことを示している。


 そして、好木は半ば強引に寒河江調を住んでいる高層マンションまで付き添い、律儀にも好木は調の住んでいる部屋まで送る。

 別れの挨拶をして玄関を開けた、調。
 その時だ、好木の目に信じられない光景が映った。

「先輩。この部屋は……」

 そう、玄関から見た寒河江調の部屋はものすごく汚いのであった。廊下までゴミが溢れていた。
 生徒会室は奇麗に使われていたのにも関わらず、彼女の住んでいる部屋は汚いのだ。

「汚いでしょ? でも、この方が落ち着くの。だって、ここは私が使ったものの匂いで溢れて、一人だけの空間なんだもの」
 当然のように言った寒河江調。
 それに、苦笑するしかない好木がいた。まさか、調先輩の住んでいる部屋がここまで汚いとは思っていなかったのだから。

 神田菊代はこのことを知っていたから、好木を送り出したのだ。
 定期的に支援する超能力者のもとを訪れるという活動も行っており、神田菊代は寒河江調の部屋がゴミ屋敷さながらの汚さを知っていたから送り出したのだ。

 つまり、

「なるほど、このゴミ屋敷を掃除しろってことか」

 好木に調を送らせた理由。
 それは、廊下にまであふれかえったゴミを何とかしろという事。

 そんなとき、ポケットの携帯にメッセージが届いた。
『手を差し伸ばすと決めたなら、部屋掃除も手伝ってあげなさい』

「先輩。とりあえず、片付けましょうか……」





 
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