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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

一章

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危機から危機。どうあがいても危機しかありません。本当に何が起こるか怖すぎます。

 あれから若田部さんと少し談笑した後、玄関の前で別れた。
 どうやら、本気でもう一度周りを好きになってみようと努力する気にはなってくれたようだ。まあ、俺に対する好感度はお察しの通り上がってしまったが……。

「あら、無事だったのね」
 そして、リビングに戻ると調先輩は優雅に紅茶を飲んでいた。
 しかも、察するからにお湯を沸かし直して、新しいのを入れて飲んでいるっぽいな。

「あなた、基本に忠実なのは良いけど、茶葉の量は物によって変えるべきよ。あなたの家にあるこの紅茶は普通より多めに入れると味と香りが格段に良くなるから、ほらのんでみなさい」
 とカップに調先輩が作ったであろう、紅茶が注がれ俺の手に渡される。
 それを口に含むと、俺が入れた紅茶とはまるで別の味わいが口に広がっていく。

「すごい、濃厚な味で……。でも、苦みも渋みも悪くない」

「そう、この紅茶は茶葉を多めに入れても渋くなりにくいの。だから、濃厚な香りが口に広がるの。そして、砂糖も入れてみるといいわ。さらに、味が引き締まるわよ?」
 テーブルに要した角砂糖を一つ入れ、スプーンで混ぜ再び飲む。

「っつ。うまい、なんだこれ……」

「そう、人によるけど。紅茶は砂糖を入れると格段に美味しく感じるわ。でも、良い紅茶を出すなら、良い砂糖も使うべきよ。さらに、味が変わるもの」

「へー、そうなんですか」
 若田部さんと話を付けた俺はすっかり落ち着いて先輩が入れてくれた紅茶をすするのだが……。俺はあることに気が付く。
 先輩が紅茶を飲みながら優雅にしていた。
 それって……。

「あの、もしかして途中から見てなかったです?」
 そう、優雅にお茶を飲んでいたというのはそう言う可能性があるという事だ。
 確かに、最後あたりは当たり障りのない話をしていて、危機はないと言えただろうけどさ。もう少し、心配をしてくれって。
 何のために連れて来たんだってなるから。

「心配してたわよ? 紅茶だってあなたが危機を脱してから入れ始めたんだもの。それよりも、好木。大事なことを忘れてないかしら?」

「大事なこと?」
 そんな事あったか? 大事なことを忘れているって言われても覚えがないんだけど……。

「あら、忘れていたなら教えてあげるわ。そう、助けてくれた見返りを貰っていないのよ」
 え? 報酬なら胸元の匂いを嗅ぐことで手を打ってくれたんじゃないのかよ。

「あら、心外ね。あれは、教えてあげただけよ。こうして、私をここに拘束したのだから、それにも相応の対価を支払うべきだと私は言ってるのよ?」

「いや、その来てもらったのは感謝してますけど。でも、役に立ってないのでなかったことには……」

「できないに決まってるでしょ? だって、ここに私はかれこれ一時間以上はいるもの。その分の対価を請求しても罰は当たらない。そうでしょ?」
 うん、調先輩を頼ったのは間違いだったな……。ほぼ、来てもらっただけというのに何か報酬をあげないといけないのか……。

「というわけで、好木。私を、ここに一晩泊めて頂戴」

「はい?」

「だから、ここに一晩泊めてと言ったのよ。だって、ここは好木の匂いで……いるだけで興奮しちゃうんだもの!」
 匂いフェチってこんなにもやばい性癖なのか? 俺の生活空間の匂いを嗅ぐだけでなんでああも幸せな顔をできるんだろうか。さっぱりわからん。

「あら、匂いフェチの気持ちが分からないの? だったら、体験してみると良いわよ。さあ、どこでも嗅いで良いわよ?」
 手を広げ受け入れるかのように振る舞う姿はまるで包容力が溢れていて女神さまがいるように錯覚する。
 だが、絶対に近寄ってはならない。近寄れば、きっと酷いことが待っている。

「嗅ぎませんってば」

「あら、残念ね。でも、あなたはこっちに来ないといけない理由があるわ」
 調先輩はポケットから携帯電話を取り出した。
 そう、俺の携帯電話を取り出したのだ。

「いつの間に取ったんですか?」

「あなたが若田部さんと話している間に取ったわ。さあ、取りに来ないとどうなるかわかってるわよね?」

「普通に窃盗ですよ。それ、」

「ええ、カバンから抜き取った時にそう思ったから。あなたのカバンに代わりの物を入れておいたわよ?」
 てか、勝手にカバンの中から携帯を抜き取ったのかよ。
 で、一体代わりに何を入れたんだ?
 どうせ、ろくでもない何かを入れたのだろうと思い、カバンを開いて何を入れられているか確認する。

「あ、はい。これって、携帯を取った代金ですか?」
 そう、俺のカバンの中には万札が10枚ほど突っ込まれていた。

「ええ、それなりに高い機種でも10万円ほどあれば買えるもの。これを貰う代わりにちゃんとお金を支払っただけね」

「いやいや、それでも普通に窃盗ですから。返してくださいって」
 スマホの中身に入っているデータはそこまでやばいものは、ああ普通にあるか……。暗証番号の000012さえばれなければ別に中身も見られないだろうし。
 あ、これもう詰んだわ。

「うふふ、あなたの考えていることなんてお見通しよ。さて、やばいものを見られたくなければ、こっちに来て携帯を取り返しに来ればいいのよ。さあ、早くしないと中身をみても良いのかしら?」
 勝ち誇った顔を浮かべた調先輩。
 だが、彼女の前に行くと良からぬことが起きそうで怖い。だけど、中身をみられるわけにはいかない。
 一体、どうすれば……。

「10、9、8、7、…」
 そして、先輩はカウントダウンを始める。
 それが俺の恐怖を煽り立て、とうとう調先輩の前に立ちスマホを取り返そうと手を伸ばした時だ。

「よく、来たわね?」
 その瞬間、先輩が俺に牙を向いた。
 ソファーに座っていた足を開き、俺の胴に足を回し胸元を掴み思いっきり先輩に手繰り寄せられてしまう。その勢いは強く思いっきり先輩の方に倒れこんでしまったのと同時に胴に回した足の隙間をさらに詰めて俺と先輩は密着した状態になった。

「どう? 私の匂いは?」
 男の体とは根本的に違う足腰の太さ。細く、それでいて肌の感触はもっちりとしている。男とは全く違った感触にドキリと来てしまう。
 さらには近づいたことにより先輩独特の匂いが香ってくる。
 汗臭くもなく、香水臭くもない。そう、人間がそれぞれ持つ体臭だけが香ってくるのだ。
 その匂いはどこか自分を違う環境に連れて行ったかのように錯覚させるほど、強烈で。まるで、俺の家なのに別の場所で息をしているかのようだ。

 加えて、先輩の顔が近い。
 それが、今現在伝わってきている感触や匂いの持ち主だと意識させられ、よりいっそうと密着している調先輩を改めて意識させられる。

 やばい、このままだと……。

「ふふ、どう? 女の子の体と匂いは」
 その発言がさらに俺を奮い立たせ……。

「でもね、あなたにはもっと私の匂いを嗅いでもらいたいわ」
 調先輩の足がさらに俺の胴を締め上げ、

「我慢しなくても良いのよ?」

 だがその瞬間、

 ガンガンガンと玄関から音が響いてくる。
 チャイムではなく、叩かれる玄関。その恐怖により、一気に現実に戻る。

 ふう、危なかった。もう少しで、先輩に……。
 てか、怖えよ。玄関をガンガンとたたかれるのは普通にホラーだろ。一体だれが叩いてんだよ。

「神田君。助けに来ました!」
 玄関から聞こえてきた声は先ほど帰っていた若田部さんである。
 てか、どうして俺が先輩に襲われてるって分かったんだ? 普通に怖いんだけど……。

「興が覚めたわ。さすがに玄関をガンガンと叩かれながらの初めてはいい思い出にならないもの」
 そう言った先輩は胴に巻き付けていた足を離した。
 それと、同時に俺は先輩から離れることに成功する。
 ああ、危なかった。一線を越えたらそれこそ、永遠と調先輩に付きまとわれかねん。

「てか、若田部さんはどうして俺の危機を察知できたんだ?」

「そりゃそうよ。だって、あなたこの部屋。若田部さんの部屋から丸見えよ? カーテンも光を入れるための薄い方でしっかりと光を遮る方は閉めていないんだもの。そりゃ、バレるわよ。私としたことが失敗したわ」
 まじ? リビングにいるとき、光の遮断性の強い厚手のカーテンを閉めると重苦しく感じるから、薄手のカーテンだけ閉めてたんだけど。
 つまり、薄手のカーテン越しに今までずっと見られていたのか?

「ええ、今度からは気を付けなさいよ?」

「はあ、とりあえず。玄関に行ってきます」

「ええ、行ってらっしゃい」
 ここ俺の家なんですけど、なんでまるでここに住んでいるようにふるまってるんだ調先輩……。
 そして、俺は玄関を開け、若田部さんと再び会う。

「大丈夫ですか? 女の人に無理やりレイプされそうだったんで助けに来ました!」

「いや、うん。ありがと」
 だが、カーテン越しにリビングでの生活を覗かれていことを知ってしまい、正直にお礼を言うことが出来ない俺がいた。

「ところで、あの人は誰なんですか?」

「ああ、あの人は生徒会長の寒河江 調先輩だ」

「あ、そうなんですか」
 そんな時だ。後ろから調先輩がやって来て、

「若田部さん。とりあえず、好木は私の物だから手を出さないで頂戴ね?」

「いえ、レイプ魔には渡しません」

「でも、今日。私、この家に泊まることになってるのよ?」
 いや、普通に許可した覚えがないんだけど。何勝手に言ってるの?

「どうしてですか?」

「だって、家の鍵を学校に忘れたんだもの。あと、ここしか頼る場所はないから仕方がないとしかえ言えないわ」
 先輩のことだ。泊めてもらうために本当に学校に置いて来てそうだな。

「一応、本当に忘れたか、確認して貰っても良いわよ?」

「へー、そうなんですか。じゃあ、さすがに男と女じゃ倫理観的にまずいと思うので私の家に泊めてあげます。さて、行きましょう! ちょうど、私神田君と約束していろんな人ともう一度仲良くなってみようと思ってたんです。だから、神田君。調先輩をこっちに引き渡してください。神田君も困っているようですし」
 若田部さんがそう言ったと同時に調先輩はあたふたとし始める。
 一体、何を考えて調先輩を家に連れて行こうとしているんだろうか読んでしまったのだろうか。

「好木。嫌よ、あの子、の家に言ったら私。もてなしと称され、色々と……」
 そう、他人に尽くしてそんな自分を愛す彼女。そんな彼女の家に言ったら大いにもてなされることだろう。だから、俺は笑顔で言った。

「ああ、二人仲良くしろよ?」
 と、後ろにいた先輩を前に突き出したのであった。
 危機は去ったと思ったのだが、

「はい、じゃあ行きましょうか。調先輩?」
 その時の調先輩は珍しく震えていた。
 そして、前に突き出された調先輩の手をがっちりとつかんだ若田部さん。
 その間にも俺はカバンをリビングに取りに行き、すぐに出て行けるようにカバンを若田部さんに託す。

「若田部さん。調先輩のことを頼んだ」

「はい、わかりました。でも、他者に尽くしますけど、今度からは私からもお礼を要求していこうかなって思ってるんです。だから、今度お礼をしてもらいます!」
 若田部さんが調先輩の腕をがっちりとホールドし、玄関彼出る際に言った、今度お礼をしてもらいますという発言。
 怖えよ。一体、俺はお礼と称した何をさせられるんだろうな……。

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