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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

一章

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超能力者は愛が重い。でも仕方がないので受け入れました。でも、普通に後が怖いです……

 若田部さんに言いつけることをきちんと考えた後、俺は調先輩を連れて自宅に帰ってきた。決して、やましい目的ではないから、そこのところは安心してほしい。

「なかなかに良いお家ね。明らかにここら辺の家の中じゃ、でかい方じゃないかしら」

「まあ、そうですね。この辺じゃ、でかい方ですね。さてと、スリッパとか用意してくるんで少し待っててください」
 一人暮らしという事もあり若干の散らかりを放置してしまっているため、少しばかり片づけをしなくてはならない。
 一応、家に入れる以上、客人なことに変わりないし。

「あら、そんなに気にしなくてもいいのよ?」

「まあ、そう言われても、気になるんで、少し待っててください」
 と言ってから、家に入り部屋を片付ける。
 なに、散らかっているとはいえ汚い物はきちんとごみ箱に捨ててるし、物を整理するくらいだ。
 あらかた片づけを終え、全体を見渡してから、今一度玄関に待たせてしまっている先輩を呼びに行く。

「お待たせしました」

「ええ、待ったわよ。入ってもいいかしら?」

「はい、どうぞ」
 と先輩を家に招き、リビングに案内する。
 家庭崩壊する前に住んでいたこの家は一軒家であり、リビングも部屋もたくさんあるのだ。

「さてと、好木。おそらく、若田部さんが来るのは19時頃だと私は思うわ。今が18時30分だから。時間帯的にはもう来てもおかしくない時間よ。準備は良い?」

「ええ、大丈夫です。それより、先輩。何か飲みますか? お茶とコーヒー、紅茶、オレンジジュースならありますけど」

「そうね、紅茶でお願いするわ」
 そう言われたので、お客さんに出す用の高い紅茶の茶葉を開け、お湯を沸かす。
 手順は基本に忠実にし、そこそこな紅茶を入れる。

「お待たせしました。あと、一応、お菓子です」
 そして、御茶菓子もきちんと出す。
 これこそ、客人をもてなすという事だ。そう、調先輩は客人。あくまで、客人なのを忘れるな。客人という事を相手にわからせろ。
 だって、普通に友達を家に招いたように接した瞬間、何をしてくるのかわからないからな。

「そんなに、警戒しなくても良いじゃないの。まだ、何もしないわよ。まだね」

「まだですか……」
 そんな、ジョークなのか本気なのかよくわからない先輩と話しながら、紅茶を二度か三度口に含んだとき、家のチャイムが鳴った。
 ばあちゃんは俺がこの家に引っ越してくる際物騒だからインターホンを最新のカメラ付きに変えてくれていたのでそのインターホンから映し出される映像を確認する。


「若田部さんか……」
 映像には若田部若菜が映っていた。 
 そして、俺は若田部さんに決着をつけるべく玄関に向かう。

「先輩、玄関付近で話すんで、ここからなら映像が見れるはずです。もし、何かされそうになったら助けてくださいよ?」
 そう、玄関のインターホンから映し出される映像を見る機器越しに先輩を設置しておく、立ち会ってもらうのも考えたが他の女と一緒に居ることが逆鱗に触れたら恐ろしいからな。たぶんだけどそんなことは起こらないけどさ。

「ええ、でもこの映像って数分立ったら消えないかしら?」

「消えた時にこのボタンを押せばすぐに映るはずです」

「ええ、分かったわ。何かあったら、すぐ助けてあげるから安心しなさい」
 いざ、決戦の時、今まで思っていたことを全部言ってやる。
 正直、今までのは迷惑だった。そうはっきりと伝えてしまえ。
 だけど、普通に怖いんだよな……。

 ガタンと玄関を開ける。

「あ、神田君。私、待ちきれなくてお弁当箱を取りに来ちゃいました。あと、ごめんなさい。今日のはさすがにお昼にしては量が多かったと後悔してたんです!」
 ぺこりとお辞儀しながら言う姿だけを見ればなんの問題もない。
 だが、しかしこれから若田部さんの問題を露呈させていくのだ、溜まりにたまった鬱憤を今ここで晴らすとしよう。

「まず、若田部さん。一つ、聞いてもらって良い?」

「はい、なんでしょうか」

「正直に言うと、俺、やたらと距離を近く接して来ようとする若田部さんが何をしでかすのか怖くて仕方がないんだ」
 これは混じりけのない本当。
 嘘は何一つ言っていない。この言葉を聞いた若田部さんはハトが豆鉄砲を食らったかのように慌てふためき、俺に今一度問う。

「嘘ですよね?」

「いや、本当だ。さらに言わせて貰えば最初に連絡をしてきたとき、山のように届いた不在通知に俺は恐怖した」

「えっと、それって」

「なんて、やばい奴だ。そう思ったんだよ」
 なんだろう、俺は悪いことをしていないのに胸が苦しい。
 だって、自分は間違っていないし、なんでそのようなことを言われなくてはいけないと言ったような顔を若田部さんがしているのだから。

「酷いです。私のことを弄んでいたんですか?」

「それは違う。弄んでいたわけじゃない。ただ、過激的に接してくる若田部さんに正直に辞めて欲しいと言ったら何をされるか怖かっただけだ」

「そうですか……。そうですよね。私は重い女ですっていった時、そんなことないって行って貰って。この人なら、この人なら大丈夫かもって今まで突っ走って来ました。でも、やっぱり駄目だったんですか……」

「ああ、ダメだ。無理だ。普通の人があんなことをされたら耐えられるわけがない。今日のお弁当だってそうだ。昨日とは全く量もけた違いだし、味も濃かった。別に俺はそんなのを求めてたわけでもない」

「あれは神田君のことを思って……」

「迷惑だ」
 意外にもまともに話が通じているようであり、一安心しながら話し続ける。
 まだだ、ここで突き放して、そのあとで……。

「わかりました。じゃあ、神田君。私からはもう二度と話しかけません」
 若田部さんの顔は意外にもあっさりとしていた。
 そして、言おう。先ほどから好感度は一切変わっていない。それが意味することを口にしようではないか。

「若田部さん。実は俺、対象を選択し相手を選べば好感度を知ることが出来るんだ」

「もう、どうでも良いことです。それじゃあ」
 後ろを向いて帰ろうとする若田部さん。
 だが、そんな彼女に向かって聞こえるように大きな声で言う。

「なんで、俺から突き放されて。一切、好感度が変わらないんだ? 今まで若田部さんが俺にしてきたことは他者に尽くして依存していたからだろ? 本当は尽くし続けて、その自分に酔えればそれで良い。愛も何もかもない冷酷で、自分のために動く利己的なやつだってことだ」

「何が言いたいんです?」

「若田部さんは周りを信用してない。それは、俺の能力が知らせてくれる。だって、若田部さんは周りにほとんど好感度を持っていないってことだ」

「あの、意味が分からないんですけど」
 確かに俺自身も意味が分からなくなってきた。
 だから、最後にどでかく強烈な一撃を放つとするか、

「お前は自己中で。愛も何もない。自分が大好きで、俺のことを好きな人だと思い込み、そんな自分を一番愛している大バカ者だ!」

「私が、自分をですか?」
 いまだ、後ろ向きで話し続けるも、帰る足は止まっている。
 何か、引っかかりを感じているのだろう、だから帰る足は止まっているのだ。ゆえに話続けようじゃないか。

「ああ、お前は自己中だ。だから、俺に愛を注げていると思って満足していた。だから、相手にこう滅茶苦茶に言われても傷つかないで平気でいられる」
 そう、俺は今まで大きな勘違いをしていた。きっと、若田部さんは俺が明確な拒否を示してもすぐに諦めてくれるに違いなく、今まで拒否すれば何をされるか恐れていた。
 でも、彼女は何もしない。
 だって、俺のことが好きなんじゃなくて、俺に尽くしている自分のことが好きなんだから。

「ええ、そうかもしれませんね」
 あらかた、俺が話を終えたと思ったのか、再び足を踏み出そうとした時、

「だから、同情して友達にはなってやる! そろそろ、自分がおかしいって気が付け、他者に尽くして依存し続けてそんな自分を愛すのは辞めろ。そんなの虚しいだけだろ?」
 何言ってんだろな、俺。
 こんなお節介をしなければ、無事に若田部さんとおさらばできるってのにさ。
 笑っちゃうな、ほんとに……。

「あなたに何が分るんですか? 人はその場で嘘を付いていなくてもすぐに心変わりするんです。私の能力を嫌っていないと言っていた子も、次、出会った時にはもう私の能力を嫌っていて。それで、私自身も嫌われて、差別しないと言った先生も、周りの目があるからそう言ってるだけ」

「誰も、だれも私のことを愛してくれない。だから、相手に尽くして、めい一杯好きになってもらおうと努力して、でもでも、それを一瞬で否定され」

「だけど、相手の事を思って尽くすのは悪くなくて……。だから、私は相手のため、相手のためって」

「そうしたことを考えて、ひたすらに相手を好きだと思い込んで依存して尽くすのが楽で」

「でも、明確に一週間の間、嫌な顔をしなっかった神田君もいて、今度こそは、今度こそは本当に好かれたいって思ってて、でも尽くしている自分が一番が好きなのは変わらなくて」

 もはや意味が分からない言葉を羅列し続ける。若田部さん。
 やはり、彼女もまた超能力に振り回され生きてきた闇深い人物である。

 俺はひたすらに自分の感情を言い続けている若田部さんに言った。

「でも、俺に対する好感度は少しづつ、少しづつ。高くなっていった。だからさ、もう一回。周りを好きになってみろって。まだ、上辺だけだけど、友達だって高校で出来たんだろ? もう一度、やり直せよ。やり直して、まともに成れって」

「無理です。神田君にはっきり言われて気が付きました。私は、自分のために相手に尽くすことしかできません」

「だから、俺が友達になってまともになれるように手伝うからさ」
 ほんと、何言ってんだろうな。
 でも、超能力者が世知辛いのは知ってる。だからそれを知ってる俺が助けてやらないでどうするってことだ。
 ああ、最悪な気分だ。だって、若田部さんと友達になったとしてもきっと今までのように他者に度が行き過ぎるほど尽くしてそれに満足し、自分を愛する彼女と付き合っていかないといけないんだからな。

「良いんですか? 本当に良いんです?」
 後ろを向いている。若田部さんの肩が震える。声も若干震えを持っていて、まるで泣いているかのようだ。

「ああ、俺たちは超能力で世間から爪弾きにされた、社会不適合者だ。だからと言って周囲と馴染むことをあきらめる必要はないだろ? だったら、同じ辛さを知っている者同士、手を取り合って周囲に馴染んでやろうじゃないか」
 後ろを向いている若田部さんに歩み寄り、後ろから手を握る。

「超能力者は闇が深いのは知ってる。だから、俺が受け入れてやるってことだ。ただし、条件を付けさせてもらうけどな」

「条件……」
 若田部さんは泣いていた。
 肩を震わせ、目から涙を地面にこぼして、声を押し殺して泣いていた。

「まともになろう。明らかに、他者に尽くしすぎる自分を愛すのをやめて、本当に他者のことを愛してくれ。もし、若田部さんがまだそう言う気持ちを少なからず持っているなら俺が責任をもって、手伝うからさ」
 あー、言ってしまった。
 もう、どうにでもなれ、今言った言葉が俺の身にどのような形になって降り注いでくるのかなんてわかってるしな。

「本当です? 責任を取ってくれます?」

「ああ、責任を持つ」
 そう、俺が今、話している最中に言った言葉はすべて真実。
 そのせいで、

「優しいです。私、本当に神田君のことが好きになっちゃいそうです」
 俺の言葉を受け入れた彼女の顔は晴れ晴れとしていた。
 そう、間違いなく重い女である若田部 若菜の好感度を上げてしまったのだ……

 あー、怖いなー。
 まじ、怖い。だって、今までは尽くす自分が好きで相手に尽くしてたのに、本当に好きな相手に尽くすとなったらもっと過激的になりそうだし。

「じゃあ、若田部さん。今日から俺たちは友達で明日からは爪弾きにされた者同士。頑張って社会に馴染んでやろうじゃないか」

「はい。でも、もし馴染めなかったときは神田君が責任を持って私のことを貰ってくれるんですよね?」

 うん、ダメだこれ。普通に悪化してる気がするぞ?

「いや、俺が責任を持つことが前提じゃなくてさ。もっと、周りを」

「ふふ、分かってます。もう一度だけ、周りを好きになってみようと思います。でも、そんな手伝いをしてくれる神田君をまずもっと好きになってみようと思います!」

 あ、うん。

 俺、本当に取り返しがつかないことをしたかもな……。


 そう、この時の俺はまだ知らない。
 本当に俺に好意を抱き始めた、若田部若菜の度が付くほどの献身的で尽くす事の怖さを……。
 
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