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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

5章

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動き出す

「すみません。急なお願いを受けて貰って」
 あの、大学生三人組の代わりに呼んだ人たちに頭を下げる。
 俺が呼んだのは……校門で身だしなみチェックしていた時に、突っかかって来たも、若田部さんの力によって更生した元不良の先輩たちだ。

「いや、姉御のピンチなら掛け付けますって。それに、こういう夏に住み込みのバイトってどこか憧れてましたし。な、お前ら」
 更生した後もいまだなおリーダー格の先輩が一緒に来た人たちにそう言うと、

「そうっすよ。本当にこういう機会はないと思うっす。それに、来年は受験ですし。こういう目立ったことはやりたいっすよ」

「ああ、そうだ。そうだ。俺なんて今は予備校に通ってないから良いけど、通うとなるとお金が掛かるからな……。その足しにもなるしよ」

「というわけで、姉御と神田さん。俺達をこき使ってください。二人には本当に感謝してるんです。あんな、糞みたいな日常から抜け出させてくれたんですから」
 なんと言うか、超能力の力は強力だが、それ以上に元不良先輩たちは素の性格が良かったのだろう。
 こういう風に上手く作用したのは割と思わぬ誤算だしな。

「じゃあ、お願いします」
 そんな気概を見せた元不良の先輩たちにぺこりと頭を下げてお願いをした若田部さん。

「任してください」 
 恩人である若田部さんのために元不良、計6名の先輩たちは手を貸してくれることになった。
 元不良だから大した戦力や使い物にならないのでは? と思われがちだが、更生した一月前とは比べ物にならない程、勉強や素行が良くなっていると耳にしているので問題はない。
 本当は先輩たちにだってしたいことがあったに決まっている。
 力を貸してもらうのなら、きちんとこちらからもフォローを入れなくては絶対にダメだ。

「本当に急ですけどよろしくお願いします」
 このようにして、目先の事を少しでも改善して評価を稼ぐ。
 正直に言おう。子供な俺が必要以上に出しゃばる必要はない。
 ただ、きっかけをきっかけを作って、若田部家が経営している旅館と神田系列とを引き合わせてしまうだけで良いのだ。
 俺は大した力も持っていない。となれば、今のうちにできるのは変に出しゃばるのではない。

「さてと、大学生三人組は何て言ってました?」
 先輩方が仕事に向かった後、俺は少しばかり若田部さんと話をするべくその場に残った。

「それがですね。やはり、楽してましたし、意外となんで首にするんすか? と言った感じに引き下がってきました」

「意外ですね……。てっきり、辞めて良いと言われたら辞めると思ってたんですけど……。やっぱり、不当な解雇になるので急に辞めさせるのは難しいか?」

「今日の所はですけどね。簡単に言えば、先輩方が大きな働き、いえ、普通通りの働きを見せた後に、明らかなさぼりや仕事の雑さを理由に首には出来ると思います。もし、首になりたくなければ真面目になると言った感じでどっちに転んでも悪くはないかと」

「そうか……。それよりも、きちんと伝えてくれたか?」

「はい、伝えておきましたよ。今日から来てくれる人たちは神田君がこの旅館を気にかけて声を掛けてくれた人たちだと」

「で、それに対しては?」

「父も母もありがたい話だ。と言って、直接会ってお礼をしたいと言っています」
 思惑通りの反応。
 こうして、何気ない所で運を売っていき心象を良くしていく。

「いや、まだ。会わない。先輩方がしっかりと働く人たちだって言うのが分かってから会わせて貰うと伝えてくれ。念には念を入れてな」

「はい、そう伝えておきます。というか、神田君。なんと言うか、やり方が回りくどいというか、しょぼいというかそんな気がするのは私だけですか?」

「まあな。俺自体はなんも力が無い。だから、本当に神田系列とこの旅館を引き合わせればそこでおしまいだ。後は放置で行く。というか、それしかできない」
 たかが、高校生の俺には力はない。
 そこを履き違えるな、ばあちゃんの力を履き違えて自分の力だと思い込めばきっと丸め込まれる。
 だからこそ、今は大人しく、でも何かしらをして面識を作る。これこそが今俺にできる最善な事。

「さてと、俺も仕事に戻る。じゃ、また夜」

「はい、神田君。また、夜です」

 そんな風に少しばかりのひと悶着があるも今日もバイトは始まる。








「いやー、神田君。ありがとうねー。君のお友達。凄く、いい子だし。君と同じくらい働くし、本当に助かっちゃう」 
 本日の仕事を終えた俺は休憩室に置いていた荷物を持ち、今現在住む住み込みバイト用に作られた離れに戻ろうとした時に香澄さんから俺を言われた。

「いえいえ、そんなことはないですよ」

「というわけで、神田君にはちょっとしたお礼として。はい、これ」
 手渡されたのは館内の売店で売られているお菓子。
 貰うのも気が引けて本当に貰って良いんですか? と聞こうとしたら、

「あ、ちなみに期限が近いから遠慮せずに食べちゃって。そのくらい、近くなっちゃうと売り場においてもお土産用として機能しないから」
 なるほど、確かに側面の消費期限は割と近い。
 こんなに近くなってしまえばお土産として渡すには適さないしな。

「じゃあ、ありがたく頂きます」

「いやー、本当にありがとうね。じゃ、ゆっくりと」

「はい、失礼します」


 こんな感じで俺は若田部家にどんどんと顔を売って行った。

 そうして、顔が売れて十分に信頼を得た時だ。
 さすがに人手不足の解消に手を貸してくれた俺にそろそろお礼をしたいと、言ってきた若田部さんのお父さんの呼び出しに応じる。

「この度は本当に助かりました」
 礼儀正しい若田部さんお父さん。
 そんなお父さんと会話を繰り広げ、ある言葉が出るように話を誘導する。

「その、若田部さんの、いえ、若菜さんのお父さん。この旅館っていつからあるんですか?」

「歴史はそれなりですけど、ここまで大きくなったのは先代からでそれまでは細々とした旅館でした」

「なるほど……。もしかして、今が過渡期ですか?」

「まあ、そう言う事になります。来年には別館が出来ますし、これからも大きくしようとは思っているのですが……」

「ですが?」

「いえ、これは神田君の前で話すことではないです。すみませんね、変なことを口走ってしまい」

「いえいえ、不安を抱えているのは誰だってありますよ。良ければ、話を聞かせてください。知り合いにこうした旅館の経営に携わる人も居るので。もしかしたら、力になれるかもしれません」
 知り合いにそんな人はいない。
 いや、ばあちゃんにはいるのであながち嘘ではないけどな。
 安心させて、口を割らせるための嘘だ。

「そうかね? 実はこの旅館の規模が大きくなりすぎてもう私じゃ制御できそうないんだ。だから、色々と考えてはいるんだけど。中々手が伸びなくてね……」
 ……若田部さん。
 どうやら、お父さんは色々と分かっているようだぞ? もう、一人じゃどうにかできないってことを。
 あれだな……きっと子供たちには苦労している姿を見せたくなくて虚勢を張っていたのかもしれない。

「確かに、知り合いも言っていました。旅館は大きくなったり、儲かっている時が一番経営が危なくなるって。知り合いにもそんな時期があったそうで」

「……ちなみに、その知り合いはどうやってその時期を乗り切ったのかね?」
 正直な所、若田部さんのお父さんは相当に追い込まれてるのがわかる。
 カウンセリングを受けたことがある俺だから分かるけど、軽いうつの初期症状とか、経営に関する大事なことを俺に聞く時点で相当に酷い。
 だけど、これはチャンスでもある。
 一介の高校生である俺の言葉を上手く聞き入れて貰えるチャンスなのだ。

「他の旅館を経営している企業に自分の旅館を売り込みに行って株式会社化して、株式を一定数買ってもらい。その大株主となった他の旅館を経営している企業と結びつきを得て、仕入れルートやら人手不足の解決をお世話になったらしいです」
 実質的な子会社化だ。
 要するに俺は遠回しに旅館を売れと言っている。

「それは……旅館を売るという事じゃないのかね?」

「はい、そうです。状況が状況で、売らざる負えなかったらしいです」

「売らざる負えない状況とは?」

「ここと同じように別館を立ててしまったんです。ですけど、人手不足でまともな経営が出来なくなり始め、評判もがた落ち、儲けが無くなって別館を立てる際に掛かったお金を払いきれずに借金を抱える可能性が出てきたらしくて……それで仕方が無く……あ、すみませんちょっと電話が……」
 と言って、若田部さんのお父さんがいる部屋から抜けだす。
 勿論、電話など掛かってきていない。
 むしろ、これから電話を掛けるのだ。

『もしもし、若田部さん?』

『はい、神田君』

『仕上げだ。力を貸してくれないか?』

『わかりました。今、行きます』
 電話をきり、俺はお父さんが待ち構えている部屋に戻る。

「すみません。急に電話が来てしまい」

「いえいえ、気にしないでください」

「そう言えば、さっき、お客さんから聞いた話なんですけど……」

「何かね?」

「ここの別館を立てている建設会社。経営が良くないとか……」

「……それは本当かね?」

「はい、私が言う事じゃないと思ったんですけど。お客様から執拗に完成する前に潰れるかもしれないから、破産して逃げられる前に手を打てとしつこく……。本当にそうなのかわかりませんが一応、言っておいたほうが良いかなと……」
 これは嘘だ。
 不安を煽り立てるための嘘。
 そうして、俺が不安を煽り立てていると、

「すみません。神田君がいびられてないか見に来ました」
 若田部さんが現れる。

「いびっていません。安心しなさい。若菜」

「はい、そう見たいですね」

「ああ、それじゃあ二人とも。時間が遅いし、このくらいで」
 お礼を終わらせるタイミングとして良いと思ったのか、俺と若田部さんを部屋から出そうとする。
 その際に若田部さんは少し、お父さんの部屋に残りこう言った。

「本当にうちの旅館は大丈夫なんです?」
 嘘が分かる超能力を共有させて、言葉の重みをあげた状態での発言。
 そう、とどめを刺す、一言。

「……」
 迷いが生じたのがはっきりと分かる。
 これで、きっとお父さんは……。

「じゃあ、私もこれで」
 若田部さんは部屋から抜け出し、俺と歩きながら話す。

「これで、後は巧な言葉で神田君が手配した旅館関係の人がこの旅館を乗っ取って行く。なんと言うか、最低な事をしている気分です」

「ああ、最低な事だ。結局は成功させるために若田部さんの力を使ったし。というか、これでうまく行かなければもう一度、お願いすると思う」
 お願いとは言葉を重く感じさせて説得させることだ。

「はい、分かってます。というか、私こそダメだった場合説得しないといけません。この旅館ではなく、私達家族の未来が掛かっているんですから」

 


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