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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

5章

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ひと夏の思い出8

 立ちはだかるのは白色をした扉。
 その扉を叩こうとするも、どうも嫌な汗が流れてくる。

「ふう……」
 叩こうとしているのは波豆さんの離れにおける部屋の扉。
 その扉を叩こうとするも、あの時にされた色々なことがフラッシュバックして渋らせているというわけだ。
 数分間に及びその葛藤は続きとうとう手を伸ばした時、扉が一人でに開く。

「あ、ヨシ君。どうしたの?」
 開いた理由は簡単、波豆さんが内側から開けたまでだ。

「いや、その……。なんというか、最近どう?」
 こうしてみると、波豆さんとしっかりと話そうとするのは本当に久々だ。
 バイトで忙しくなる前からそれとなく距離を置いてしまっていたし。

「はは、久しぶりだよ。こうして、ヨシ君から話をしに来てくれるなんて」

「まあな」

「じゃあ、立ち話もなんだし入りなよ」
 少し足の動きを渋らせながら俺は波豆さんの部屋に入る。
 いや、もうあんなことはされないのは分かってるけど……とか警戒しながら波豆さんの部屋に入り椅子もないしベッドの上に腰かければ? と言われたので座る。

「で、どうしたの? 急にさ」

「最近、話してなかったのもあるし。京香が波豆さんが仕事をミスして落ち込み気味だって言ってたから、少し励ましに」

「うん、それはありがたい話だね。だいぶ、私も落ち込んでいたし。というか、最近のヨシ君って冷たいからなー。理由は分かるけどね」
 といったように本人にも苦笑いしながら俺に避けられている理由を理解しているわけで……。

「……」

「……」
 静けさが続き、互いに気まずいまま時間が過ぎていく。
 そんな静寂をぶち破ったのは波豆さんからだ。

「あの、ヨシ君。本当にごめん。あの時は本当にやり過ぎちゃった」

「いや、まあ。波豆さんなりの俺が周りの関係を壊したくないためにやったと言うのは分かってる。だって、あのままだと俺は確実に波豆さんだけ見て……。その、なんと言うか、たぶん一番に思ってた」

「はは、そう言われると本当に惜しいことをしちゃったかもね……。今になってすっごく後悔してるよ」

「俺としてみれば感謝だけどな……。あのままだと本当に色々とまずかったし」
 今思えば、あの状況は本当に不味かった。
 いや、あのままで良かったのかもしれないとか思うけど、すべてを失っていたかもしれないと思うと……。

「それでも避けすぎじゃない? 私の事をさ」

「いや、避けるつもりはない。避けるつもりは……」

「いやいや、思いっきり目を背けているじゃん。ほら、避けるつもりがないなら私の目を見てよ」
 そう言われたので避ける意志はがないと言うのを知らしめるべく目を見た。
 久々に見た波豆さんの目を見ただけで鼓動が早まる。

「はあ……。目を見てくれて誠意に答えようとしてるのは分かるよ。けどさ、ものすごく顔が強張ってるというか嫌そうな顔なのはどうなの?」

「いや、嫌じゃ……」

「ふーん。じゃあ、これは?」
 俺の頬に人差し指が伸び頬を突きに来たわけだが、

 バシっという音が鳴り響く。

「はは、流石にそれは酷いよ」
 思いっきり突いてきた手を払いのけてしまった。
 それも予想以上に強く。
 さすがに今のは無い。あまりにも酷すぎる行動だし謝らないとダメだ。

「波豆さん。ごめん、流石に今のはなかった」

「というか、私的にはこのままだとずっと変な距離感はさすがに私も嫌かな?」
 避けられているのが心底嫌なのか、手をもじもじとして複雑そうな顔をずっとしている。
 分かってる。あれは俺を止めるためにした致し方ない嫌がらせじみたことなのは分かってるけど。体がなあいう事を聞いてくれない。

「……よし、決めた。波豆さん、今度こそ避けない。だから……好きな所を好きなだけ触ってくれ」

「へー、良い度胸だね。じゃあ、行くよ」
 波豆さんの手が俺の右手に伸びていく。
 そして、俺の手を握りしめ、拳を開かせてその手をしっかりと握る。
 その手に何かを押し込んでいく波豆さん。 
 加えて、触られてみると触る前ではあれほど嫌だったのに意外と平気だな……。

「なあ、波豆さん。俺の手に押し込んだ紙みたいなものは?」
 いまだ手は握られており開くことはできない。

「ああ、それはね。大事な大事な情報。調ちゃんに調べてって言われたからその結果が書いてある。うーん、私もその紙に書かれていることを知ったらちょっとやばいかなーって思ったせいで今日は大きなミスをしちゃったんだよ」

「そんなに取り乱すことが書かれてるって事?」
 波豆さんを取り乱させてミスをさせるほどの情報。
 その情報が何を意味しているのか生唾を飲み込むくらいに張り詰めていく。

「さてと、ヨシ君もきちんと避けるつもりはないっていう誠意を見せてくれたし。手を握るのを辞めようか」
 握られた手が名残惜しそうに離れていく。
 波豆さんの手は暖かくて男の手よりも華奢で何一つ怯える必要もない優しい手だった。
 優しい手つきで手を握られたこともあり、波豆さんに対しての恐怖というか顔を合わせづらくさせていた嫌な感覚も随分と和らいだ。

「波豆さん。今、見ても良いのか?」

「あ、しっかり目を見て言ってくれたね。いやー、私を避けないでっていう思いが伝わったのかな? あ、むしろ今すぐ見たほうが良いよ」

「わかった。見させてもらう……」
 手の中にあった丸められた紙を開き内容を目にした時だ。

「なあ、これは本当なのか?」

「調ちゃんから聞いた時は私も自分の耳を疑った。でもね、私はきちんと調べてきたし。紛れもなく事実。証拠もあるしね」
 そう言ってポケットから出てきたのは一つの機械。
 機械の正体は……。

「調先輩用のボイスレコーダー……」

「これってかなり前の型版だけど、すごく性能は良いからね。調ちゃんが使えってさ」

「という事はそれに証拠が収まってるのか?」

「うん、そうだよ。この旅館は嫌がらせを受けている証拠がね」

 紙にはこう書かれていた。

『この旅館は嫌がらせを受けている』と。

「というわけで、ヨシ君。調ちゃんにこの旅館を引き込んで顔を売れって言われたでしょ。だけど、それは自分の手に負えないし下手したらこの旅館の良さも何もかもを失うと思ってできないって思ってた」

「ああ、そう思って答えを先延ばしにしてたな」

「その答え。今出さないと相当に不味いことになる」

「具体的には?」

「この旅館は土地を担保にして別館を立てる費用を捻出してる。だから、もし今のうちに手を打たないとこの旅館は乗っ取られる。というわけで、次はこれを見て」
 波豆さんはポケットからスマホを取り出してある画像を表示させる。
 それは工事現場のようでまるで何もできていないかのような骨組みの写真。

「これは?」

「来年出来る別館の写真」

「え? こんな様子で来年に完成するのか?」

「ううん、しない。加えて資金繰りがやばい会社が何とか作業してる。たぶんだけど、完成前に建設会社が倒産する。加えて、この写真を見て……」
 画面にもう一枚写真が表示される。
 どこもおかしな感じはしないがきっと何かが隠されていると思って頭を悩ませていると。

「ヨシ君。調ちゃん曰く、これは手抜き工事。耐震性が低くて水道管の配置もすべて手抜きがされてるらしいんだよ」

「は? それって……」

「言ったでしょ、資金繰りがやばい会社が何とか作業してるって。要するに欠陥工事をされてる」

「それって、まさか……」
 先ほど、波豆さんが別館についての話す前の内容を思い出して欲しい。
 この旅館は嫌がらせを受けている。
 でも、だからって……。

「たぶん、ヨシ君が考えている通りだよ。この別館の件も嫌がらせの一つ」

「でも、一週間が経った今報告してきたわけは? 調先輩ならもっと早く気が付いてたんじゃ……」
 調先輩ならもっと早く気が付けていただろうにと思って聞いてみると……。

「中々に尻尾が掴めなくて大変だったらしい。だから、一週間が経った今やっと報告できるレベルになったって感じ」

「とりあえず、この話は若田部さんにしないとダメじゃないのか?」

「そ、だから。若菜ちゃんにも今日は早く上がって、こっちに来てと言ってある。まあ、ヨシ君がこうして来てくれたから先に説明し始めたわけ」

「なるほど」
 何かすごくやばいことが起こり始めている気がする。
 そう思って色々と思考を張り巡らせていると、

「さてと、皆が来るまで時間があるし。というか、ヨシ君。私と普通に目を合わせられてるけど。私に対する嫌な意識は無くなったのかな?」

「手を握られたら割と平気に……というかなんでわざわざ紙に書いて俺に知らせたんだ?」

「え? 雰囲気? 本当に紙で伝えた理由は何もないよ。じゃあ、もう一度手を握って見て良い?」
 そう言って手を伸ばしてきたのだが、

 スルリと俺は手を引っ込めてしまう。

「あ、ごめん。さすがに完璧に嫌な意識がなくなったわけじゃないみたいだ」

「はは、うん。やっぱり、避けられるのは地味に傷ついちゃうなあ……」
 ため息交じりのその言葉に申し訳なさを感じる。

 うん、本当にごめんとしか言いようがない。





追記:超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です……に作品名を変更しました。
理由は簡単、タイトルは作品における看板なので少しでもシリアスを匂わせておいた方が良いかなと。
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