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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

5章

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ひと夏の思い出6

「あー、疲れた。さすがの俺も連勤で朝の早番はしんどい」
 昨日と同じ面々で朝食の用意に取り掛かる厨房の中三条さんが愚痴を言っている中、俺はお客様に言われたあることを確認すべく話しかけた。

「すみません。お客様から言われたんですけど、アレルギーで食べれないものがあるから代わりに何か出せと高圧的に言われたんですけど……」

「あー、うちはそういうサービスはやってねえしな……。とはいっても、好木君に最後まで対応させるのはさせたくねえしなあ……かといって他のやつも忙しすぎて対応にまわれねえだろうし。はあ……仕方ねえ、俺がちょっと出るか」
 クレームに対して対応できる俺以外に厨房と食堂を行き来している従業員がいなかったので仕方がなく三条さんがどうやら対応しに行ってくれるらしい。

「すみません。お手数をかけて」
 忙しい中手を止めさせるのが申し訳ないので謝ると、

「いや、そんなことねえよ。こういうことをするのは普通だ。普通」
 と対応に向かってくれるのであった。
 本当に頼りになる人だし、本当に良い人だ。

 とか思いながら俺は自分の仕事である配膳という作業を繰り返していると、

「かー、疲れた。接客はあんまし好きじゃねえんだよな……」
 クレーム対応をして少し気苦労していた三条さんがちょうど俺が厨房にいる時に戻って来た。
 確かにクレーム処理なんて良いものじゃないし当然か。

 少し、問題はあったが昨日とおなじく朝のピークを乗り切り昨日と同じく香澄さんの所に別の仕事を貰いに行くと……。

「はー、俺達は大変な仕事をしてるってのに。いつもどこで仕事をしてんだか」

「ああ、まったくだぜ。俺達は汗水たらして働いてるのによお」
 大学生組の田代とその他二人に嫌みったらしく、わざと俺に聞こえるように話をした。
 確かに俺はあの三人とは違う仕事をしているけど、楽をしているわけじゃない。 
 むしろ、俺が嫌みったらしくあの三人にもっとまともに働けば? といいたくなるくらいである。

「……」
 しかし、そんなことを言ってしまえば喧嘩になるのは目に見えている。ひと悶着を起こして一番迷惑するのは俺でもあの三人でもなくこの旅館。
 友達の家がしている旅館ともなれば迷惑を掛けたくなるしグッと言いたくなった気持ちを抑え込む。

「はいはい、そこの三人は休憩は終わり。各自、仕事に戻って」
 香澄さんがちょうど入って来て、三人を追い払うようにして仕事に向かわせる。
 当然俺はこの場に来たばっかでさっきまで厨房で働いていたので休憩を取ろうと席に着くと。

「っけ。俺達は仕事であいつは優雅に休憩かよ」

「だな。はー、なんで俺達が苦労しなくちゃいけねえんだろうなー」

「おいおい、そんな事言って聞こえるだろ? ほら、傷ついちゃうからやめろって」
 と笑いながら俺を乏してきた。

 ……ああ、ムカつく。
 なんだろう、普段我慢強くてもやっぱりムカつくもんはムカつく。

「神田君。ごめんなさいね」

「いえ、大丈夫です」
 ムカつく感情を今まで受けてきた事を思い出して、心を落ち着ける。
 そう、あの自重していない時に受けた数々を思い出せ、向こうのほうがストレス指数は高かったはずだ。
 というわけで、嫌がらせじみたことを思い出すのだが、

「神田君。どうしたの? 急に暗い顔して本当に大丈夫?」
 心配されてしまうほどに顔色を悪くする。
 俺が思い出した嫌がらせじみたことで今もなお鮮明に残っている波豆さんからされたあの事を思い出してしまった所為である。
 後々、あれは俺が一線を越えたくないという思いを尊重し傾き始めた思いを逆に傾けるためにした致し方ない事と説明されたものの。
 やはり、恐怖は消えない。

「あ、はい。この暗い顔はさっきのとは全然関係ないので」

「それよりも。お姉ちゃんとして聞くけど。昨日、若菜ちゃんが自分の部屋にいなかったんだけど。そのあたり何か知ってる?」
 何か含みのある顔だ。 
 確かに妹がアルバイトとして男の子を連れてくるなんて彼氏とか、それに近い中とか勘繰られるのも致し方ない。
 だが、自重していない時にはほんの少しでも発言をミスれば大変だった。
 それすなわち、

「あー。確か、俺と一緒に来た友達の部屋にいましたよ」
 ちょっとのことで動じて変なことを口走る俺ではない。

「嘘は良くないよ。神田君。首筋にちょっと残ってるよ?」

「いや、そんなわけないですよ」
 首筋にすら確認の目を向けない。 
 よくある、やましいことを吹っかけてぼろを出させる戦法など俺には通じないのだ。

「まあ、その様子だと本当に何もしてない様子かな?」

「事実、何もしてませんし」
 疑いの目を上手く掻い潜る事は上手くいく。
 家族に付き合っている人と思われても正直に重いし、めんどくさい。いや、本当に好きで好きで別れようもなかったりするなら別だけどな。

「そう言う潔いところがあんなところで上手くやっていけるコツなのかな?」

「あんなところ?」

「神田君の周りだよ。神田君の友好関係は男女比的にあり得ないから。なんで修羅場にならないのか不思議なくらいじゃないの?」
 確かに男女比が妹を抜いたとしても三対一ともなりゃ、色恋沙汰で拗れているのを疑うだろう。
 というか、俺も良く今の関係を続けていられるなとか思ってる。

「まあ、色々と気を付けてるので」

「だけど、傍から見たら女たらしでしかないからね。変な噂には気を付けなよ? じゃ、適度に休憩したら仕事に戻ってね。私も仕事に戻ります」
 確かに噂には人一倍気を付けて行動しているが、今となっては俺はホモ疑惑も流れ女の子達からは都合のようにこき使われ、弱みを握られているかわいそうな人とか根も葉もないうわさだらけだ。
 色恋関係での噂が立たない様にしたおかげでそう言った悪くない感じに収まっているしそこらへんは大丈夫だろう。

「さてと、香澄さんも仕事に戻って行ったし。俺ももう少し休んだら仕事に戻るか……」
 喉をお茶で潤したりしていると、さっき出て行ったばかりの香澄さんが休憩室の方ではなくすぐ横にある事務所に戻って来たようだ。
 何やら話し声が聞こえるし。

「一体何があったんだろうな……」
 そう呟いていると、事務所側から休憩室に香澄さんが再び入ってきた。

「神田君。先ほど事務所の方に神田君の携帯に繋がらなかったそうで電話があったのだけど君のおばあ様が倒れたと秘書?さんの方から連絡がありました」

「え?」

「神田菊代さんが過労で病院に運ばれたそうなの。倒れた場所はここから離れてるし、本人も今は意識ははっきりしているし元気になったと念を押して伝えてとのことらしいのですが……。休みにしてお見舞いに行きたいのであればこっちは止めません。どうする神田君?」

「とりあえず、大丈夫は大丈夫なんですか?」

「はい、そのことはよく伝えてくれと言われました。さて、どうしますか?」

「あー、すみません。行くか、どうか決めるのは電話をしてから様子を確認してからでも良いですか?」
 過労で倒れたのか……。
 年も年だし心配で様子を見に行きたいけど。ばあちゃんの事だし行くって言ったら来るなって絶対に言うというか、念を押して倒れたけど大丈夫だと伝えてきた当たり来るなって事を遠回しに伝えてるに違いないけど……やっぱり心配だ。

「勿論。取りあえず、電話をしてからか……。じゃあ、行くかどうかは決まったら報告お願い」

「はい、わかりました」
 電話する時間を貰った俺は離れの方に戻り自分の携帯電話でばあちゃんに電話を掛ける。

『はい、神田菊代です』
 電話に出たばあちゃんは意外にも元気そうな声をしている。

『ばあちゃん。好木です。体調は大丈夫なの?』

『ええ、大丈夫ですよ。でも、一応伝えておくようにと秘書の方に頼んだだけですから』

『うん、大丈夫なら良いんだけど。本当に大丈夫なんだよな?』

『心配をありがとう。好木、海田加奈さん関連であなたは何を思いましたか? もしあの事件を通してあなたがしたい、やりたいことがあるのなら。なおさら、私が元気なうちに無茶しなさい。権力もコネは大きな力。使えるうちに使ってあなたの目的を果たしなさい』
 この前に海田加奈さんの関連の報告をばあちゃんにした。
 その際に俺が抱き始めたあの目的、『超能力者が利用する世界』を果たすと言うのをそれとなく感づかれているのだろう。

 だから、自分が生きている内に自分の力を使えという事か……。

『本当に体は大丈夫なの?』
 ばあちゃんに言われた事を濁すのかのように体を気遣う。

『はい、大丈夫ですよ。だから、お見舞いに来なくて良いですから。私は今青森の病院で横になっていますので来る方が大変ですよ』

『わかった。お見舞いには……行きたいけど行かない。体に気を付けて』
 そう言って電話を切ろうとすると、

『好木。もう一度言いますが、私もいい年です。出来る限り、あなたと京香に多くの物を残したい。お金は残せるかもしれませんが、人脈、コネ、発言力、権限、そう言ったものは普通では残せません。だから、もし今言ったものが欲しいのなら……普通を辞めなさい。では、失礼します』
 ばあちゃんの方から電話を切られる。

「普通を辞めるか……」
 調先輩にも言われた。あの望みを叶えるには普通じゃダメだと。
 そのことを今一度俺は考えるのであった。


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