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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

5章

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ひと夏の思い出5

「ふう、疲れた」
 調先輩と話した後、俺は離れにある自分の部屋で体を休める。
 明日も朝が早いのだがやはり息抜きは必要でスマホを弄り軽くネットの海に身を投げ始めるのだが……。

「普通じゃダメか……」
 調先輩に言われたことが頭から離れない。
 俺が目指し始めた超能力者が利用されるのではなく、利用する世界。それを実現させるのは難しいことくらい分かっている。
 だからこそ、先輩のあの発言がまとわりつく。

「だからって言って。この旅館を引き込むのははあ……」
 しかし、若田部さんの家を神田系列のホテル事業に統合するとなると話は違う。
 普通じゃダメ、それに付きまとう様々なことが億劫でしかない。
 そんな時だ、部屋のドアがコンと軽く叩かれたので外に出ると、

「あ、神田君。お疲れ様です」
 若田部さんがいた。
 着ているのは仲居さんの服装そのままという事は俺達よりももう少し仕事をしていたのだろうか?

「ああ、若田部さん。どうしたんだ?」

「ちょっと、お話があるのでお邪魔しても良いですか?」

「良いけど」
 と言って、我が家の部屋に比べると殺風景な今俺が住んでいる部屋に若田部さんを入れると、余程疲れていたのか備え付けの二段ベッドの一段目に横たわる。

「はあ、疲れました」
 どうやら、若田部さんも疲労困憊なのは俺達と変わらないようだ。
 しかし、横たわると言うか、体を投げ出して大の字をしたのもつかの間、すぐに体をあげる。

「で、話って何なんだ?」

「あれです。なんと言えば良いんでしょうか。本当にありがとうございます」
 ベッドに座ったかと思えば立ち上がってぺこりとお礼をしてきた若田部さん。

「どうして急に?」

「いえ、急になんかじゃないですよ。こんなにも辛い仕事だというのに誘ってしまった私がお礼に行かないなんてダメに決まってます。というよりも、私が思っていた以上に神田君に人手不足のしわ寄せが行ってしまっているようなのできちんとお礼をしないとなと」
 このくらいにこき使われるのを覚悟してバイトに来たが、確かに想像以上にこき使われている。
 そのことを若田部さんは分かってるからこそ、お礼に来たのか……。

「給料を貰ってるんだからな。当然だ。当然」
 ここで、「まったくだよ」とか声をあげるわけにもいかずおのずと口はそう動いていた。
 でも、あの田代は普通に言いそうだけどな。

「いえいえ、それでも神田君の労働時間を聞きましたけど。今日もかなり早くから働いていたらしいじゃないですか。しかも、休憩もほとんど取っていないとも聞きました。やっぱり、辛いようなら仕事を減らしますし、辞めて貰っても構いません」

「そんなことを若田部さんが勝手に決められるのか?」
 まあ、この旅館の跡取り? みたいな感じだし決められるには決められる立場だろうけどさ。
 とはいっても、高校生。そんな力を本当に持っているのだろうか?

「いえ、できないですよ。でも神田君が辛くて辞めたいのなら私はそれを無理でも押し通します。とはいっても、内心は今なんでこんなことを聞いてるんだろうなって感じですけどね。なんだかんだで辞められたら困りますし。意外なほど儲かってますけど、別館を増改築したりしているので案外お金はないんです。だから、評判が落ちたら普通に借金が残るかもしれませんので」

「凄い重い話をされると反応に困るとしか言えないけど。まあ、辞めるつもりはないから安心してくれ」

「その言葉を聞いて安心しました。まあ、こうしてきたのは辞められない様にフォローするためでもあるんですけどね」 
 ちょっと黒い内心を暴露してしまうところがとことんお人よしで他人に尽くす若田部さんらしいな。

「さてと、話はこれで終わりなのか?」

「いえ、もう少しだけ。神田君。ふと、聞いた事なんですが、なんでお姉ちゃんは下の名前で呼んでいるのに私の事は呼んでくれないんです?」
 至極当然なことを言われる。
 確かに付き合いを長い方を他人行儀に苗字で呼び続けるのもおかしな話だ。

「うーん……ずっと若田部さんってずっと呼んでるし。今更になって呼び方を変えるのもなあ……」

「それもそうですね。私も今となっては神田君に若田部さんと言われるのが妙に落ち着きますし」

「だろ? でも、嫌なら呼び方を変えるけど」

「はい、そうですね。呼び方を変えて貰うのもありかもしれませんが。でも、取りあえず今はこのままで。さてと、なんだか一息ついたら動きたくなくなってきました」
 そう言ってあまり見せないだらけた感じでベッドにまた倒れこむ。

「いや、明日も早いし帰った方が……」
 自重し始めたとは言え、なんだかんだでリスクは下げたいわけでとか思っていたら。

 すぅ、すぅと軽く吐息を吐きながらすでに寝てしまっているのであった。
 その寝顔はとてもかわいらしくやわらかな頬をつい突いてしまいたくなるほど。可愛らしい寝姿を見た俺は起こすのも悪いと思い毛布を掛ける。

「さてと、起こす時間はどうすれば良いんだ?」
 とか寝かせたは良いものの起こす時間を知らなくてはと思ったのと同時に携帯が震える。

『あなたと同じくらいで平気なはずよ』
 と調先輩からのメッセージが届く。
 うん、やっぱり先輩の前じゃプライバシーはないも同然だな。

「よし、俺もシャワーを浴びて寝るかと言いたけど。正直、俺もそんな気力はない。朝、起きてから浴びに行けば良いか……」
 眠りにつくべく、昨日までは二段ベッドの下の段を使っていたのだが上の段に上り眠るのであった。

 こうして、夜は更けてまた朝がやって来る。

 pipipiと電子的なアラーム音が響く。
 その音の正体は言うまでもない目覚まし時計だ。とはいっても、スマホに内蔵されているアプリのだけどな。

「ふう、もう朝か……」
 気だるい体を起こして、二段ベッドの上の段から降りる。
 そして、下の段で寝ている若田部さんを起こす。
 だって、彼女も普通にお風呂に入っていないだろうし、身なりを整える時間がいるに決まっている。

「若田部さん。朝だ。起き……」
 起き抜けに凄いものを見てしまった気がする。
 仲居として働いている時に来ている着物の胸元が盛大にはだけているし、寝苦しくてブラさえ外したのだろうかなんというか大きな双丘? が広がっている。

「ん? あれ、もう朝ですか……」
 目を軽くこすりながら起き上がる若田部さん。
 依然とはだけている胸元はその動きと連動して動く。

「ああ、朝だ」
 しかし、俺は一線を越えて関係がバラバラになるのは御免だ。
 皆もそのことを理解したからこそ、俺が一線を越えようとしたらNOというようになったわけで……。
 そう、やましい気持ちを持ってはいけない。

「あ、だいぶ胸元がはだけていましたね。だけど、前のように自重しないで誘惑するつもりでやったわけじゃないので許してください」 
 胸元を引き締めて見えなくする若田部さん。
 なんだろう、前は見てください! とか言ってきそうなもんだが本当に自重してるのが良く分かる。

「さてと、若田部さん。そこまで、仕事始めまで時間がないし俺はシャワーを浴びてくるから」

「はい、私も着替えたりしないとなので自分の部屋に戻りますね」

「じゃあ、またあとで。といっても、いつ会えるか分からないけどな」
 仕事の際には意外と会わないもんだし、今日も夜遅くまで働きとおすわけで、おのずと会える時間なんて存在しない。

「会いに来ますよ。だって、神田君を辞めさせない様にするために少しでも気を良くしてくれるようにという感じで。あ、さっきの眼福なあれは神田君を引き留める為に見せたんですよ?」
 なんという軽口だろうか。自重する前はマジで今言った引き留める為という事は正解のように聞こえたに違いないのだが、自重しているとなるとそうは聞こえなずに本当にハプニングだったとしか言いようがない。
 調先輩同様に冗談交じりで返答しようと思ったが、またあのようなことをされたらたまらないわけで。

「はは……」
 変な苦笑いでその場をやり過ごそうとしたが。

「なんですか、その反応。冗談くらい、冗談で返してください。私が恥ずかしいんですよ?」
 しかし、人の性格はそれぞれ。 
 不意打ちはされなかったもののちょっぴり叱られてしまうのであった。

 さて、若田部さんと話せて元気をもらったし今日も頑張るとしよう。





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