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超能力を使える女の子が俺を落とそうと必死に動いているけど、一人と付き合った時点で俺の人生が終了な件について。加えて世間は物騒です…… 作者:くろい

5章

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ひと夏の思い出4

「ふう、やってみましたけど。大丈夫ですか?」

「おう、意外とできてるな。欲を言えばもう少しこれをこっちに……」
 小鉢に盛り付けた料理の彩を箸で調節する三条さん。
 そう、今俺は忙しさのあまり、本当はバイトには任せないレベルの仕事。昨日やったような簡単な盛り付けから丁寧に盛りつけなくてはいけない工程を試しに行っている最中だ。

「なるほど……」

「じゃ、もう一回やってみていけそうなら頼むな」
 そう言われたので集中力をフルに働かせ小鉢に料理を盛りつけ、それを三条さんに見せると。

「よし、これなら大丈夫だ。というわけで、どんどん頼む」
 こうして、小鉢に綺麗に盛り付けるという一介のバイトならしないようなことをし始める。
 きれいに盛り付けると言うのは繊細で丁寧な仕事。それは集中力と神経がいるわけで、中々に時間が掛かってまうし、本当に気苦労するわけで……

「ふう……」
 非常に疲れる。
 しかし、手を止めるわけにはいかず軽く息を吸って吐いて平静を保ち続けるしかない。
 だが、自惚れるように言うが俺は超能力者。普通の人よりも集中力はある。とポジティブに考えながらひたすらと作業を行うのであった。

 それから数十分。

「良し、何とかできた。三条さん、こっち終わりました」

「おう、ってもうその作業に慣れたのか? 少し手直し覚悟だったんだが、見た感じどれも出せるレベルの盛り付けだな。良し、今度は昨日と同じように配膳を頼む」

「はい、えっと一番奥の方が確か食堂に来るのが早い人でしたっけ?」

「ああ、そうだ。あそこの席は昨日も早く来てたし、なるべく早くで頼んだ」
 少しこなれた俺は器に入った料理がこぼれない程度を知ったし、とろとろとした足取りからまだぎこちなさが残るものの軽快な足取りで運んでいく。まあ、気のせいかもだけど……。

「良し、これで終わりと。次は……」
 といったように次々と仕事をこなしていく。

 その時だ。
 足を躓かせお皿こそ落としはしなかったものの持っていた器にしっかりとおさまっていた料理をこぼしてしまう。
 っつ。やってしまったな……。
 そう思った俺は大急ぎで厨房に戻り、三条さんが目の前にいたのでこぼしてしまったことを伝える。

「すみません、運ぶ際中に落としはしなかったんですけど器からこぼしてしまいました」

「おう、この時期はそう言うのを見越していつもより多く仕込んである。だから、気にせずに落ち着いて行動を頼む」
 なんと言うか、すごく安心感を覚える。
 こうも、頼れる人がそばに居てくれるのはありがたい限りだ。
 やはり、こう言ったところは場慣れしているんだろうな……。
 よし、俺も迷惑を掛けない様に落ち着いて行動しよう。自分で早く運べるようになったなと自惚れてた俺が悪い。
 きちんと、緊張感を持って行動しよう。

 こんな感じでずっと動き回っていると……。

「とりあえず、お疲れ。今日はこれで終わりだ。やっぱり、辛いなこの時期はよお」
 三条さんが仕事が落ち着くと愚痴を言い始める。

「バイトの身ですが本当に疲れますね。これ……」
 対して、俺も愚痴を言わずにはいられない程疲れていた。

「だろ? この時期はマジでやばいんだよ。部屋に料理を運ぶサービスはとっくの昔に辞めたんだけどよ。依然として、大きな畳の宴会場で食事を提供してるんだけど。それがあるとマジで死ぬ。てか、今日のお前が小鉢に盛り付けていたのは宴会場の人に提供するもんだったんだよ。厨房から宴会場までそれなりに距離もあるし一度に運べる量を考えると盛り付けも変えなくちゃならねえ。だから、マジで大変なんだよ」

「そうなんですか。だから、今日は女の仲居さんが厨房に多く来てたんですね」

「おうよ。てか、女の方も正直すげー大変だと思うぜ。お客さんの対応から、食事中に布団を敷きに行ったりとかな。確か、好木君は女友達と来てるんだっけか? いやー、青春だな。仕事三昧だけどな」
 そう、確かに女の子と一緒に同じ場所で住み込みをして働くのは青春の一ページを飾るには相応しい。
 しかし、気が付けば昨日からあってないし、何をしているかさえ知らないのだ。
 ちょっとそこらへんが悲しい所だな……。

「さてと、今日はこれで終わりですよね?」

「おう。好木君はこれで終わりだな。ま、俺はこの後も仕込みだけどな。っと、そうだ。まだ、腹に余裕はあるか?」
 仕事がひと段落したとき賄として作られた料理を食べたが、意外にもお腹には余裕がある。

「はい、大丈夫ですけど……」

「よし、ちょっと待ってろ。今日の料理で残ったメインがいくつか残ってんだよ。だから、食ってけ。まあ、仕事は大変だし。辞められたら困るからな、賄賂みたいなもんだ」
 大それたことはしていない気がするも三条さんは冷蔵庫から本日のメインで出した赤身とさしのバランスが良いお肉を焼き始める。
 肉は当然品質が良いので本当に軽く表面と中を温める程度に焼かれた肉の上に和風のたれがかけられた非常に食欲がそそる逸品が俺の手元にやってきた。

「ありがとうございます」

「おうよ。さ、他の奴らにバレないうち食っちまえ」
 ご厚意に甘えて俺は出された料理に舌鼓を打つのであった。


 それから、俺は離れの方に戻ると調先輩に出くわす。

「あら、好木。あなたも今終わったのかしら?」

「まあ、そうですけど……先輩も?」

「ええ、そうよ。ものすごく、疲れてるわ。ま、あなたも同じく疲れているようだけどもね」

「はい、ところでそっちはどういった仕事を?」

「主にお客様に関係する仕事ね。面と向かって対応したりと、あなたより人前に出る仕事よ。内容は……多すぎて話すのが面倒櫛からパスよ」

「へー、そうなんですか。ところで、京香はどういったことをしてるか知ってます?」
 やはり京香については兄として何をしているか知っておかなければならないので、聞いてみると、

「安心しなさい。文字通り、バイトではなくお手伝いみたいなことをさせて夜の7時前には離れに帰されてるわよ。直接、お客さんの前にも立つことはないし。心配は無用よ」

「それは良かった……。もし、俺みたいにこき使われてたらさすがに兄としてそれは止めさせないといけないんで」

「ふふ、相変わらず優しいわね。それよりも、好木。あなた以外の男子。まあ、仲良しこよしでやってきた三人の男子組には気を付けなさい。あなたの事をどこかで楽な仕事をしてるとか見当違いな思い込みで罵声を飛び交わせているわ」

「げ、そんなことになってるんですか?」

「ええ、文句を言いたいのはあなたの方なのにね。意外と、イラついているじゃない。珍しいほどにね」

「やっぱり、お見通しなんですか?」
 割と、自分が忙しいのにだらだらとしているあいつらを見ると腹が立って仕方がない。
 もし、あいつらと同じ給料なら俺は間違いなく切れる。

「ふふ、今あなたが考えている。イラつきよりも旅館側に迷惑を掛けている方が怒ってるのがつくづくあなたらしいわね」
 やはり、考えが分かる調先輩にはお見通しの様だ。
 そう、俺が何よりもムカつくのは忙しく動き回っている旅館側がそれを解決するためにバイトとして雇ったというのにそれを介さずとしただらけた仕事ぶりがバカにしている様で許せない。

「さてと、京香の事も聞きましたし部屋に戻ります」
 離れの前で少し立ち話した俺は自分が今借りて住んでいる部屋に戻ろうとした時だ。
 出会っても間もないときに廊下ですれ違いざまに良くされたあの行為をされる。

「その行動。久々じゃないですか?」

「ええ、だってあなたを引き留める時は右手で左腕を握るって決めてるもの」
 久々にされた行為。
 それは腕を握って引き留められるという事だ。

「で、引き留めた理由は何ですか?」

「正直に言うわ。あなたは海田加奈関連の事件を経て超能力者が利用されない社会を目指すべく超能力者が利用する社会を作ると行ったわよね?」

「はい、それが俺の今の目標ですから」

「だから言うわ。あなたは普通じゃダメよ。恐らく、あなたのおばあさまから相続する多くの株式があっても次に神田系列の企業を率いるのはあなたじゃない。確かに多くの株式を保有することになるあなたが神田系列のなかをのし上がるのは出来るかもしれない」

「何を言いたいんですか?」

「好木。あなた、この旅館を神田系列のホテル関連会社に引き込みなさい。そうでもなければ、あなたはこのままだと神田系列のトップにはなれない。いえ、成れるかも知れないけど望みは薄いわ。だから、目立った功績をあげなさい」
 何を言ってる?
 この旅館を神田系列のホテル関係会社に引き込む?
 いや、そんなことは出来るわけが……俺はまだ……一端の高校生だぞ?

「でも、あなたの考えている理想は一端の高校生じゃなしえない。というわけで、私からは以上よ」

「俺にできるのか? 俺に引き込むことなんてできるわけが……」

「ええ、あなただけじゃできないわ。でもね、あなたにはコネも特殊な力もあるじゃないの。まあ、無理強いはしないわ。だから、私が言ったことを真に受けなくても良いわよ。さ、引き留めて悪かったわ。お詫びにキスでもしてあげようかしら?」
 今言ったことを冗談で流すような発言。
 前だったら本当にキスされたかもしれないが、今の自重した先輩ならそんな冗談に付き合うのもやぶさかではない。

「してくれるなら、大歓迎ですけど」
 そう言った時だ。
 頬にぴたりと何かが引っ付く感触を感じた。

「ふふ、隙を見せたわね。言ったじゃない。ああいう風に自重するけどこういう風には自重しないって」

「はは、そうですね。すっかり、忘れてましたよ。でも、一線を越えようとしたらアウトなんですよね?」

「ええ、そうよ。だから、あなたは私の淡い恋慕いによってむらむらとすると良いわ。それじゃあ、お先に部屋に戻らせて貰うわね」

 うん、自重されてるとマジでシャレにならないな……。
 今度から気を付けよ。
 だって、普通にあんなのときめかない方がおかしいんだからさ。
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