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「よって本法案を可決する!」  作者: ミスター&ミセスX
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⑤蛇とマングース

カッとなった時には既に足が出ていた。足の裏に衝撃と温かで柔らかな人の肉を感じる。と共に、女が「ギャッ」と言って、ベッドから転がり落ちる。


しかも何、その色気の無い声と恰好。

「超、うけるんだけど」


女もまさか今日初対面の相手からそんな仕打ちをされるなどと夢にも思っていなかったのだろう。素っ裸のまま受け身も取れず、尻丸出しで頭から床に突っ込んだ。

その尻山が倒れる。


「ぷっ」

その間抜けさに俺は思わず吹き出し、少しだけ溜飲を下げた。


女はまだ自分が何をされたのか、自分の身に起こった出来事を信じられない様子でただ茫然と此方を見つめている。

何かの間違いであって欲しい。そんな女の想いが透けて見えるようだった。


俺は女が混乱から醒め、徐々に表情を憤怒のそれへと変えていく様をニヤニヤ笑いしながら見守り続ける。


「無様」

と言うと、女の眼に本気の怒気が映った。

「てめえ…」と地を這う声。

「あ?」


やっぱ本性隠してたな、こいつ。

でも、所詮は女。どんだけ凄まれたところで怖くも何とも無い。


「なア、今あたしのこと蹴ったカ?」

おお、怒ってる、怒ってる。

正直者の俺は素直にそれを認めるが、

「ああ、だから何?」

だというのに余計怒りを滾らせるとか、何その理不尽。


「許さねえ」

「は?」

「謝れ、土下座して、地面に頭を擦り付けて、謝れっつってんだよっ!!」


はあ?何で俺がお前みたいな尻軽女に頭下げなきゃならねんだよ。くそビッチが。その前にてめえの方こそ口の利き方気を付けろやっつう話。本当、可愛いげのない女。俺、こういう女、大っ嫌い。やっぱ女は素直で従順でないとな。

けど、俺ももう29歳だし、大人じゃん。よくよく考えてみりゃこいつも被害者だし、仲間?っつう事で、


「ああ?悪い、悪い。俺も最初はこんなつもりじゃ無かったんだけどさあ…」

ちなみに、土下座?する訳ないだろう。

「ちょっと色々手違いがあって、苛ついてたっていうか、むしゃくしゃしててさ…」

ああ、想い出したらまた段々むかついてきた。

「あいつら、マジぶっ殺してー…」


そんな事を言いながら目に狂気を宿した俺はゆっくりと行動を開始する。

ぎしっとベッドが軋んだ音を立てた。


その俺の動きに合わせてじりじりと後退る女。目は合わせたまま、逸らさない。それが裸同士ってのがいまいち締まらない話だけど。


「てめえ、あたしに指一本触れてみろ」

「触れたら何?後悔するって?」

さっきまで俺のジュニア喜んで咥えてたくせに?

「『私のバックが黙っちゃいないよ』?」

「…………」

おおう、まじ、図星かよ?

笑える。さすが田舎の元ヤン、ネタの宝庫!

でも、何かシラケるけどな。


「よくいるよな、そういう奴?ハッタリで有りもしない組名(せってい)作ってドツボに嵌んの…けど、知ってるか?今はケイサツも煩くて、そういう看板出すだけでも脅迫になるって。ああ、ちなみに名刺渡すだけでもNGね」

だから本物ほど軽々しい言動は慎むものなんだよ。


「…知らなかった?ハッタリはもっとここぞっていう時、ピンポイントで使わないと、具体性にも欠けてるし」

だから、う~ん。30点ってところかな?

はい、次はもっと頑張りましょーって、次があればの話だけど。


美人局(つつもたせ)なら器量もテクも全然足りてないし。なんて事を思いながら俺は完全に女のことを舐めてかかっていた。


「じゃあ、試しに誰か呼んでみる?そんな奴がいるんならサ。ほら、呼んでみなよ?」

「ああ、呼んでやるよ!」


させないけどな。



お読みいただきましてありがとうございます。

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