④嫌な予感がする
これはあの手術のせいなのか。それとも出所して5年ぶりの酒と女で頭と体が緊張しているせいなのか、分からない。
あれ、そう言えば俺、最後に出したのいつだっけ?
その前に朝勃ちしなくなってもう随分経つような気がする。
けど、それは刑務所内のタコ(大人数)部屋じゃその気になっても好きな時に抜けないから、そもそも手術するもうずっと以前から、なるべくそっち方面の欲は持たないようにしていた。あいつらの話じゃないけど、後ろから襲われでもしたら敵わないから。
あの後…、
手術は成功して術後の検査でも…その時は薬飲んで、エロ本読んで半勃起したペ〇スから何かスポイトみたいなやつ突っ込まれて液だけ採取したんだけど…で、精子はいないないから大丈夫って―――まさか、あの医者、俺を騙したんじゃねえだろうな……。
俺の中で嫌な予感がむくりむくりと鎌首を擡げる。
そう言えばあの人格矯正プログラムも結局、全く効果が無かった訳じゃなくて、微々たるもの過ぎて自分じゃあんま変化は感じられなかった―――そもそも刑務所内で喧嘩なんかしたら一発で独房行きだし、刑期延びるしわで良い事なんか何一つ無い―――し、怒る相手も理由も無くて、確かに自分でも最近ちょっと変わったかな、温厚になったような気がするな、とは思ってたけど…。でも、それは加齢のせいもあって、規則正しい生活送ってるからとか色々…だから、怒らなくなったのは当たり前で…。
でも、それが全部ひっくるめてあの手術やプログラムのせいだとしたら…?もしかして最近、妙に食欲が細くなったのも…?
(嘘だろう…?まさかな…)
今日、勃たないのは疲れてるからで偶々。そう思い込む方が楽だし簡単だった。けど、一度俺の中で芽生えた不信と不安は恐怖心という大きな闇を生み出して、徐々にその存在感を広げていった。
その時、丁度タイミング良く口淫中だった女が顔を上げた。その顔が白けたような、面倒臭そうな顔をし(たように見えた)、俺の下半身を見て鼻で嗤った(ような気がした)。
『面倒臭い…、まったく何この役立たず…、こいつ金無いし本当、良い所顔だけだな…』
そんな事は実際には言ってないし、そう女が思ったかどうかも定かじゃ無い。けど、そんな事はもうどうでも良かった。大事なのは女がどう思ったかじゃなくて、俺がどう感じたか、だ。
結果、
「有罪」
ぷつん、と俺の中で何かが弾けた音がした。
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