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極力詳細描写は控えておりますが作品の性質上、“虐待”や“去勢”といった非人道的な行為、表現等が出てきます。読むか読まないかは読者様ご自身の判断にお任せ致しますが、読了後の苦情等は一切受け付けておりませんので、その点くれぐれもご注意ください。
20XX年、某月某日。
大戦景気、財閥化、財閥解体、大震災、世界恐慌、日中戦争に端を発す第二次世界大戦の勃発。
終戦後、日本はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の支配下から抜け出し、人々の弛まぬ努力により目覚ましい復興を遂げ、急速に経済を成長させていく。
そして、ついには先進国の仲間入りを果たすが、お約束通りのバブル景気崩壊。その後は振るわず、景気は低迷化の一途を辿る。
また世界では経済発展途上国が次々と頭角を現してくる中で、日本は不景気に併せ各地での地震、洪水などによる震災、大事故が相次ぎ徐々に国力を下げていく。
巷の治安は都心部を中心にして悪化の一途を辿り、日本は未曽有の暗黒期に突入した。
その一部発端となったのが第百八十五代内閣総理大臣、美並容一郎率いる、第三次美並内閣が強行策として行った日本国憲法第九条の撤廃であり、軍事行動を目的とした海外派兵の開始だった。
その十五年後、近隣外国から恨みを買った日本は戦後初となるミサイル攻撃を受けるが、幸いな事にこれを近海を移動中だった自衛隊空母が発見。迎撃、撃墜に成功する。
この事件を機に一般市民の間には富国強兵の風潮が一気に高まり、新政府は満を持して『日本国軍』の再発足を宣言。国民一人あたりに付き三年間の従軍義務化を決定付ける。
また、銃刀法の大幅規制緩和に踏み切ってからは危険薬物等の蔓延化、犯罪者の低年齢化が深刻な社会問題と化し、全国各地に置かれている裁判所には事件の被告人らが裁判待ちの長い行列を作る事になる。
警察所、拘置所、刑務所、少年刑務所等の行政機関は常にフル稼働状態、監舎の囚人収容率はどこも超過し、また、それを補う為の相次ぐ建物増築、公務員の増員に国庫は逼迫し、増税に継ぐ増税に喘ぐ納税者たち、また過酷な労働条件の撤回、改善等を求めて各所署員、職員、公務員たちは各地で大々的なストライキを決行した。
これを抑える為に新政府は自衛隊を出動、怪我人が続出し、日本は一時、公共の交通、行政機関が停止するなど重大な機能麻痺状態に陥った。
その四面楚歌の現状を打破する為、ついに新日本政府は立ち上がった。
そして、次々と新たな強硬策を打ち出していく中で、今日また新たに―――。
「……よって本法案を可決する!」
カンッ。
国会議事堂、参院本会議室に朗々たる会議長の声と子気味良い木槌の音が鳴り響いた。
20XX年、某月某日、未明。
参院本会議にて事件再発防止、抑制、撲滅に対する本法案、『科学的男女去勢実施法案』―――ある一定条件の下、これを裁判長が必要と認めた場合に限り、裁判長は被告人に対し、本法案を適用、刑の執行を専門医療機関に委託し、施術を命ぜられるものとする―――を与野党合わせた、賛成派多数により可決した。
刑法第1001条 『科学的男女去勢法』制定。
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