表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Blue Blood Battle  作者: ヤヅ
6/9

2部-3/3

祭典の開始は、昼過ぎ頃だと感じた。

昼夜の巡りはヒトの世と変わらないのか、やがて日が暮れ、森が陰る。地平線から突き刺さる夕日と対照となるこの刻が、最も影の濃い時間ではないだろうか。

少年はあたりの様子を入念に探って場所を決め、野宿の準備を始めた。

薪を集つめて火をおこすと、少年は血を一滴、たき火に落とした。青い煙が昇る。

煙はかさを張り、かさは伸びて地表に到達した。少女らはほぼ透明な、青い半球に閉じこめられた。

半球の外から見ると、内部は森の一部に見えるらしい。

少年は鳥。ならば、鳥目。夜はここに籠もるのか。

「やっぱり、鳥目なのかしら。」

疲労からくる無意味な呟きに、少年はにこやかに答える。

「ええ。

 ですが、僕は、夜が好きですよ。」


たき火の揺らめきを目で追いながら、少女は想う。

とめどない願いと、それを負った人々。

己の願いを考えるほど、白濁たる(もや)に飲まれてしまう少女には、彼らが、血走った目と紡がれる欲望が、美しくさえ思えた。

「色がね、見えるんですよ。」

少年が、ふいに語り始めた。

「他者の欲望に触れたときだけ、目の裏に見える、光線があるんです。あれがきっと、普段、僕に見えていない[色]なのでしょう。

 青を基準に、色相環の巡りを参考に、色の名を呼んでいますが、さて当たっていましょうか。」

問うように語る少年だが、興味はなさそうだ。不可視の光線を追うように、遠くを見ている。

「正誤など気にはしませんが。

 なにせ、すべからく醜い。

 僕は、奴らの[色]を見るたびに、青しか映さないこの目を、ありがたく思うのですよ。」

傾く日は、地平の彼方にうずくまる。漆黒と化す森の深淵。そのさらに奥をのぞくように、少年は、遠くを見ている。

少年の言葉を、少女はじっと聞いていた。

たき火の炎と対照となって、少年に落ちる影は深かった。


しだいにまどろむ少女は、頭が組んだ腕へと落ちていく。低くなる視界に自身の姿が見える。

少年に守られ来たが、ボロの服はより擦り切れ、小さな傷口がそこほこにできていた。

擦り傷からにじむ血を見て、ふと思う。

―――少年にこの世の全てが青く見えるのならば。私にかよう血も、青いのではないだろうか。

まどろむ思考とは、突拍子もないものだ。

―――私が、願いを叶えられないだろうか。

少年の目に青く映る、この血をもって。

だってほら。

引きこもりがちだった少女の肌は白く薄く、両腕に浮かぶ血脈は、はっきりと青かった。


少女が眠るならば、灯りは不必要だ。火を消した。

「僕は夜が好きですよ。」

少年はつぶやく。黒を深める森を見ながら。

「この刻の間は、全ての者が、僕と同じ色を見るから。」


眠りに落ちる寸前、少女は、少年が立ち上がる気配に瞼をあげた。少年は狼狽し、とても慌てているようだ。

説明もないまま、少女を急かし背に乗せて、飛び上がる。

夕日が、地平線に最後の光を放ち、対の方角に月が出ている。覚醒しきらない少女は、ぼうっと、今日まで見るはずもなかった天空の景色を楽しむ。

束の間。

空の彼方から飛んできた衝撃波を少年はかわす。

少女は歯を食いしばり、激しく飛び回り始めた少年に、必死でしがみついた。

ざぐりと、少年は自身の右手でその左手を刺した。溢れる血を投げつければ、無数の赤い雨に変わり、何かを返り討ちにした。

「鳥の五感をっ、なめないでほしいものですねぇっ!」

夜闇に鳥の目が使えなかろうと、他の知覚で対処しているらしい。少年は何かの攻撃を避け、いなし、受けながら、四方へ青い血をばら撒く。

じゅわぁっと、肉が崩れる音がした。偶然少女は、それを見た。橙色の血を浴びて、空から落ちていく者がいた。

ヒトの形をしていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ