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Blue Blood Battle  作者: ヤヅ
4/9

2部-1/3

祭典、開始。

※戦闘シーンが多いです。

開始の合図が叫ばれ、少年は飛び立つ。

闘技場の壁を越えて少女の元へ降り立ち,腰に掴まらせ、森の中へ飛んだ。


木々の遮光が少なく、短い草の生えた場所で、少女は降ろされた。

何を訊けばいいのか、わからない。足を着けたはずの地面が浮いて思える。口を開けたまま、浅く呼吸をする少女に、少年は歩みを(すす)める。

少年の指はそれぞれ、鋭利なガラス板のように変わり、腕全体にガラス質が絡みついている。腕から伸びた幾枚ものガラス板は、やはり鋭利で、広げた様は、羽のようだ。

「貴方が、ブルー、バード・・・・?」

わかりきった答えが、やっと口から出た。

少年は、嬉しそうに笑い、

「やっとお声を発せられた。良かった。」

独り言のように喜びながら、辺りを見回す。

少女は変貌した少年を見つめる。髪は深い水の色だ。眼は空の色に染まり、少し吊り目になったような。

「ここなら、まだ、落ち着いています。どうぞ、腰を下ろして下さいませ。」

気づけば、少女の後ろに、切り株が現れていた。少年も、自分の元に現れたそれに座る。

「道中、貴女様に申し上げましたが、」

「貴女様、は、やめて。」

極度の疲弊(ひへい)が、自制を削いだようで、一つの不満が口から漏れた。

「・・・・・それでは、貴女、が・・・・。そう、貴女に言いましたよね。貴女は、此方の世界と通じたことがあると。

 僕は、その恩を返したい。」

少女にはまだ、わからない。

「貴女は幼少の頃、ヒナ毛の小鳥を拾って世話をして、迎えにきた親鳥に返した、記憶はありますか?」

―――あ、ああ。あった。確かに、そんなことは、あった。

「あれ、が?」

少年は、目をすがめて笑った。何故かその表情に、とてつもなく嫌な予感がした。

「拾われた小鳥は、僕でした。

 ほころびを通じて見る事象は、此の地と彼の地では、異なって見えるのですよ。

 貴女が彼の地――ヒトの世で見た、傷んだヒナ鳥は。

 此の地――おとぎの世では、当局に追い回され、ひっそりと倒れ伏していた、僕でした。

 貴女が拾って、保護していた、あの十日間程が、僕にとって、最も穏やかな時でした。」

少女は話が見えてきて、血の気が引いた。冷えた指先を握りしめる。

「あ、ああああ。

 あの、時、貴方を、迎えにきたの、ってっ、」

「――――[生()(にえ)]を管理する、当局の者達ですが。」

少女を宥めるように、すぐさま少年は言い募る。

「両の世界をまたいだところで、僕に逃げ場なんて無い。貴女が引き渡さずとも、当局は、僕を連れ戻していた。

 貴女に害が及ばぬ内に、事が済んで、良かった。」

微笑みながら立ち上がり、少年は問う。

「生命にとって、一番の贅沢って、なんだと思いますか。」

少年を極卒へ渡してしまった事実から、立ち直っていない少女に答える気力はない。

「生命は、必ず死ぬ。産まれと死が揃ってこそ、[命]でありますから。

 だから、絶対に避けられない死を、どうむかえるか。

 死に様を選べると言うことが、生命にとって最たる贅沢であると、僕は思うのです。」

少年は両腕を広げて、木々を仰いだ。光を受ける空色のガラスがきれいだった。

「あのとき、決めたんです。

 僕は、貴女の願いを叶えて死ぬ。それを僕の、希望としたのです。

 当局は、生け贄をヒト側に渡せればいいのだから、それで僕がおとなしく祭典に出るならと、貴女の贔屓を許可しました。」

すぃっと、少年が少女に近づく。

「さあ、どうぞ。」

蒼白となった少女の前で、かしずいた。

「貴女の願いを、おっしゃって下さい。」



時が止まったかのような間ののちに、少女は顔をひきつらせ、首を横に振った。

「・・・・・・・・・・・・・・無い、」

少年の微笑みも、静止した。

「・・・・・・・・・無い、無いわ。私には、貴方の血を使ってまで、叶えたい事なんて、願いなんて・・・・・・・・

 わからないわ。」

少年はゆっくりまばたきをした。それで、止まった時をリセットしたかのように、また立ち上がり、優しく言う。

「急に、大それた願いを、と言われても、出てこないものですよね。

 まだ猶予はございます。どうぞゆっくり、選んで下さい。」

ガラスの腕で、再び少女に歩みを勧めた。





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