師匠
小さい頃誰もが思う夢。
それは、魔法使い。
魔法を使って空を飛びたい。
魔法を使って誰もが想像しないような冒険をしたい。
そう思う子供は少なくは無いと思う。
しかし、その夢も成長につれて無くなってゆくのが今のこの世界の現状だ。
もっと言えば、魔法など信じもしない子供だっているだろう。
言わば、冷めた子供だ。
そう、今の子供は物に溢れている。
必要な物があれば、ほとんどがすぐに買えるのが現実。
「魔法で出せば?」とお金を払いたくない親が子供に言っても子供は「魔法なんて作り話だよ?」と言うのがオチだろう。
だが、もしも万が一魔法使いが存在したら、今の子供はどのような反応をするのだろうか・・・?
よくある路地裏。
そこで何ともベタなことをしている集団がいた。
高校生らしき男子が3人。
「ねーえ、お金を貸してって言ってるんだけどさぁ、お兄さん達今困ってるの」
小学生らしき男子が1人。
「ぼ、僕にはお、おかねというものが・・・分からなくて・・・」
「えー??今の子供は携帯だって持ってんだからわかんだろー??」
「けけ、けいたいと言うものもわ、分かりません・・・・」
よくある光景では無いが、ベタと言えばベタな光景だ。
「あーれれぇ??この袋は何かなぁ?」
小柄で少し太っている男が少年が持っていた袋を取り上げた。
「あ!!か、返して!!!」
次は細長く、髪の長い男が少年に質問をしてみた。
「返してほしいの?」
少年はコクリと頷いた。
すると、一番奥にいた金髪の男が少年に質問をした。
「ねぇ、知ってるかなぁ?」
少年は黙ったまま金髪の男を見た。
すると、金髪の男が少年の顔を殴った。
小柄な少年の体は、軽く2~3m飛んでいた。
「頼みごとをする時は、敬語・・・分かんないか。”です”、”ます”を使うんだよ?」
続けて男が、
「だからぁ、返して!!じゃなくて」
男は少年に歩み寄り、
「返して"ください"!!だろぉぉぉがぁぁ!!!!」
そう言いながら男は少年の腹部を蹴った。
「っう・・・うぅ・・・ううう・・・・」
「あれー?泣いちゃったんでちゅかぁ??・・・ギャァッハハハハハハハハ!!!」
「岡部ーお前面白すぎだぜー!!アッハハハハ!!」
「鈴木も思ったぁ!?アッヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」
「うぅ・・・ううう・・・・」
「だぁいじょーぶでちゅかぁ?」
「ギャッハハハハハ!!!」
「アッヒャヒャヒャ----」ドサっ。
岡部と呼ばれていた小柄な男がいきなり倒れた。
「お、岡部!?」
「大丈夫か!?」
「・・・・・・・」
岡部は気絶したまま反応を見せず、ただ倒れているだけだ。
「お、岡部!!大丈----」ドサっ。
続いて鈴木も倒れた。
「鈴木!?」
仲間が倒れはじめて困惑している金髪男子は少年に目を向けた。
「さてはお前だな!!ゼッテー許さねーぞ!!!!」
「ぼっ僕は・・・何も・・・」
「嘘つくんじゃ------」ドサっ。
金髪男も倒れた。
「え・・・何で・・・」
助かったとはいえ、さすがに急に倒れたのを見れば少年も困惑はする。
「大丈夫かぁ?」
いきなり拍子ぬけた声が後ろからした。
驚いて後ろを向いたら、1人の男が立っていた。
男は倒れている岡部に近寄り、少年から取り上げた袋を取り、少年に返した。
「大丈夫か?お前結構ボロボロだな」
「え・・・わ・・・えっと・・・・」
「・・・あ!!大丈夫だ。俺はあいつらの仲間じゃない。むしろ敵かなぁ?」
「・・・・・」
「あ!怪我してるな!!治してやるよ」
そう言って男は手を差し伸べた。
しかし、少年は男の手をふりほどいた。
「な、何すんだよー。治してやろうと思ったのに・・・」
「ぼ、僕は自分で怪我を治せるんです」
少年のすっとんきょな言葉に男は笑ってしまった。
「ほ、本当ですよ!?」
「じゃぁ、見せてよ」
「良いですよ・・・。でも・・・」
「でも?」
「僕の師匠になってください!!」