(1)・7ヤンデレは美少女
かなり気になるけどここは我慢。我慢に我慢で我慢する。
…………………………………カチャッ……
?…誰かきた
……スッ………スッ………スッ………
…この衣擦れ、だれ?
師匠は無音だし、侯爵様やメイドさんたちは蛇のはず。人間に戻ってたとしてもこんな大人しい音じゃないはズドシャアァァッ!!
………………………………………………………えっ?
「ここに、いるの…?」
え、え、え、え、……………………、……っ!?何がどうなったの!?
私、机の中に隠れてるけど気配消すのは結構得意です。
この女の人らしき声は初めて聞く。
……今、目の前におどろおどろしい黒い剣が突き刺さっています、机を突き抜けて。
つまり、……狙われた?明らかな、敵意?
「ここに、いるんでしょう…?…怖がらないで、出てきて……。怒ってないから」
怖い、怖いよーっ!師匠と同じくらい!
………はっ!嫌な気配!!
「えいっ!」
机を蹴り上げると同時にバックステップすると、さっきよりもリアルな音が近くで聞こえた。
危うく、頭から串刺しになるところだった……っ!
師匠の親戚って言われても納得しそうなほどの潔い行動。
「…?………まちがえちゃったっ」
ひ~と~ち~が~い~!!
そんなテヘって顔するなー!!茶目っ気を入れたって無駄!反省の色が全く見えない!!
「やるにしてもちゃんと確認してからにしてください!」
いやこれもどうだろう、わたし。
「ごめんなさぁい…。怒りのあまり、つい……」
やっぱ結局怒ってたんじゃん。
私を殺しかけた人は気のいい穏やかな口調をする……八歳くらいの女の子。それにしてはかなり大人びている。
剣を突き刺すときこの少女はどんな顔をしてたんだろうか。これでその物騒なものを持ってなければ誰もが恋しそうな女の子なのだが。
「まったく…で、何してたんですか?」
「実はここにねぇ、私の好きな人がいるから捜しているの。恋人でね、心も体もすごく素敵な人……♪」
武器を持ったまま目はハートがとんでる。
…この子、危ない人だあ。
さっき感じたのは明らかに殺意で、確実に私を殺そうとしていた。勘違いだったが好きな人を殺す気満々だ。
というか意味がわからない。好きな人なんでしょ!?何で殺しにまで行くの?それほどの怒りって…。
「でもその人の周りには色んな雌豚がいるみたいなの。…あ、豚に失礼ね。彼のまわりに『ゴミ』があるみたいだからお掃除しようと思って今日はこっそり、ね。ふふっ」
「笑い事じゃありませんから、それ。いくらなんでも女性殺しは…」
「え?……………あっ、ち、ちがうのよ。女の子を殺すなんてそんな残忍なことしないわ。たとえ会ったとしてもちょこっとお話したら普通にお家に帰してあげるわ!これはぁ………逃げるあの人を地面にとめるための、ただの道具♪」
道具にしては危なすぎるんじゃないだろうか。
『♪』じゃないよ『♪』じゃ。
「心配しなくてもあの人はこれだけで死んだりしないわ。…………でも、あの人を殺してしまえばずっと私のモノに……。ふふ、冗談よ。私があの人を殺すわけないじゃない」
この人絶対ヤンデレだー!!噂に聞く病んでる人だー!!
だから可愛く言ったってダメです!
あなたが言うと冗談に聞こえないんですよーっ!!