(1)・4 したくもない蛇観察日
「…え、え~っと…ですねぇ…」
「何か?」
ダメだ。絶対に言うこと聞いてくれなさそう。
それ以前にまず相手の手の色が変わってるんだけど。
この世界には人間と動物が混ざった存在しかいなく、ただの人間なんて一人もいないと言われていて、その中でも私たちは「混ざりタイプ」と「変化タイプ」に分かれる。
「混ざりタイプ」はその名の通りわたしみたいに見た目からして動物と人間が混ざった存在。
「変化タイプ」は見た目はただの人間だけどただの動物姿に変えることもできる。
きっとこの人は「変化タイプ」だ。何に姿を変えるのかはまだわからない。
…よし、師匠をまきこもう。少なくとも荷物を完全に盗られるよりかは罰が小さい……………はず。
「食って骨にして磨いて売り出してくれるわ小娘がーっ!」
こまかいっ!
確かに私みたいな狼の獣人は貴重だから骨でも高値で売れるかもしれないけど、なってたまるか!
というかでかいよ!さっきまで私と師匠の間くらいの身長だったのに、なんでこの広い部屋の半分くらいになるの!?
「えいっ!」
完全に大きな蛇に形を変えた侯爵様から逃げるために、私は師匠を真似て作った出来損ないの玉を侯爵様の足元に投げつけた。
名付けて、『アカアカはくしょん』!…これ、師匠に話したら馬鹿を見るような目で睨まれました。
玉の中からでた大量すぎる赤い粉が部屋中に充満しくしゃみが止まらない………と思う。
あまりにも吸いすぎると死に至る………はず。
人間にはひとたまりもない………ように作ったはずなんだけど自信はこれっぽっちもない。
「きかんっ!」
ですよねー。自信ない上に相手、蛇だし。
蛇ってくしゃみするのかな?
「こざかしいっ!」
それにしても侯爵様さっきからありがちなセリフばっかりだな。まるで老人を真似ている人みたい。つまりは演技くさい。
でも幸いなことに、くしゃみはしなくても出ばなをくじいた大量の赤い粉は侯爵様の視界を…
「…あれ?」
これひょっとして、私もやばくない?
「ちょっ、やばい!」
なんというバカなんだ私は!
師匠の荷物は持ったから、薄め涙目の侯爵様より早くドアに行かなきゃ!
「おのれぇ、小癪な!」
大丈夫、ありがちな人なんかより断然間に合う!
…って、ええ!?ドアが独りでに開いた!
………………ま、さか……!
「失礼致します、侯爵様」
…な、んだ、さっきのメイドさんか。師匠かと思って心臓が止まりそうになった。騒ぎに気づいて見に来たのかもしれない。
いや、でも蛇になった侯爵様に驚かないし、この人の手馴れた感じを見ると侯爵様の正体や真意を知っていたのか。
あと、侯爵様、ってことは私に用はないのかな?
よっし!隙をみて逃げよう!
とりあえず一安心-----
「………」
………………じゃなかった、全然まったく。
「ギルバート様をお連れいたしました」
なぜ今この瞬間!?
師匠の観点だと多分こんな感じだ。
侯爵様。
召使はこの爬虫類を侯爵様といったのだからそうなのだろう。だがなぜ自分の部屋にいるのか。
わたし。
荷物を守れといわれたのに目の前で狙われていたかのような失態。
しかも今かなり安心顔をしていたがよもや自分を巻き込もうとしているのでは。
召使。
蛇を見ても驚かず自身の仕事をまっとうしようとしている。関係者疑惑。
室内。
自分が見慣れた赤い粉が辺りをただよい、それは風呂上りの自身に降りかかる。
…そして、師匠は……。
……………………………………………バチ
…師匠の、足元から、電気、が…。
終わ、った………。
しかも、私も同罪のつもりですか師匠!?
どんどんそれは、音は、数は、増えていく。
師匠、私はあなたに絶対についていくと心に誓っています。ですが、今だけは逃げさせていただきます。
…師匠はまず真っ先に、私を狙ってきそうですから。
まとめ
①ただの人間はいない
②「混ざりタイプ」と「変化タイプ」の2種類がいる




