(1)・3 侯爵様はわかってらっしゃらない
「失礼しますよ」
そう言って入ってきたのは人生の半分を過ぎたような顔をした侯爵様。えぇ、本当に失礼ですね、わざわざ師匠のいないときに来るなんて。
後で被害来るの私なんですから。
「侯爵様、出来るだけ簡潔にかつ手早く加えて手短にお願いします」
「わかってます。しかしそんなに急かさんでも……」
あ、あなたは何にもわかってないからそんなこと言えるんです!
「お話とは?」
「実は、話しというより相談なんだが…」
ただお喋りに来たんじゃないのは勘だけどわかっていた。平民であるしかも薄汚い小娘に世間話しようと思う老人なんて少ない。
というか今までに行った家の偉い人、ほとんどの人が同じように呼び出してみんな同じ相談事言っている。
「まず第一にギルバート殿を私のもとで雇いたいのだが」
やっぱり。しかも第一といっているが、複数あるも想定済みだ
「まず、無理ですね。師匠はひとつの場所にいるの嫌いなんです」
「どうしてもか?」
「ダメです。多分縛り付けても、脅しても効果はないです。…その分後で、報復が、きますけど」
師匠いわく「正当な罰」を思い出し、何故か私が冷や汗。
私の真剣な表情に、侯爵様もそれ以上それを要求してこようとはしなかった。
「そうか…。では次に、」
「ギルバート殿の魔法具を高値で買い取りた「無理です!」」
侯爵様は叫びだした私にびっくりしていたがそんなことどうでもいい。
あ、あなたはなんのために私がここで一人残っていると思っているんですか!
塵一つ盗まれないように見張ってるんですよ!つまり師匠が他者にあげるものはないんです!
そして、それを私に言われても困ります!
「…これもか?」
「ダメです、無理です。どちらかといえばさっきの質問よりもNOの確率が大きく、ゼロに近いです」
私の連続ダメだし攻撃にさすがの侯爵様も少し機嫌が悪くなる。
「…じゃあ第三に」
まだあるのですか。
「狼であるリィブ殿を買い取りたいのだが」
「………」
興味の矛先が急にかわった。
これは今までにない質問だったのでとっさに返答が出来なくなる。
「…、……ぁ、え、え~っと、師匠は、ダメ、とは言いませんね。むしろ売ると思います」
「では」「でも」
「でも、私は師匠について行くと決めてるんです。拾われた時に、ちゃんと行けるところまでにはついてくんだと。…絶対に。だから、ごめんなさい。私を買っても脱走するし噛み付くわであんまし意味ないです」
侯爵様は落胆したようで顔を伏せてしまった。罪悪感がわいて………うん、こない。
……さて、ここで今までのお偉い人は三択に分かれる。
そのいち、商談を諦めて部屋に戻るか、せめてものお詫びとして豪勢なものを振舞ってくれる
これが一番ありがたいな。
そのに、諦めたかのように見せかけて腹いせに陰から迫る。いわば闇討ち
これはまあ私でも殺気という気配でわかるから別に何でもない。
問題はみっつめ。
師匠はともかく私にとって一番厄介なタイプ
これはやめてほしい。
「…ふむ、そうか。あなたが脱走するのではしかたがありませんなぁ」
よかった、わかってくれたのか…な?
あ、あれ?なんで侯爵様ににじりよって来てるんですか?
「残念ですなぁ…。こうしなければならないなんて」
悪い予感大当たり。
…この家結構住み心地よかったのにな。
師匠戻り時間まで残り5分もなかった。




