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(2)・10 くっついたガムをはがすのって大変ですよね

後半リィブが長々と考えてます


「……………いいだろう」



島に滞在中のただでの寝泊まりだけでなく、船の食事代まで払うというタイシュさん。


さすがは金持ちの島、ラムズリル島。。あのチケット、食事だけ別料金なのでした。しかも豪華客船なので安物なんてない全て高額。金持ち師匠はともかく私に飢え死にしろといいたいのか。

だからタイシュさんの申し出はある意味で私の命を繋ぐものだった。


タイシュさんはまさに命の恩人いや、命の恩鳥です!

そしてその案を金の亡者である師匠が無下に断るはずもなく、二言目にはあっさりと了承。


タイシュさんの師匠に出した条件は「リィが来るなら、宿も金も全て俺に任せるがいい!」と言う発言だった。

むしろ私がいないなら、どんな状況であろうと、どんなに師匠が脅そうと、どんな攻撃を受けようとも、師匠を泊める気は全くないんだと。タイシュさんにとって師匠はもはやついで、おまけと同じでした。


そんな彼による美しい告白なのに、私はさっきのようなときめきをなぜか感じませんでした。

というかそもそもこの人にときめくこと事態がおかしいのか、うん。

…とはいえ、これはお礼を言うべきだろうか?

だって私のために泊めてくれるしお金も払うしで、なんか至れり尽くせりな感じ。

まぁ別に言ったとしても私の心に変な気持ちは沸かないだろうし、恋情なし照れなし呆れありで純粋に「ありがとうございます」ときちんとお礼をいうことだろう。


…ただ一つ困ったことに、ルチアさんから教わったあの『お礼』法をしようにも私はタイシュさんの歳がわからない。

ルチアさんは『近しい人にだけ』と言っていたけど、多分タイシュさんは年上だから別にしなくてもいいのだろうか。

そもそも一、二歳くらいの差で同い年じゃないとは言い切れないんじゃないかな……?

だって同い年の友達同士でも誕生日を過ぎたら当然年上、年下に分かれるんだし。



「…タイシュさんっていくつなんですか?」


「!!よくぞ俺に興味を持った!聞け、十五だ!リィは十四なのだろう?歳が近いのは悪いことではないぞ!円満になれるにちがいない!」



何がとは絶対に聞かない。何が円満かなんて絶対に聞きませんっ!

しかしそうか、私と約一年違いなのか……。一応年上だけど、どうしよう?対象になるのかな?

・・・・・・。

うん、まぁやんなくてもいいか。


ルチアさんの場合は鼻血で済まされたけど、このお方の場合はそれだけでは済まされないような気がする。

そしてこの勘は外れてはいないに違いない。

……、まぁ、保留ということで、次はちゃんとやるとしよう。

決してあの人に感謝していないわけじゃありませんよ?えぇ、決して!





というわけで。

なんとなんとなんとなんと珍しくも師匠から「……………消えたら寿命を分かつ」というお言葉をいただきました。

師匠の口からそのようなお言葉を聞けるなんて…。微妙に喜べない言葉なのに嬉しいのが不思議だ。感動すぎて鳥肌がたった。


さらに密航せずに堂々と金持ちの船に乗れるなんて!

心が踊るばかりですよ!

幸せ満喫で船旅をすごせそうですよーっ!
















 ―――――なのに今、私は豪華客船の客室ではなく、女性専用トイレに一人、篭っています。

安心するべきところはさすが豪華客船、室内トイレだけでなく別途にトイレがあるんですね。


別に好き好んでこんなところに篭っているわけではない。むしろなんで私がこんなところで悶々と考え込まなきゃいけないのだ。

その理由は明確。

……あのうざい人をどうにかしてください!確かにタイシュさんには感謝感激大感動しましたけど、………こればっかりは疲れた。





昨日の夕方のことです。

一日中私の後をつけてきた彼もさすがに就寝時にはどっか行くだろうと思っていたが、それは甘かった。

「俺の部屋で寝てもよいぞ?」という彼からのあからさまなお誘いは断固として断りきちんと一人で寝ました。




今朝のことです。

何故か隣にカラスがいた。それも間近で私をガンみで。赤い首輪からして野生でないことは、それが誰なのか、何なのかはまるわかり。

ここで「あれ?私昨日一人で寝たよね?」とか思ってはいけない。なぜならこの出来事は何となーーくだけどわかりきっていたことなんですから。

そんな疑問を抱いた日なんてのはずいぶん昔のことですよっ!予想もできないことをして、予想以上のことを当たり前のようにするのが彼らなのだからっ!


たぶんタイシュさんは私と一緒の布団(正確には床)で寝ることはなくても、変化した姿ならやましく思われないとでも思ったのでしょう。

『あやつに越されるわけにはならんのだ!だから俺はたくさんリィの顔を見つめたい!』

その弁解は意味がわからない。そして思考自体がおかしい。私の顔を見るのと一緒に寝るのに何の関係があるのだ。

ただこの状況でのカラスに対し私は生命の危機を感じたので、すかさず微弱な右ストレートをかました。タイシュさんは怒るけど、目を開けてカラスが間近で自分を見てたらだって誰だって怖がるだろう。




昼前のことです。

船に乗り込みました。


「あ、師匠待ってくださいっ」


師匠は相変わらず止まってはくれないけど、それでもまこうとしていないことがわかるからとても嬉しい。お部屋の中もとても素敵で私の心は浮かれまくりの油断しまくりでした。

・・・・・・そして、


「リィ……今夜は一晩中いられる。この一夜の間にお前を手に入れてみせる!」

「………」



わ、す、れ、て、た。

この人も同じ船だと。

ルチアさんと同じ粘着質だと。

私を執拗に求めてくる厄介者なのだということを!













---以上が私がトイレに篭る結果となった理由です。わかっていただけましたか?

どうせ向こうにいたら再び四六時中近くにいなくちゃいけないんだから、今くらいは逃げても許されるでしょう、うん。

トイレの個室にいる間、することなんて限られているのでとりあえず私はずっと考え事ばかりをしてた。


私は師匠が行くところなら何処までも行くつもり。

何だか恋する女みたく聞こえますが、私にはそんな気持ちまっっっっったくないです。もちろん師匠にもない。これはわかる。

周囲の人の中には私たちの仲を期待する人もいるみたいですが、はっきりいってお互いに無理がある。だいたい年の差がありすぎる。

師匠の正確な年齢は知らないけど外見的年齢は二十歳後半くらい、つまりは二十代な青年に見える。かたや私は多分十四歳。なぜ「多分」なのかというと私は拾われッ子なため正確な歳はわからないのです。

ただ子供の頃、自分の歳を知らないことにふと気付いたので試しに師匠に聞いてみたところ。


『……指が五本だから、五にしろ』


と、なんかかなりテキトーに言われたのだが、小さい頃のまだ純粋だった私はそんなひどい師匠には全く疑問に思わず、「あ、本当だー。じゃあ、そうしよう」としか思わなかったのですよ。なんて馬鹿であっさりしてるんだ、私。

ともかく、私と師匠は十も離れていて良くて親子にみられるくらいだから、恋情なんてまるっきりありえないのだ。

そもそも私はルチアさんではないので、私に体罰という名の雷ばっかり撃ちまくる師匠に恋心なんていう変態心は起こりたくもない!かといって私達に親愛の情があるわけでもないけど。

………今思ったけど微妙な関係なんだなぁ、私と師匠。とにかく私は師匠に何がなんでもついていってやる。


……でもそのためにはまずあの人の家に行かなきゃいけないということで。

別にタイシュさん自身が嫌いだから家に行きたくないわけじゃない。私だってどうせならふかふかのベットで寝たいし、無駄にお金なんてかけたくないのだ。


ただ、……あの人と二人っきりにだけは絶対になりたくないだけだ。


あの人のことだから私を殺したり、夜ばいをしたりはしないに決まってるのはわかるんだけど…数日前の朝のルチアさんどっきりハプニングが頭の中でフラッシュバックされてしまうんですよ。現に今朝だって似たようなことが起きてしまったし。

ルチアさんもタイシュさんも気配を消すのがプロ級にうますぎるっ!

嫉妬を越えて呆れるほどに。私も得意だけど二人には俄然及ばない。比較するほうが気違いなくらいに。

だ、か、ら、…向こう先でどう妨害しようとも次の日の朝には必ずタイシュさんが同じベットの中にはいなくても、同じ室内にはいそうな気がする。

で、これまた自意識過剰なただの予想にしかすぎないんだけど、一晩中私の寝顔をみながらハアハアしてそうな気もする。

もう一度いう。なんて自意識過剰な私なんだ!

でもあの人はやらないと言い切れないのも事実。つまりこれは自意識過剰とは違うんですよ、うん、……絶対、に。


…………………。


こんな気持ちで、あの人の家に行くの、やっぱ嫌だなぁ……。

私は延々と無限ループして暇を潰してました。

師匠にもルチアさんにもタイシュさんにも邪魔されることのないこのトイレはまさに安息の地!……………だめだ。切なくて悲しくなって来た。



……毎度毎度部屋でなかなか有意義に過ごせてない私って、運がないのでしょうか?





彼は何度殴られようとうざがられようと、リィブを諦めるつもりはさらさらありませんからね。

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