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(2)・6 男たちのひんやり暑苦しいお祭り事件


「………本当に本当に本当になんであなたは私にそう触りたがるんですか」



なんとか重石地獄から抜けられた私はすぐさま彼女をお説教した。師匠に説教なんてするわけないが。

今回のお仕置きは彼女の滑らかで可愛らしい両頬を引っ張ってやった。美少女とかお嬢様とか関係ない。

しかしどんなに私が怒っても殴っても怒鳴っても、この人は毎回毎回同じことを繰り返す。



「リィちゃんにホッペ触ってもらっちゃった……!」



反省の色が全く見えない彼女にかなりひいた。距離をとるのをみたルチアさんはようやく少し反省したようだった。



「うぅ〜……。だってだって!いつもいつも一応は触らないように自制はしてますのよ!?でも………リィちゃんのとろけるような声にちょっぴり冷めたその目つき。身体がぞくぞくしすぎておかしくなりそうでぇ…!絹みたいな髪やふさふさの尻尾、……わたくしを狂わすような匂いに柔らかく甘い肌と唇ぅ…!何よりもわたくしへの素敵な愛のお言葉イタァイッ!!」



反省するどころか再びおかしなことを言い出したルチアさんの頬を今度は軽く往復ビンタしてやった。

パチパチ!といい音が鳴った。



「そんなリィちゃんが大好き……!」


「そんなあなたに疲れます……」


「リィちゃんがわたしくしをこんなにまでしたのにぃ…」


「そんな記憶はどこにもないです!とにかく、早く私の質問に答えてください」


「くすん……。イワシのお祭りってのは変化タイプのオスのイワシによる大規模な………暑苦しい?お祭りですの。内容は興味ないので詳しくないのだけれど…ひたすら同じ所を暑苦しく?ぐるぐる回るだけの意味がわからないお祭りみたいで…。彼らにもその行事の意味が理解できてないみたいなのだけれど…」



じゃあ何のためにやるのだろうか。



「それで事件なんだけど、回るといっても暑苦しいのは当事者で他から見るとそんなにすごいほどでもないの。いつも一分でようやく三周ってぐらいの遅さで泳ぐしから渦も出来ないし、邪魔にならないような場所で泳いでるから漁師達も今まで困らなかったんだけど…」


「今回は違ったんですか?」


「イワシの1匹が目ざとく魚人じゃないけどすごく美人な魚を見つけちゃって、男達が取り合いになるわ、興奮して祭は最高潮になりすぎるは、そのせいで範囲を大きくそれちゃって大きな魚達が右往左往するは遠くにいたはずの漁師の船が転覆するはで……」


「………」


「そのせいで大きな渦が出来ちゃったの。普通、渦はそんなに長続きはしないんだけど……、助けに行った魚人が巻き込まれたり、他の魚がそれに便乗したり、泳いでる彼らはヒートアップしたりで渦はあと1週間は止まらないだろうって言われているのよ。そんな中船を出すのは危険で、他の航海ルートは稼ぎを補おうとするたくさんの猟師たちの仕事の真っ最中だから…今は一日に数回しか船は出してないの」


「………ちなみに、当の本人、いや本魚は一体何をしてるんですか?祭りで一緒に泳いでるんですか?」


「えっ?だって何の変哲もないただの魚なのよ、リィちゃん。しかも一匹だけで放浪してるんだもの。食べられちゃってるに決まってるじゃない♪」



……………。

わたしは今までのくだらない話は聞かなかったことにした。



「……と・に・か・く!師匠はその島に行きたかったんですか?」


「………」



はい無視。まぁ想定済みですが。

でも、師匠が行くということはつまり私もそこに行くということになる。



「……う、うぅ〜……ず、ずるぅーい!!わたくしも行きたーい!!リィちゃんとギルバート様と一緒にエンジョイしたーい!!リィちゃんと一緒のフトンで寝泊まりしたーい!!」



そうか。そういえばルチアさんとはここでお別れだった。

というか彼女はどこまで着いてくる気だったんだ。



「いいもんいいもん!勝手についていくから!」


「あれ?行けないんじゃなかったんですか?」


「ふふ……リィちゃん、わたくしのねばっちこさをなめちゃいけないわ!そしてわたしくし自身を舐めてもいいのよ!」



誇れるところじゃないです、そこ。








とにかく、私たちは明日にでも出発することになった。

でもあくまでもこれは私の予定。

師匠はもしかしたら今日私を置いて出発するかもしれない。

だとすれば私は何がなんでも出航日までには追い付かなくてはならない。


…まぁルチアさんとはお別れだし、それくらいの苦難は別にいっか。

友達なのに悲しみの別れが生まれないなんて何てことだろうか。



「あの……いつものご褒美、い、いい……?」



ここで言っておくが、ルチアさんは働かせるにはとっても有能な人だ。


その一、貴族だからお偉い人達の裏情報にはとっても詳しい。貴族を懲らしめるときとかに有益な情報を与えてくれる。


その二、お金持ちだからたまに色んな経費を持ってくれる。更には、お金持ちの美少女だから相手側から勝手に安くしてくれることもある。


その三、なぜか私に従順なこと。そのため、私がたった一言優しく(たまにわざと甘えて)お願いするだけでかなり張り切って働いてくれるから安上がり。


その四、結構ありえないくらいの体力がある。だって馬に乗っても往復で五日はかかる距離をたった二日で帰ってくるのは明らかにおかしいだろう。一度聞いてみたら「愛の力と親戚による特訓のおかげですわぁっ!」と返された。…親戚?……特訓?…愛の力もそうだけどこの人の言ってる意味がよくわからない。


その五、彼女は虫人の蝶。つまり、体重が軽いどころかほぼ無音で飛べるため、高いところの持ち運びや隠密にかなり便利。





ーーー以上のことから私にとってルチアさんは役立つどころか、かなりお世話になっている。

ちなみに彼女を利用してしまっていることを師匠のお友達兼私の育ての親兼私の先生兼以前の同行者が知ったら、恐ろしい制裁が行われるのは間違いない。


だから、毎回お礼をしているのだが……。



「…本当に、本っっっっ当にこれが、友達にする、古来からの、一般的な、お礼の仕方なんですか?私そんなこと教えてもらってないんですけど…」


「うん!リィちゃんは世間知らずだけど、これは常識のこと!きっとその方はあえてリィちゃんに教えなかったのね。あ、ただし近しい人にだけによ!年上の人や年下の人には絶対に絶対に絶対にダメっ!!」



……こんなことをする人を私は一度も見たことがないんですけど?

頼み事をするのはたいていルチアさんだからかもしれないが。


私が人間関係に疎いからって自分の都合のいいように騙してるだけなんじゃ…。

でもそれは私の友達がかなり少ないから見ないだけで、街中でも私が見逃してるだけなのだろうか…?

本当はみんなやってることなのか?



「さぁ!早く早く早く早く早く早くはや「わかりましたから少し黙ってください」」


そして私はルチアさんの頬に自分の唇を軽くつけたあとに一言。




「ありがとうございます、ルチアさん」



今度は本当に心をこめて言ってあげた。


…そして、ルチアさんは本気で鼻血をだして倒れました。

まぁいつものことだけど。









−−−と、思っていたら、いきなり飛び付いてきた。

不覚っ!ルチアさん相手に油断しすぎた!

とっさの行動が出来ず、私にしては不覚だった。

さらには私の胸やお腹に飛び付いてきて自分の綺麗な顔をすりすりときたもんだ。

このままだと鼻血の後が服に染み付く!……いや、もう、遅いかもしれない。



「それはなしっ!!」



でも私としては身体を引き離すだけのつもりだった。

なのに、びっくりしたのと焦ったのとでうっかりルチアさんのお腹に膝蹴りしてしまった。

ドフッ、と低く硬い音がする。



「ル、ルチアさんっ!ごめんなさい!つい…」



ルチアさんがかなり頑丈だとしても、さすがに今のはまずかっただろう。

かなりの罪悪感が私の中にあった。いくら嫌だったとはいえ友達にしかも蹴りはいけない。

私は急いで声も無しにぐったりと地面に崩れ落ちたルチアさんを介抱しようとしたのだが…。



「………ぐっ………ふ、ふふ…」



………腹蹴られたのに何で喜んでんの、この人。



「っ………ふふ……これで、お邪魔虫の、野郎は、今頃…!ぐへへへぇ……!!」



しかもなんか達成感と欲望が混じったような喜びようだ。

とにかく、不気味な笑い。



そしてルチアさんは今度こそ本当に気絶した。

鼻血の後さえなければ、はかなくて綺麗な美少女なのにかなりもったいない。





ルチアさんの最後の怪しい行動の理由は次回に。

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