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(2)・3 あなたがアタリなら世界の果てまで逃げてやる



結局ついてきちゃってるし。というか私に会いに来たんだから当然か。

ルチアさんは旅をしている私にとって数少ないお友達の一人。

別に嫌じゃないんだけど………でもやっぱりこの人は苦手。


今だって幸せそうに腕に絡んでくるルチアさんは引き離そうとしても踏んだガムみたいに離れない。

今が朝で本当によかった!

……昼間にこうして歩いたら、私とルチアさんは「アレ」な人に見えるに違いない。というかルチアさんの目からでるハートのオーラが痛い。

そもそも散歩はこの人から離れるための口実なのに、この人が着いて来たら意味がない。



……?ん?あれは、なんだろう?

町中が眠っているため、普段より静かすぎる町を二人で歩いていると前方に怪しい服を着た怪しい露天が。

でも見た目から怪しさぷんぷんだから相手にしなくていいか。



「あ、リィちゃん!あんな所で福引やってるわよ!しかもタダですって!」



あからさまに怪しいのに何でつっこんで行くんですか?あえて私も口にださなかったのに。


普通朝っぱらから無料で福引はやらないし、体全体が黒マントで覆われている人なんて信用できるわけがない。

それに賞品の内容がどこにもないのも怪しい。

書かれてもいないし、ただそこには福引の看板とあのガラガラ回すやつと怪しい奴だけ。

しかもその黒ずくめの人は、早朝にたまたま散歩で通り掛かってしかもやりたがっている獣人をガン無視でこっちつまり私達をじぃ…っとガン見してるから誰が見たって百%怪し過ぎる。

というかこっちみんなっ!


ほら!あからさまなスルーにその人怒って帰っちゃったよ!

これで周囲には完璧に人はいなくなったから、私はますます行きたくない。

私も無視したいよ?

…でもね、こちらには、空気ヨメーッ!、な暴走お嬢がいるんですよ



「お願いしま〜す♪」



ほらやっぱりね、このありきたりちょうちょっ!

なんでやっかいごとをわざわざ作るんですか!



「ぇっ……あ、はいっ」



意外にも彼(声的にそうだと思う)が顔を隠していても面食らっていることはさすがの私にもわかった。



「………本当に来るとは…」



………あなた自身もまさかその恰好で寄って来るとはまったく思ってなかったんですね。

どうぞあなたの提案者を思う存分、恨んで、そして感謝してください。

私はこの人を恨み、そして呆れますから。


私達が狙いというところから怪しさがMAXになったのに、この人は未だに現状に気付いてすらいない。

………はっ!まさかこの人、本当はこの不審者の狙いの核をとっくに見抜いて私を守ろうと……。



「……これでアタリを引けばリィちゃんともっとらぶらぶになれるはず……!…いや、それよりもアタリならあの『お邪魔虫』が抹殺されるのだ思えば……でもこれでもしハズレを引けば『あれ』はこれからもリィちゃんに付き纏い続けてわたくし達の仲の邪魔をしてくることに…っ!そんな、そんなおぞましいこと…!!」



おもいっきり私情が挟んでました。

『お邪魔虫』とか『あれ』って、ルチアさんは師匠を尊敬してるはずだからありえないから……………もしかして『あの人』のこと?

いや、でもルチアさんは会ったことがないはずだし…まさかね。



「蝶の虫人、ルチアーナ!狼の獣人、リィちゃんとの甘い毎日のためにこの愛の試練、乗り越えさせていただきますわっ!!」



一言余計です。

というかタダなだけにただの福引ですから、当人を放って主旨変えないで。











「そ、そんな………わたくしの愛が、負ける、なん、…て………。『アレ』も、生き続ける、なんて………っ」



地面に向かってうなだれるルチアさんの尋常じゃないほどのこの落ち込みよう。

いっそ哀れにさえみえる。

でも私はこれを慰めるつもりはないし、慰めたって図に乗っていっそう絡んでくるだけだし。

というかむしろこれでアタリだったら私はそれを呪ってやる。

だってアタルなんてことになったら絶対に「わたくしとリィちゃんは共にいる運命にあるのね!!」とか「あの『馬鹿』は…抹殺の運命になる……これで邪魔ものはいないわ……!!」とか言ってかなり欝陶しいことになるに決まってるから。


結果だけいえばルチアさんは嬉しくも『ハズレ』を引いてくれた。

まぁこういうものって滅多に当たらないんだし、回すときのワクワク感が醍醐味なんだから、はずれてもそれだけで楽しめるというものだ。



「…………でも…でも、リィちゃんがアタリを引いてくれるはずだわ!!そうすれば、そうすれば、きっと………!!」



しつこいな!!なんでそうなる!!

ポジティブすぎませんか!?

私がやったってラブラブなんかにならないし『あの人』もくたばったりしませんからっ!

というかやるつもりないし!



「やりませんからっ!私はさっさと帰ってご飯食べて二度寝したいんです!」



ルチアさんは置いていってしまおう。

どうせ後で勝手にくっついてくるに決まってる。



「……リ・ィ・ちゃ〜ん…♪」



…なんか急に背中がすごく重くなった。

不審に思って振り返ってみれば肩のところにルチアさんがへばりついてた。

邪魔だから落とそうとしたんだけど離れない離れないこと!

ルチアさんは軽く宙に飛んでいるから肩に重点的に乗っかってくる。



「…これは、これはとても大事なことなの…!リ・ィちゃぁん………?」



キモい!キモいよー!!なんか首元ではぁはぁしてる!!

ぎゃぁ!ペロっと舐められたぁ!!

な、なんで、どうして、そうまでして私にやらせたいの!?


………私は、弱いのだろうか?

何にとは言わない。



そういえば「変態」って辞書で引くと「さなぎから蝶になる」って意味でもあるらしいですね

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